サムナー「クルーグマンの日本についての意見は誰も分からない」

WCIブログエントリのコメント欄での小生とスコット・サムナー・ベントレー大学教授とのやり取りのうち、6/20エントリケインズに関するやり取りを、6/29エントリで日銀に関するやり取りを紹介した。今回は、クルーグマンに関するやり取りを紹介してみる。
彼のクルーグマンに対する見方については、既に6/19エントリでも彼のブログに書かれたものを紹介した。一言で言うと、その影響力は評価しつつも、その論説に関しては厳しい視線を向けており、いわば愛憎半ばするような態度を示している。小生との日銀の政策を巡るやり取りの中で話頭に上ったクルーグマン評も、そうした見方に沿っていると言える。
なお、このやり取りは、時系列的には、6/20で紹介したものの後、6/29で紹介したものの前、ということになる。

サムナー、June 20, 2009 at 05:33 PM


日本の金融政策がデフレ的だと思っているのは私だけではない。日本がデフレにある時に何回も金利を上げたことをそれ以外にどうやって説明できる? 金融政策がデフレを引き起こすほど引き締められていたなら、金利がゼロまで低下するのは当然だが、それは何かに捕われているわけではなく、その意味では流動性の「罠」などでは無い。クルーグマンでさえインフレ目標でそこから脱却できると論じた。従ってその点について私と彼の間に実質的な差があるわけでは無い。ただ、彼がケインズを称賛したこと*1は馬鹿げていると思う。というのは、彼のモデルはケインズ流動性の罠の理論が間違っていることを示しているからだ。

小生、June 21, 2009 at 03:25 AM


直近の10年間において、クルーグマンは日銀に最も大きな圧力を掛けた存在でした。また、日本にはリフレ派と呼ばれる経済学者やブロガーなどの一団もいて、日銀はもっと積極的に動くべきと主張していました。リフレ派とその反対派の議論は延々と続きました。しかし、今日、リフレ派は若干勢いを削がれています。その少なからぬ理由が、クルーグマン自身が後退したように見えることです(例:貴殿の公開書簡への不満足な反応)。彼は現在、日銀の政策は完璧ではなかったが、結局やるべきことはやったのだ、と言っているように見えます。ある時、彼は次のようなことを書きました。
「なぜほとんど全ての人たちが連邦準備銀行の全能を信じ込んでいたのだろう?(太平洋を挟んだ)その片割れたる日本銀行が停滞した経済を動かそうと10年の間努力して失敗してしまったのに?」*2
http://www.nytimes.com/2008/11/28/opinion/28krugman.html

サムナー、June 24, 2009 at 10:20 PM


私はクルーグマンの日本に関するひどく矛盾した発言を決して理解できないだろう。日本のマネタリーベースは2000年と2006年に減少したのではなかったのか? 実際のところ、2006年の減少はかなり急激だったのではないか? 日銀は2000年と2006年に金利を上げたのではなかったのか? どうして10年間日銀がインフレを目指していたなどと真面目に論じることができるのか? 私はクルーグマンがその文章で何を言わんとしていたのか理解できない。日銀は極めて保守的だった。そしてインフレ目標量的緩和を支持した彼の最近の発言を私は知っている。ということで、彼が本当は何を考えているのか誰も分からないだろう。

*1:小生がその前のコメントで引用したこのブログエントリを指す。

*2:この訳はokemosさんによる。cf.ここ