マルクスは正しかったか?・補足

昨日紹介したルービニのインタビュー動画には英語字幕が付いていたが、その字幕には誤りと思われる部分がある。ちなみに動画の前半部はこちらのブログで独自にトランスクリプトが起こされており、そちらの方が―― rough transcriptと断っているようにやはり完全ではないものの(ルービニの発音のせいで採録に苦労したとの由)――全体的には正確なように思われる。
字幕の誤りと思われる例:

  • There's options devaluating → There's an option value (in) waiting.
  • They claim they're not doing pacts → They claim they're not doing cutbacks
  • labor holding → labor hoarding
  • that ratio becomes higher → debt ratio becomes higher


また、そもそもルービニの言い間違いと思われる部分もある(例:上例の2番目の取り消し線を付けたnot。また、昨日の引用部でも「without not having」と言っているが、意味合い的には(リンクしたCNBC記事にある通り)「without having」の方が正しいように思われる)。


なお、このインタビューについてはこちらで邦訳されているが、上述の字幕の誤りに引き摺られたと思われる部分のほか、「marginal propensity to spend(限界支出性向)」を「支出性向の余力」、「kicked the can down the road(問題を先送りにする)」を「缶を蹴り出してしまった」、「collateral damage(付帯的損害)」を「担保資産に多くのダメージを与える」とするような誤訳も散見される。


それはともかくとして、このビデオでのルービニの発言を大雑把にまとめると以下のような感じになろうか。

  • 企業は雇用を減らしているが、それは最終需要を減らすことであり、自分で自分の首を絞めている。→マルクスは正しかった!
  • 過去数年間は、所得の配分が労働から資本に傾いていたが、それは状況をより一層悪化させた。というのは、家計よりも企業の方が貯蓄性向が高いからだ。
  • ドイツは労働保蔵を行ったが、米国はそれを行っておらず、失業率は16%に跳ね上がった*1
  • 今はまだ資本主義が自己破壊するところまでは来ていないが、大恐慌の再来のリスクはある。
  • 過剰債務問題は流動性供給では解決できず。また、以下の3つの解決法も適用できず。
    • 経済成長で解決
      • 今の貧血気味の成長では無理
    • 貯蓄を増やす
    • インフレ
      • 副作用が大きい
  • 債務再編、債務削減が必要だが、我々はそれをやっていない。結果として、ゾンビ家計、ゾンビ銀行、ゾンビ政府を創り出しており、それによって恐慌を招く可能性がある。

*1:ここでルービニはこの記事にあるような「真の失業率」に言及しているものと思われる。