2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

日本の経済危機は家計の債務のせい?

今年のジャクソンホールのコンファレンスでプレゼンされたというBISの論文をMostly Economicsが紹介している。 そこでは先進18カ国の家計、非金融企業、政府の三部門の債務をベースにした研究が行われているが、論文の著者たちは、分析に使用したデータをExc…

住宅ローン減免は投資家の損にならない?

という簡単な試算をリチャード・グリーンが示している。 具体的には、以下の条件の住宅ローンを例に取って考察している。 30年、利率6% 資産価格は簿価を20%下回っている 債務不履行確率は0.2%/月 債務不履行時の回収率は50% 5年後にはその時点での残存価値…

開放経済相対乗数

なるものをエミ・ナカムラ(Emi Nakamura)とJon Steinssonの両経済学者が推計したという。 以下はデロングが紹介した両者の論文の要旨*1。 We use rich historical data on military procurement spending across United States regions to estimate the ef…

ロバート・ルーカスの矛盾?

9/17エントリでリンクしたデロングブログでのロバート・ワルドマンのコメントでは、ロバート・バローの「変節」が批判されている。具体的に批判対象となったのは、2009年の景気刺激策にバローは反対だったはずなのに*1、9/11WSJ論説では、当時は景気対策のた…

中流から滑り落ちる米国人

というテーマの論文を今月初めにピュー慈善財団が発表し、WaPoが紹介している(The Big Picture経由;こちらのWSJ日本語記事でも簡単に論文の内容に触れている)。 以下はWaPo紹介記事の概要。 論文によれば、中流家庭で育った米国人の3人に1人近くが成人し…

専門家を信頼すべき時

ディスカバー誌でショーン・キャロル(Sean Carroll)が表題の件について以下のように論じている(ノアピニオン氏経由)。 when should, in completely general terms, a non-expert simply place trust in the judgment of an expert? I don’t have a very …

第一種過誤を恐れる物理学者、第二種過誤を恐れる経済学者

CERNが光速を超えるニュートリノを観測したという今話題の発見に事寄せて、Econospeakでピーター・ドーマンが経済学者と物理学者の統計的過誤への態度の違いについて論じている。 以下はその概要。 今回のOpera(Oscillation Project with Emulsion-Tracking…

オバマ「高失業率は生産性の上昇のせいだ」

Economist's Viewでも取り上げているが、デロングがこのブログエントリで引用した下記のロン・サスキンドの近著の一節は、オバマ大統領の保守的な経済観を明らかにしている。Confidence Men: Wall Street, Washington, and the Education of a President作者…

マルクスは正しかったか?・補足

昨日紹介したルービニのインタビュー動画には英語字幕が付いていたが、その字幕には誤りと思われる部分がある。ちなみに動画の前半部はこちらのブログで独自にトランスクリプトが起こされており、そちらの方が―― rough transcriptと断っているようにやはり完…

マルクスは正しかったか?

先月、WSJインタビューでのヌリエル・ルービニの以下の言葉が話題になった(例:この記事)。 Karl Marx said it right. At some point capitalism can self-destruct itself because you cannot keep on shifting income from labor to capital without hav…

21世紀の資本家のためのスティーブの7つの洞察

というブログ記事をUmair Haqueが書いている(原題は「Steve's Seven Insights for 21st Century Capitalists」;The Big Picture経由)。ここで言うスティーブとはスティーブ・ジョブズのことである。 記事の内容は、WSJのスティーブ・ジョブズ名言集から7…

プリンストンの双璧クルーガーとクルーグマンのうち、どちらがワシントンに行くかが問題だ

という記事を先月末にWapoが掲載している(原題は「Of Princeton pair of Krueger and Krugman, it matters which is going to Washington」;The Big Picture経由)。 実際にはクルーガーがCEA委員長に指名されたわけだが、記事では両者を対比させ、二人の…

米国の宇宙計画を巡るなかなか消えない10の神話

という記事をスミソニアン誌が掲載している(原題は「Ten Enduring Myths About the U.S. Space Program」;The Big Picture経由)。以下はその概要。 月着陸競争の際、米国の宇宙計画は幅広い熱狂的な支持を受けた 世論調査によれば、1960年代を通じて、米…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第8弾)・補足

昨日はクルーグマンのバロー批判とそれに対するマンキューの反論を取り上げたが、タイラー・コーエンもクルーグマン(およびクルーグマンのエントリを転載したデロングと、ツイッターでバローの経済モデルがわからんとつぶやいたジャスティン・ウルファーズ…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第8弾)

以前、投資とGDPの因果関係を巡ってマンキューがクルーグマンを批判したが、今回も概ね同様の話の流れになっている。 ポール君 皆がロバート・バローの論説をどう思うかと訊くので、とうとう読んでみたが、その議論の怠慢ぶりにショックを受けたと言わざるを…

ISSと911

9/10付けChris Blattmanブログエントリより。 Culbertson mentioned he had witnessed the invasion of Afghanistan from above.”From where, a C-130?” the soldier asked. A C-130 is a low-flying military aircraft used mainly to deliver troops and s…

有意と非有意の差は有意とは限らない

アンドリュー・ゲルマンの9/9ブログエントリと、同日付けガーディアン紙記事( Chris Blattmanブログ経由)が同じ論文を取り上げている。 その論文の内容とは、 ある効果が5%水準で有意 別の効果は5%水準で非有意 よって2つの効果は異なる という誤った推論*…

アローのもう一つの定理

昨日に続きアロー絡みの話であるが、アンドリュー・ゲルマンが最近のエントリでリンクした自身の半年ほど前のエントリより。 One day in graduate school, my friend Tex asked me if I knew what Arrow’s Theorem was. I said, yeah, it’s something about …

アロー=デブリュー破れたり?・補足

9/6に一般均衡の存在証明に疑問を投げ掛けたメキシコ人経済学者アレハンドロ・ナダルのブログポストおよび共著論文を紹介したが、そのエントリに松尾匡氏から思慮に富んだコメントを頂いた。実は小生はこの辺りのことをあまり分かっておらず、勉強かたがた取…

米国人にとっての「経済成長」の意味とは?

と題した9/2付けEconomix記事でUwe Reinhardtが、以下の図を示している(原題は「What Does ‘Economic Growth’ Mean for Americans?」;Economist's View経由)。Reinhardtによると、1975-2009年の34年間に、一人当たりGDPは年率1.9%上昇したが、家計所得の…

行動経済学と情報公開

ジョージ・ローウェンスタインのインタビューの拙訳を続けてきたが、今日がその最後: インタビュアー 金融改革の提案は情報公開を要とすることが多いです――例えば、仲買人がある商品を売る際にリベートをもらっているかどうか言うことを義務付ける、という…

行動経済学の応用と現実の壁

引き続きジョージ・ローウェンスタインのインタビューの拙訳: インタビュアー あなたはかつて貯蓄に即時的な愉しみを付与するために宝くじと組み合わせた貯蓄プランを提唱しましたね。 ローウェンスタイン 他の国には宝くじ付き貯蓄プランがあります。例え…

感情移入ギャップ・続き

昨日紹介したジョージ・ローウェンスタインのインタビューの続き: What's the best way to avoid this? Many people solve the problem by hiring investment professionals. Advisers I've spoken to have told me they view their job much more as one o…

感情移入ギャップ

行動経済学者のジョージ・ローウェンスタイン(George Loewenstein)カーネギー・メロン大学教授がCNN Moneyのインタビューに応えて、行動経済学から見た投資について説明している(The Big Picture経由)。 その中でローウェンスタインは、彼がempathy gap*1…

アロー=デブリュー破れたり?

TripleCrisisというブログで、アロー=デブリューを初めとする不動点定理(角谷のものにせよ、ブラウワーのものにせよ)を用いた均衡の証明は経済的な意味を持たない、という主張がなされている(Economist's View経由)。書いたのはアレハンドロ・ナダル(A…

産業革命と消費エネルギー

Tony Wrigleyという元ケンブリッジ教授の経済史家が、voxeuで以下のグラフを示している(Mostly Economics経由)。 この図についてWrigleyは以下のように解説している。 Figure 1 depicts the growth in the annual consumption of energy per head in Engla…

ライバル経済学史 天下の鍵は健康にあり? 〜ケインズとハイエク〜

NHK大河ドラマを見るともなしに見ていて、そういえば家康と秀吉の長寿競争に関するNHKの番組が昔あったよな、とぐぐってみたところ、15年前*1だった。 経済学者の間でも似たような話があった、というエピソードをロバート・スキデルスキーがProject Syndicat…

この惑星では金融政策に限界がある・続き

昨日紹介したスティーブ・ワルドマンのエントリで、彼が「統治構造や責務の変更無しには、FRBが近い将来に名目GDPや物価水準を目標とする見込みは無い」と述べたのに対し、Andy Harlessがコメント欄で以下のように反論している。 That may be true, but I th…

この惑星では金融政策に限界がある

何だか宇宙人ジョーンズ風のタイトルになったが、スティーブ・ワルドマンがそう書いている(原題は「The bounds of monetary policy on Planet Earth」)。それを本石町日記氏が「激しくツボ」と評し、さらにそれを岩本康志氏がリツイートしている。 window.…

どうして人々や機関はやるべきと分かっていることをやらないのか

というタイトルの論文をハーバード大経済学部教授のデビッド・カトラー(David M. Cutler*1)が書いた(Mostly Economics経由;原題は「Why Don’t People and Institutions Do What They Know They Should?」)。 そこで彼は、ピッツバーグ近郊のアレゲニー…