2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

スティグリッツの政策提言

以前、ブランコ・ミラノヴィッチ経由で、スティグリッツが資本と富の違いから格差拡大を説明しようとしたことを紹介したが、スティグリッツはその考えを、マイク・コンツァルらと共に、自らが主任エコノミストを務めるルーズベルト研究所(Roosevelt Institu…

建設業の人手不足は給与の上昇に結び付いたのか?

1週間ほど前に、ツイッター上で以下のようなやり取りを見掛けた。 https://twitter.com/cornwallcapital/status/601886936605700098:twitter https://twitter.com/nonowa_keizai/status/602303930521952256:twitter https://twitter.com/yhakase/status/6023…

世界の保険業者としての米国

「トリレンマではなくジレンマ」論文を22日エントリで取り上げたHélène Reyについて、紹介記事がIMFのFinance & Developmentに掲載されている(H/T Economist's View)。そこではReyの国際金融システム研究への貢献として、ジレンマの話のほか、米国の役割の…

ポール・ローマー「キレてないですよ」

数学もどき(mathiness)への批判を展開しているポール・ローマーが、その主張への反応には誤解も含まれているとして、改めて自分の立場を説明している(H/T Economist's View)。 彼はまず、自分の立場に関する以下の6つの○×クイズを挙げている。 ローマー…

ストロングはそれほど強力ではなかった?

EH.netに下記の本の書評が掲載されている(H/T Mostly Economics)。評者はトロイ大学のDaniel J. Smith。Monetary Policy and the Onset of the Great Depression: The Myth of Benjamin Strong as Decisive Leader作者: M. Toma出版社/メーカー: Palgrave …

スキルバイアスの構造変化

「Skill Biased Structural Change」というNBER論文をFrancisco J. Buera(シカゴ連銀)、Joseph P. Kaboski(ノートルダム大学)、Richard Rogerson(プリンストン大学)が書いている。 以下はその要旨。 We document for a broad panel of advanced econom…

経済学を一つの教義で学ぶならば

DigitopolyのJoshua Gansが、昨日エントリで触れたヘンリー・ハズリットの「世界一シンプルな経済学」と、一昨日亡くなったジョン・ナッシュを結び付けるエントリを書いている(H/T Economist's View)。 以下はその引用。 Half a century ago, an influenti…

世界で二番目にシンプルな経済学

ジョン・クイギンが、ヘンリー・ハズリット(Henry Hazlitt)の「Economics in One Lesson」(邦訳は下記)に対抗して「Economics in Two Lessons」という本を書こうとしており、その序文の草稿をCrooked Timberおよび自ブログで公開している。世界一シンプ…

ローマーの二重基準?

16日エントリでは、ポール・ローマーの数学もどき批判について ローマーはまた、ソローとケンブリッジ資本論争を繰り広げたジョーン・ロビンソン(1956)も、学界政治のために数学もどきを用いた、と断罪している。 と記した際に、「これについてはEconospea…

トリレンマではなくジレンマ:世界的金融循環と金融政策の独立性

というNBER論文をロンドンビジネススクールのHélène Reyが書いている。原題は「Dilemma not Trilemma: The global Financial Cycle and Monetary Policy Independence」。2年前にジャクソンホールで提示されたWPがこちらで読めるほか、その時のVoxEU記事もあ…

新しい業務体制下で中銀の安定性は維持できるか?

スタンフォード大学のロバート・ホール(Robert E. Hall)とコロンビア大学のリカルド・ライス(Ricardo Reis)が「Maintaining Central-Bank Financial Stability under New-Style Central Banking」というNBER論文を書いている(ungated版)。 以下はその…

空売り解消日数と株式リターン

BDS検定のSとして知られる(?)シャインクマンが表題のNBER論文を共著している(SSRNでungated版が読める)。論文の原題は「Days to Cover and Stock Returns」で、著者はHarrison G. Hong(プリンストン大学)、Weikai Li(香港科技大学)、Sophie X. Ni(…

米国の上場企業数はなぜ少ないか?

「The U.S. listing gap」というNBER論文をCraig Doidge(トロント大)、G. Andrew Karolyi(コーネル大)、René M. Stulz(オハイオ州立大)が書いている。 以下はその要旨。 The U.S. had 14% fewer exchange-listed firms in 2012 than in 1975. Relative…

第二季節調整で分かること

SF連銀のEconomic Letterで、Glenn D. Rudebusch、Daniel Wilson、Tim Mahedyが、今年第一四半期の米国の経済成長の弱さは季節調整の問題ではないか、と書いている。 そこで彼らは以下の図を掲げ、過去25年間において、第一四半期の成長率が他の四半期に比べ…

ゼロと異なるp値の情報はすべて不完全

以前、サンプルサイズが大きくなると統計的有意性が高まるという話を紹介したが、カーネギーメロン大学の統計学者であるCosma Rohilla Shaliziが、自ブログ「Three-Toed Sloth」の表題のエントリ(原題は「Any P-Value Distinguishable from Zero is Insuffi…

経済成長の理論における数学もどき

15日エントリで触れた表題のローマー論文(原題は「Mathiness in the Theory of Economic Growth」)から、彼の言うmathiness(数学っぽさ/数学もどき)と本来の数学を対照させた箇所を引用してみる。 Solow’s (1956) mathematical theory of growth mapped…

数学の皮を被った学界政治

10日エントリの末尾では、Economist's View経由でポール・ローマーによるシカゴ学派批判に触れたが、Economist's Viewがローマーによるまた別の批判を紹介している。 以下はそこからの引用。 The point of the paper is that if we want economics to be a s…

状態依存価格付けと最適金融政策

という論文をシドニー大学のDenny Lieが書いている(原題は「State-Dependent Pricing and Optimal Monetary Policy」)。 以下はその要旨。 This paper studies optimal monetary policy under precommitment in a state-dependent pricing (SDP) environm…

長期のインフレ予想はどの程度正確か?

という簡単なレポートをセントルイス連銀のKevin L. Kliesenが書いている(Economist's View経由のOn the Economy(セントルイス連銀のトピックサイト)経由)。レポートの内容は以下のグラフに集約される。 即ち、ミシガン大学サーベイ・リサーチセンターの…

名目GDP目標とゼロ金利下限に関するノート

という論文をEconomist's Viewが紹介している。原題は「A Note on Nominal GDP Targeting and the Zero Lower Bound」で、著者はリクスバンクのRoberto M. Billi。Economist's ViewがリンクするBilliの個人サイトの5月改訂版は、今現在サイトが落ちていて読…

インフレ目標は途上国よりも先進国の成長に寄与する

ということをGalina HaleとAlexej Philippovがサンフランシスコ連銀のエコノミックレターに書いている。 以下はその要旨。 Inflation targeting is often considered the most appropriate monetary policy framework for central banks seeking price stabi…

不完全競争と実質賃金の停滞

昨年末のエントリで、資本労働比率、労働生産性、実質賃金の動きが新古典派経済学のパラダイムと合わなくなっていることに対し、スティグリッツがK(生産資本)とW(貨幣的な富)との乖離で説明しようとした、というブランコ・ミラノヴィッチのブログ記事を…

ひとりでできるもん!

WaPoのWonkblogでRoberto Ferdmanが、「Inhibited from Bowling Alone(孤独なボウリングの抑止)」という、ロバート・パットナムの「孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生」を意識したタイトルの論文を紹介している(H/T タイラー・コーエン)。…

金融の発展し過ぎは経済成長に有害

という主旨の論文を紹介したIMFブログ記事(著者はRatna Sahay、Martin Čihák、Papa N’Diaye)で、以下の図が掲げられている。この図の横軸は独自に開発された「金融発展指数」であるが、興味深いことに、日本が米国より金融が発展していることになっている…

プリチェット検定

ハーバードの開発経済学者のラント・プリチェット(Lant Pritchett)が、Center for Global Developmentブログで面白いエピソードを紹介している(Economist's View経由のポール・ローマー経由)。 In 2006 I was in West Bengal with a World Bank team and…

税収弾性値の一つの試算・補足

昨日のエントリに対し、シェイブテイルさんからブコメでデフレ期とインフレ期を分けないと意味が無いのでは、というご指摘を頂いた。 そこで試しに、1997〜2010年度に期間を絞って回帰を行ってみると(=昨日リンクしたシェイブテイルさんのエントリのグラフ…

税収弾性値の一つの試算

日本の税収弾性値に関して様々な議論がある。ある人は1を少し超える程度だと言い、ある人は3〜4に達する、と言う。前者の見方をする人は、後者の見方をする人に対し、長期と短期の弾性値の区別が付いていない(例:ここ、ここ)、もしくは平均概念と限界概念…

金融財政政策の効果の測定

NBER Repoter誌の2015年第一号で、エミ・ナカムラ(Emi Nakamura)とJon Steinssonのコンビが、自らのNBER共著論文を振り返りつつ、金融財政政策の効果の実証的な測定について考察している(H/T Economist's View)。 そうした測定における困難は、経済学で…

マクロ経済再考その3:進歩か混乱か?

ブランシャールが、4月15-16日に開かれた表題のIMFコンファレンス(原題は「Rethinking Macro Policy III: Progress or Confusion?」)で話し合われた内容を、IMFブログで10項目にまとめている。 「ニューノーマル」は何か? ブランシャール自身はニューノー…

陰鬱さを増す科学

「An Even More Dismal Science」というProject Syndicate論説をデロングが書き、その元原稿を自ブログに掲載している。その中でデロングは、戦後の景気循環の変質について考察した経済学者として、中銀の能力に期待を掛けたサマーズ、恐慌経済の再発を憂慮…