2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

最低賃金引き上げの得失

7/26エントリのコメント欄では、大竹文雄氏が一橋大学の川口大司氏と森悠子氏による実証論文をブログで取り上げたことを教えてもらった。 この実証論文により、大竹氏は最低賃金引き上げ慎重論に舵を切ったようだ。氏は、該当エントリで以下のように論文の内…

ブログの凋落?

11Dというブログの「The Blogosphere 2.0」という今月初めのエントリが話題を集めた。内容は、ブログ主のローラ・マッケンナ氏(Laura McKenna)がブログを書き始めて6年目を迎えるにあたり、その6年間のブロゴスフィアの変化を総括してみたというもの。 彼…

中央銀行はどこまで監督すべきか?

少し前に本石町日記さんが、中央銀行が金融機関の監督・規制を行なう際の金融政策との利害衝突について取り上げていた。そこでは、「海外では盛んにマクロプルーデンスの在り方が議論されている」と書かれているが、Economist's Viewの7/25エントリで、アラ…

Thoma「『新しい古典派経済学』は今や時代遅れ」

Economist's Viewの7/23エントリで、Mark Thomaが、ロバート・スキデルスキーのProject Syndicate論説を取り上げている。ただ、そのスキデルスキー論説そのものよりも、スキデルスキーの誤解を解く形でThomaがマクロ経済モデルの現状を説明している文章の方…

コント:ポール君とグレッグ君:ザ・ビギニング (&2009年第9弾)

マンキューがブログの7/25エントリで、This Young Economistというブログのエントリにリンクしている。そこでは、マンキューとクルーグマンの一連の論争でどちらに軍配を上げるか、という投票を募っている。 また、そこでは、本ブログで最初に紹介したものよ…

最低賃金引き上げは失業率を上昇させるか?

民主党の最低賃金を1000円に引き上げる構想が波紋を呼んでいる。 論壇では、山崎元氏が、民主党の政策は大幅な失業増を招くとして批判的である。この山崎氏の批判についてはすなふきん氏も大いに同意している。 一方、EU労働法政策雑記帳の濱口桂一郎氏は、…

サブプライム危機に関する10の神話

クリーブランドFRBのエコノミストのユリヤ・デムヤニク(Yuliya Demyanyk)が、「Ten Myths about Subprime Mortgages」と題した小論で、サブプライムローン危機に関する一般的な説明の誤謬を論じている(Economist's View経由)。彼女の指摘する10の神話と…

オークン則破れたり?

ブラッド・デロングがThe Week Magazineのコラムで、今度の景気回復は、雇用なき回復(jobless recovery)になるだろう、と書いた。 そこで彼は、2009年のGDPの予期せぬ-1.2%の下落が1.5%の失業率上昇を伴ったことを指摘し、オークン則破れたり、と主張して…

ミクロ経済学帝国主義に抗して

今月の初め、クイギンがミクロ経済学帝国主義に反対するエントリを書いた。彼の論点は以下の3点。 合理的エージェントのモデルの大部分は、「合理性」が「自己利益の最大化」で表されると仮定している。だが、この仮定は誤り、もしくは空虚なものだ。利己主…

歴史からの教訓――紀元前11年ローマ、1294年英国、1349年フィレンツェ

Washington's Blogで、少し前に「China 2009 = America 2001 = Rome 11 BC?」というエントリが上がっていた。そこでは、今、中国は世界不況を避けるために信用バブルを膨らませているというマイケル・ペティス(Michael Pettis)のブログ記事を紹介している…

経済を名刺交換してみると。

一昨日紹介したカンザスブログの経済学者たち、およびビル・ミッチェルというオーストラリアの経済学者は、金融政策でマネーサプライがコントロールできるという考え方に否定的である。彼らは、7/18エントリで紹介したように、教科書的な貨幣乗数理論を否定…

流動性の罠と財政乗数

7/17エントリで紹介した財政乗数の2つの研究を巡る話題について、クルーグマンが追加エントリを起こし、ニューケインジアンモデルと財政乗数の関係についてさらに考察している*1。 WCIブログのNick Roweがそのエントリを取り上げ、クルーグマンの考察をさら…

クルーグマン・クロス

クルーグマンが7/15ブログエントリで、財政赤字の有用性を示す図を描いた(下図)。ここでは民間部門の貯蓄がGDPに対して右上がり、財政赤字が右下がりの線として描かれている(国際収支は省かれている)。その交点が均衡点となるが、ここでは当初は均衡財政…

準備預金へのマイナス金利は効果があるか?

スウェーデンの中央銀行(リクスバンク)が預金にマイナス金利を適用したことが一部で話題になっている。 日本での反応をぐぐってみると、日経ヴェリタスが報じたのを受けて、ここやここで取り上げられている。ただ、いずれもあまり評価はしていないようであ…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第8弾)

今回は平和かつ学術的(!)なやり取り。 グレッグ君 最近ポール君は、多くのマクロ経済学者が財政政策について自分に同意しない、ということで現代マクロ経済学の状況におかんむりのようだけど、マーティ・アイケンバウム(Marty Eichenbaum)、ラリー・ク…

ブログでは礼儀正しくあれ

昨日紹介したフェリックス・サーモンの記事は、The Baseline Scenarioでジェームズ・クワックが称賛していたので気付いた。そのエントリでクワックは、質より量というサーモンの考えに同意しつつも、読者を集めるための自分なりの考えを書き連ねている。彼は…

フェリックス・サーモンのジャーナリスト向けブログ講座

最近、梅田望夫氏の例のインタビュー記事を皮切りに、日本のネット界を海外のそれと比較して嘆くエントリを目にするようになった。はてな界隈でも、ここのところ、econ2009氏やラスカル氏の休止宣言や、田中秀臣氏の慨嘆が見られた。 そうした中、ロイターの…

サムナーのFAQ

スコット・サムナーがブログにFAQページを設けた。Econlogでブライアン・キャプランが、うつし世の経済学者はすべからく読むべし、と絶賛している。以下はその拙訳。 どうして2008年後半に金融が引き締め気味だったと言えるの? 名目GDP成長率がFRBの暗黙の…

クルーグマンが女性だったら

浜矩子さんになるそうです(The Big Picture経由)*1。 日本絡みのネタもう一つ。 経済学者が学ぶべき詩は? 俳句だそうです。 *1:ぐぐってみると日本のブロガーで既に取り上げた人がいる。

サマーズ式・その2

FTの女性編集記者クリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)が、サマーズとホワイトハウスでランチを共にした取材記事を書いた。そこで紹介されたサマーズの意見について、The Baseline Scenarioのサイモン・ジョンソンが、4/27エントリに続き批判的…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第7弾)

医療費の管理コストを巡ってまた二人がやり合った。 グレッグ君 メディケアは管理コストが低いと言われているけど、この研究によると違うみたいだよ。それによると:“メディケアの受給者というのは、その性格上、高齢者や障害者や末期の腎臓病の患者から成る…

新・カルドア事実

Economist's Viewでポール・ローマーとチャールズ・ジョーンズの共著論文「The New Kaldor Facts: Ideas, Institutions, Population, and Human Capital」が紹介されていた。 論文の抄録は以下の通り。 In 1961, Nicholas Kaldor used his list of six “styl…

費用便益分析を行なう時に忘れてはならない8つのこと

一般に経済学の観点からは、温暖化や医療を巡る議論において、費用便益分析を判断材料にすることが好まれる。ハーバード大教授のロバート・スタビンズは、ブログで、その際に忘れてはならない8つの原則を挙げている(この原則の初出は、スタビンズがケネス・…

温暖化対策の本当のコストは?

一昨日のエントリで取り上げたフェルドシュタインの論説では、ワックスマン・マーキー法による一般家計へのコストを年間1600ドルとしていたが、これはCBO推計値を用いている。ところが、Econbrowserの7/4エントリでは、同じCBO推計値として、175ドルという数…

温暖化対策は経済戦争につながるか?

昨日は温暖化対策法案(ワックスマン・マーキー法)を巡るフェルドシュタインとクルーグマンの対照的な見方を紹介したが、今日はいわばその第2ラウンドを紹介する(Economist's View経由)。 フェルドシュタインは、「キャップ・アンド・トレードは保護主義…

フェルドシュタインの温暖化対策反対論

フェルドシュタインが温暖化対策に懐疑的な見方を示している。クルーグマンは当然温暖化対策賛成派であり、両者の意見の対立が鮮明になっている。 5月18日にフェルドシュタインは、ワシントンポストに論説を書き、温暖化はコストに便益が見合わないとした(E…

グリーンスパンの2000年代前半の低金利政策は非難されるべきか?

デロングが6/29のproject syndicate論説で、そのような問いを投げ掛けている。そこで彼は、FRBと財務省のほぼ議論の余地の無いこれまでの政策上の過ちとして、以下の3つを挙げている。 昨秋に、AIGの取引相手を支援するのではなく、AIGを国有化するという決…

サムナー「ケインズはフィッシャー効果を分かっていなかった」

昨日触れたサムナーのブログエントリでは、ケインズの投資家としての資質に疑問を投げ掛けており、失敗した時に金持ちの父親や友人に助けてもらったから、その後も投資を続けることができたのであって、投資家として優れていたとは言えない、と書いている。…

ハイパーインフレーションとクルーグマンモデル

サムナーブログでWCIブログでの小生とサムナー教授とのやり取りの続きをしていた際に、ハイパーインフレーションが話題になった。そこで小生は、クルーグマンの「経済がインフレ期待を作り出すために現在の価格が下がること(=デフレ)が必要」という言葉を…

サムナー「クルーグマンの日本についての意見は誰も分からない」

WCIブログエントリのコメント欄での小生とスコット・サムナー・ベントレー大学教授とのやり取りのうち、6/20エントリでケインズに関するやり取りを、6/29エントリで日銀に関するやり取りを紹介した。今回は、クルーグマンに関するやり取りを紹介してみる。 …