オバマ「高失業率は生産性の上昇のせいだ」

Economist's Viewでも取り上げているが、デロングがこのブログエントリで引用した下記のロン・サスキンドの近著の一節は、オバマ大統領の保守的な経済観を明らかにしている。

Confidence Men: Wall Street, Washington, and the Education of a President

Confidence Men: Wall Street, Washington, and the Education of a President


以下はその引用部で紹介されているエピソードの要約。

  • 景気刺激策が足りなかったことが明らかになった2009年10〜11月頃、基本的に財政タカ派であるオバマは、財政再建に重きを置くピーター・オルザグ(行政管理予算局[OMB]局長)の見解に同調するようになっていた。
  • オルザグは、再び7000億ドル規模の景気刺激策を打たない限り効果は無いだろうが、それは政治的に不可能だ、という立場だった。それに対しクリスティーナ・ローマー(CEA委員長)は、1000億ドル規模でも効果はある、と考えていた。
  • 11月のある会議で、小規模の刺激策では効果が無いというオルザグの主張を繰り返したオバマに対し、ローマーは率直に、それは大きな間違いだ(That is oh so wrong)、と述べた。それにオバマがキレて、珍しく怒りを露にした。
  • ショックを受けたローマーは、その後数週間、大統領のブリーフィングの場で発言することは無かった。
  • 数週間後の会議で、サマーズ(NEC委員長)がローマーとほぼ一言一句同じ主張を行った。今度はオバマはキレることなく注意深く聞いていたが、やはりそれはできない、と言った。
  • この会議の後にローマーはサマーズに謝意を表し、サマーズは彼女に、オバマはローマーより自分に寛大であることを認めた。その後のローマーとサマーズの協力関係は良好なものとなった。
  • ローマーとサマーズは、ある会議でのオバマの発言に驚愕した。その席でオバマは、現在の高い失業率は生産性の上昇が原因だ、と述べたのだ。これは、総需要不足が原因だという両経済学者の見解と真っ向から対立するものだった。
  • 両者はオバマのその見解を改めさせようと説得を続けたが、オバマは頑として考えを変えなかった。1ヵ月後、彼らは説得を断念した。


…こうしたエピソードを踏まえてローマーの退任直後のこの論説を読み直してみるのも興味深い。


なお、デロングはサスキンドのこの本を何回に分けて紹介しているが、同時にサスキンドの執筆姿勢を批判もしている(例えば、「大統領がいなければこの職場は女性にとって働きづらい」という主旨の女性スタッフ(アニタ・ダン)の発言を、「大統領がいなければ」という部分を落として引用したことなど)。