2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

テイラールールを法制化すべきでない7つの理由

テイラールールのようなルールにFRBが従うことを法制化することが米議会で昨年夏以来審議されており、この件を巡って経済学者の間で議論が起きている。テイラー自身は当然のように賛成しており、反対派のアラン・ブラインダーとWSJ紙上で論争を繰り広げてい…

マクロ経済の変動と対外不均衡

というNBER論文をミネアポリス連銀の二人の研究者が書いている(ungated版)。原題は「Macroeconomic Volatility and External Imbalances」で、著者はAlessandra Fogli、Fabrizio Perri。 以下はその要旨。 Does macroeconomic volatility/uncertainty affe…

ヘクシャー・オリーンの定理は何についてであって何についてでないか・補足

一昨日紹介したこちらのブログエントリのコメント欄で、assafzimというコメンターが、ヘクシャー・オリーンの定理について別の表現を示した: The way I think about the HO framework is that it is a model of how open economies absorb abundant factors…

2014年に雇用が300万人伸びた理由

ぐぐってみると既にunrepresentative agentさんがディーン・ベーカーによる反論も含めて丁寧に解説されているが、マンキューが表題の問いに対する回答として以下の要旨のNBER論文(ungated版)を紹介している。論文のタイトルは「The Impact of Unemployment…

ヘクシャー・オリーンの定理は何についてであって何についてでないか

18日エントリに元中央大学教授の塩沢由典氏からコメントを頂き、なるほどそういうものかと改めてコーエンのエントリを読み直していたところ、コメント欄でシカゴ大学准教授のJonathan Dingelが、表題の自ブログエントリ(原題は「What the Heckscher-Ohlin t…

長期のブルベア

というNBER論文が上がっている。原題は「Long-run Bulls and Bears」で、著者はRui Albuquerque(ボストン大)、Martin Eichenbaum(ノースウエスタン大)、Dimitris Papanikolaou(同)、Sergio Rebelo(同)。 以下はその要旨。 A central challenge in as…

最も財政の信頼性が高い国

についてローレンス・コトリコフが書いている(H/T マンキュー)。 Economists have been slow to realize that the official debt and its annual change – the deficit — measures fiscal language, not fiscal policy. But the profession is now clear o…

経済学者は何の役に立つのか?

というProject Syndicate論説をロバート・シラーが書いている(H/T マンキュー)。そこでシラーは、経済学者は危機を予測できなかったという昔ながらの批判に反論し、それは医者が病気を予測できないのと同じことだ、と述べている。その上で、経済学者の有用…

フォワード・ガイダンス

というそのものズバリのタイトルのNBER論文をスヴェンソンが書いている(自ブログの12/21エントリでungated版にリンクしているほか、スライド版にもリンクしている)。 以下はその要旨。 Forward guidance about future policy settings, in the form of a p…

21世紀の資本課税

なるNBER論文が上がっている(原題は「Capital Taxation in the 21st Century」)。著者はAlan J. Auerbach(UCバークレー)、Kevin Hassett(アメリカンエンタープライズ研究所)。AEIでの紹介ページからリンクされているAEAサイト*1でungated版が読める。 …

中央銀行の信認の歴史と定量性の探究

最近ボルドーのNBER論文をそれなりのペースで紹介しているような気がするが(直近はここ)、以下はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)とPierre Siklos(ウィルフリッド・ローリエ大学)によるNBER論文「Central Bank Credibility: An Historical and Quantita…

ユーロ危機を終わらせる方法?

NBERの主とも言うべきフェルドシュタイン御大が、以下のような簡単な要旨のNBER論文「Ending the Euro Crisis?」を書いている。 All of the attempts to end the euro crisis and to return the Eurozone countries to healthy growth rates of income and e…

マクロ経済的テールリスクのミクロ経済的起源

というNBER論文をアセモグルらが書いている(ungated版)。原題は「Microeconomic Origins of Macroeconomic Tail Risks」で、以前に本ブログのこのエントリの末尾で触れた論文「The Network Origins of Large Economic Downturns」が改題されたものである。…

新古典派経済学者だけが理解している9つのこと

と題したVox記事でマシュー・イグレシアスが、以下の9項目を挙げている(原題は「9 things only neoclassical economists will understand」;H/T Mostly Economics)。 コブ=ダグラス生産関数 流動性制約 ホドリック=プレスコット・フィルター 動学的確率…

ミクロ計量経済学に「経済学」を取り戻そう

「計量経済学とアドホックな実証主義(Econometrics vs. Ad Hoc Empiricism )」と題した直近のエントリで、Dave Gilesが表題の1年半前のエントリ(原題は「Let's Put the "ECON" Back Into Microeconometrics」)を引用し、状況は改善していないどころかま…

FRBのスワップライン

についてのNBER論文をボルドーらが書いている。共著者には故アンナ・シュワルツも名を連ねている。論文のタイトルは「The Evolution of the Federal Reserve Swap Lines since 1962」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)、Owen F. Humpage(クリーブ…

リターンの季節性のコモンファクター

というNBER論文が上がっている(ungated版[一昨年4月時点WP]はこちら)。原題は「Common Factors in Return Seasonalities」で、著者はMatti Keloharju(アールト大)、Juhani T. Linnainmaa(シカゴ大)、Peter Nyberg(アールト大)。 以下はその要旨。 …

4世紀に亘るリターンの予測可能性

というNBER論文をBenjamin Golez(ノートルダム大メンドーザ・カレッジ・オブ・ビジネス)とPeter Koudijs(スタンフォード大GSB)が書いている(原題は「Four Centuries of Return Predictability」)。 以下はその要旨。 We analyze four centuries of sto…

アジアシフトか、平均への回帰か

ぐぐってみると既に昨年内に様々な日本語記事で報じられているが(ブルームバーグ、IBTimes、JBPressのFT記事の日本語訳、WSJ)、サマーズが「Asiaphoria Meets Regression to the Mean」というNBER論文を、同じハーバード・ケネディ・スクールのLant Pritch…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第2弾)

直接批判なり議論なりしたわけではないですが、クルーグマンが久々にマンキューの名前にブログで言及したので一応拾っておきます。 ポール君 先日、僕がジョー・スティグリッツと僕が左派の「経済学ヒーロー」で、右派ではスティーブン・ムーアやアート・ラ…

レンールイスの名目GDP目標擁護論

Tony Yatesが名目GDP目標を批判したのに対し、サイモン・レン−ルイスが擁護に回っている。 レンールイスはまず、自分はそれほど熱心な名目GDP目標支持者ではないかもしれないが、ブロゴスフィアの名目GDP目標支持者の大半はモデルに則った議論をしていないの…

GDP低下から公共支出削減への影響は?

7日エントリの最後で政府支出の伸びと実質成長率の関係における逆方向の因果関係について考察したデロングのエントリに触れたが、以下にその概要を紹介する。 デロングはまず、クルーグマンの散布図に回帰線を引いて、2.3という乗数を弾き出している*1。 そ…

寄生獣としての経済学

インドのBusiness_Standard紙でコラムニストのTCA Srinivasa Raghavanが経済学に毒を吐いている(H/T Mostly Economics)。 It always happens. Eventually, the practitioners bring discredit to their chosen professions. Whether it is religion, polit…

紙幣の廃止の帰結?

以前、ソマリアで国家が崩壊した後も紙幣が流通し続けたエピソードを紹介したことがあったが、似たようなエピソードをTony Yatesが紹介している。 Recall the example of Kurdish controlled Iraq when NATO was enforcing the no-fly-zone, and before topp…

コント:ポール君とグレッグ君(2015年第1弾)

マンキューはサックスのProject Syndicate論説にリンクしただけであるが、一応このシリーズのネタとして拾っておきます。今回はブラッド・デロングにもそのサックスの論説の引用役として中間に登場して頂きます。 グレッグ君 ジェフ・サックスがポール君につ…

保守派は左翼的経済政策を好む

イェシバ大学のAriel Malkaとトロント大学のMichael InzlichtがNYT論説でそう書いている(H/T Economist's View、本石町日記さんツイート)。 Our research, which we published along with Christopher J. Soto of Colby College and Yphtach Lelkes of the…

ボルカーのインフレ鎮圧は誰の勝利だったのか?・その2

昨日は、80年代のボルカーによるインフレ鎮圧はケインジアンの勝利だった、とクルーグマンが書いたことへのStephen Williamsonの批判を紹介したが、David Glasnerも別の視点からクルーグマンを批判している。以下はその批判の概要。 大部分のケインジアンは…

ボルカーのインフレ鎮圧は誰の勝利だったのか?

80年代のボルカーによるインフレ鎮圧はケインジアンの勝利だった、とクルーグマンが書いたところ、それは違うのではないか、とStephen Williamsonが批判している。以下はその批判の概要。 アーサー・オークンは、1978年の「効率的な反インフレ政策(Efficien…

乗数小論争

ロバート・ワルドマンが、本ブログで12/14に紹介した政府支出と実質GDPの関係について12/24付けAngry Bearエントリで再び論じ、ジョン・コクランやタイラー・コーエンら反ケインジアン派はFREDのデータも見ていないのか、と批判した。それをクルーグマンが取…

就業率とFRBの政策に関するデロングの疑問へのアンドルファットの疑問

一昨日紹介したデロングの考察に対し、David Andolfattoが、同様のデータを扱った自分の以前のエントリを引きつつ反論している。 Andolfattoはまず、就業率に関してデロングが挙げた4点のうち最初のポイント もし米国経済が潜在生産力水準で稼働するならば、…