今年のジャクソンホールのコンファレンスでプレゼンされたというBISの論文をMostly Economicsが紹介している。
そこでは先進18カ国の家計、非金融企業、政府の三部門の債務をベースにした研究が行われているが、論文の著者たちは、分析に使用したデータをExcelで公開している。
それを用いて試しに日本、米国、ドイツ、イタリア、ギリシャ、ポルトガルについて三部門の債務のGDP比率をグラフ化してみると、以下のようになる。
これを見て気付くのは、現在の日本の政府の債務比率が高いこともさることながら、日本の一般事業会社の債務比率がそもそもかなり高いことである。1990年以降は減少傾向にあるものの、それでも直近でGDPの1.5倍前後であり、他国よりも高い水準を維持している。
論文の分析によれば、
に達するとその後の経済成長が悪化するとのことだが*1、日本の企業については元々その閾値を大きく超えていたわけだ。
その半面、下図の通り、日本の家計債務比率は1989年に初めて80%を超え、その翌年にはバブルが崩壊した。一方、政府債務比率はバブル崩壊時には低下を続けており、その後の景気対策で1992年に上昇に転じた。政府債務比率が80%を超えたのは1994年、95%を超えたのは1996年になってからである。
これらの結果を見る限り、日本では三部門のうち家計の債務比率が経済低迷の先行指標として最も良いように見える(論文では、家計の債務比率の影響の見積もりが最も不正確、とのことだったが…)。