米国の宇宙計画を巡るなかなか消えない10の神話

という記事をスミソニアン誌が掲載している(原題は「Ten Enduring Myths About the U.S. Space Program」;The Big Picture経由)。以下はその概要。

  1. 月着陸競争の際、米国の宇宙計画は幅広い熱狂的な支持を受けた
    • 世論調査によれば、1960年代を通じて、米国人の45-60%は政府が宇宙探査に金を費やし過ぎていると考えていた。ニール・アームストロングの着陸の後でさえ、その歴史的偉業が費用に見合ったと考えていたのは53%に過ぎなかった。
    • 宇宙開発競争は冷戦を背景にしていたが、その危機感が薄れるに連れ、アポロ計画への支持も薄れた。
       
  2. SETI協会NASAの一部門である
    • SETI協会は民間の非営利組織。
    • NASAも異星人探査の計画に参加していた時期は数十年前にはあった。1997年には、エイムズ研究所がジェット推進研究所と共同で異星人の信号を探索する小規模のプログラムを開始し、1992年10月12日のコロンブス新大陸発見500周年に一定の成果を挙げたものの、その1年足らず後にネバダ州選出の上院議員リチャード・ブライアンによって財政難を理由に同計画は終了させられた。
       
  3. 月着陸は嘘だった
  4. 1990年代、NASAはわざと自らの火星探査機を破壊した
  5. アラン・シェパードがA-Okayという言葉を初めて使った
    • NASAの広報担当のジョン・パワーズ大佐*1が記者会見でそう説明したが、実際にはシェパードはその言葉を使っていない。
       
  6. NASAの予算は政府支出の1/4近くを占める
    • ヒューストンのコンサルティング会社が2007年に実施した調査によると、米国人は連邦財政の24%がNASAに割り当てられていると考えていた。1997年の調査では、その数字は20%だった。
    • 実際には1966年に4.4%のピークを付けた後、1993年以降は1%を超えたことは無い。現在は0.5%未満。
    • 2009年のギャラップ調査によると、本当の数字を伝えられた米国人の46%がNASAの現行水準の予算割り当ての継続を支持し、14%が拡張を求めた。
       
  7. STS-48のUFO遭遇
    • 実際にはシャトルから投棄された水や氷などだった。
       
  8. フィッシャー・スペース・ペンのお蔭で宇宙飛行士は地球に帰れた
    • バズ・オルドリンの著書によると、アポロ11号の月着陸船が帰還する前にチェックリストを再確認していた際、上昇用のエンジンのサーキットブレーカーがパネルから剥がれ落ちていることに気付いた――小さなプラスティックのピンないしノブがあるべきとことに無かった。そこでフィッシャー・スペース・ペンをスイッチの場所にねじ込んで回路を閉じ、無事地球に帰還することができた、とされている。
    • 概ねこの通りだが、実際に使用したのはフェルトペンだった。非伝導性の先端でないと、ショートやスパークを起こす可能性があった。
    • 神話の浸透に一役買ったのは、フィッシャー・スペース・ペンの製造会社がこの機会を逃さず、「宇宙飛行士を帰還させた」ペンとして宣伝したことにある。
       
  9. ジョン・F・ケネディ大統領は月着陸競争でソ連に勝つことを望んでいた
  10. 有人宇宙飛行なくして予算なし
    • 宇宙飛行士というヒーローがいなければ、宇宙科学への国家の関心は薄らいでしまう、とされている。ザ・ライト・スタッフの台詞「No bucks, no Buck Rogers」をもじって言えば、「no Buck Rogers, no bucks」。
    • しかしハッブル宇宙望遠鏡や火星のロボット探査への米国人の関心を考えれば、それは当たらないのではないか。

*1:ここでは「Col. John “Shorty” Powers」と書かれており、(このエピソードの「真相」を記したというこの本でも「空軍大佐」となっているが、wikipediaでは「lieutenant colonel」と記述されている。