Economist's Viewの7/23エントリで、Mark Thomaが、ロバート・スキデルスキーのProject Syndicate論説を取り上げている。ただ、そのスキデルスキー論説そのものよりも、スキデルスキーの誤解を解く形でThomaがマクロ経済モデルの現状を説明している文章の方が面白いので、そちらの概略を以下に紹介してみる。
- スキデルスキーは「新しい古典派経済学」が現在の主流であるかのようなことをしばしば言うが、実際にはそれはもはやマクロ経済学での人気を失っている。
- 「新しい古典派経済学」は以下の4つの仮定を柱としている。
- 合理的期待
- 自然率仮説
- 連続的な市場の清算
- 不完全情報
- 不完全情報の仮定により、新しい古典派の支持者は、テイラールールのようなシステマティックな予期される政策に効果があることを認めなくても、貨幣と所得の間の相関を説明できるようになった。別の言い方をすれば、金融政策の予想されない変化だけが重要で、予想される変化は民間部門の反応で完全に中立化される、ということである*1。
- 新しい古典派モデルは、確かにマクロ経済学のミクロ経済学による基礎付けという潮流、およびマクロモデルに合理的エージェントを取り入れることに貢献した。しかし、以下のような欠点があった。
- 現実に生じている景気循環の期間と規模を同時に説明できなかった。
- マクロ経済指標間のいくつかの主要な相関関係を説明できなかった。
- 不完全情報の問題が新しい古典派モデルの言うように大きなものならば、不在情報の市場が発展するはずだが、なぜそうならなかったかを説明できなかった。
- 貨幣の予期しない変化だけが実物変数に影響を与えるというモデルの主要な結論がデータによって支持されなかった(ただしこの点についてはまだ頑固な擁護者がいる)。
- 伝統的ケインジアンモデルの欠点が1970年代の問題につながったと広く信じられた結果、新しい古典派がそれに取って代わった。しかし、ケインジアン側も、ニューケインジアンモデルを発展させて対応した。そこではミクロ経済学的な最適化行動との関係付け、合理的期待の枠組みの採用が行なわれたが、重要だったのは摩擦を取り入れたことだった。