ブログでは礼儀正しくあれ

昨日紹介したフェリックス・サーモンの記事は、The Baseline Scenarioでジェームズ・クワックが称賛していたので気付いた。そのエントリでクワックは、質より量というサーモンの考えに同意しつつも、読者を集めるための自分なりの考えを書き連ねている。彼は大物ブロガーに注目されることが読者を集める早道だと考えており、たとえばクルーグマンからのリンク1回は他のブロガーからのリンク100回分の価値がある、と書いている。
では、どうやってそうしたブロガーに名前を売るか、についてだが、クワックは

  • 直接メールをして自己紹介する
    (ブロガーは返事をしないまでもメールに目を通しているもの)
  • メールをしてブログロールに載せてもらう
    (ただしクワック自身はブログロールの効果には懐疑的)
  • ブログにコメントをする
    (大抵のブロガーはコメントを読んでおり、気の利いたことを書けば注目する)
  • ブログにリンクする
    (大抵のブロガーはリンクされたことに気付く手段を持っている)

といった方法を挙げている。ある意味、いずれも至極真っ当な方法であり、特に新味は感じられない。
ただ、それに加えて以下のようなことを書いているのが個人的には興味深かった。

Another thing that follows, though perhaps a little less obviously: be polite. Bloggers are a community, and how you behave matters. If you disagree strongly with someone, express your disagreement through superior logic or mountains of evidence, not by calling the other person an idiot. There are a few bloggers out there who not only like to show that they are smarter than other people (most of us fall victim to this temptation), but come out and say that they are smarter than other people, and judging from their traffic (Alexa can show this for you) that strategy has not been successful for them. I am on good terms with some of the people whom I have disagreed with most strongly; some of them send me emails pointing out posts they think I may find interesting. Bloggers are people like everyone else; whether they will help you depends largely on whether they like you.


(拙訳)もう一つ言えることは、これまで述べたことと幾分つながりが見えにくいかもしれないが、礼儀正しくあれ、ということだ。ブロガーというのは共同体であり、どのように振舞うかは重要なのだ。もし誰かと意見が大きく食い違っても、その反対意見を、上質の論理、もしくは多くの証拠によって表現するべきで、相手を阿呆と罵ることによって表現するべきではない。自分が他人よりも賢いことを示したがるだけでなく(その誘惑には大抵の人が負ける)、自分が他人よりも賢いとずけずけと言ってのけるブロガーも何人かいるが、彼らのトラフィックAlexaで見られる)から判断すると、その戦略は成功しているとは言いがたい。私は意見がまったく合わない人々と良い関係を保っている。彼らの中には、私が興味を持つだろうと思ってブログ記事のリンクをメールで送ってくれる者もいる。ブロガーも皆と同じ人の子なのだ。彼らが助けてくれるかどうかは、彼らが好意を抱いてくれるかどうかに大きく依存する。


小生は(本ブログにも書いた通り)WCIブログでコメントをしてみたことがこれまで何度かあったが、その際、Nick Roweの紳士的な態度にいつも感心させられた。反対意見に激昂することもなく、粘り強く自分の意見を主張し、相手の無知や論理矛盾を嘲ったりすることは決して無かった。また、サムナーも、クルーグマンケインズへの批判は辛辣を極めるが、ブログのコメント欄での対応は意外なほど腰が低く物柔らかである。


我々は欧米と言うとどうしても個人の意見を激しくぶつけ合うというイメージがあるが、ことブログに関する限り、むしろ日本の方がはるかにやり取りが激烈なように思われる。相手が完全に屈服しなければ気が済まない人や、感情を発散させてストレス解消をするのが目的かと疑われるような人が少なからずいる。おそらくそういう人たちにとっては、ブログ(あるいは掲示板も)は、議論の場というよりも、一種の戦場なのだろう。シューティングゲームでより多くの敵を倒した方が勝ち、最後にスコアの多い方が勝ち、という感覚で臨んでいる方が多いような気がする。


もちろん、欧米のブログでも攻撃的で無礼な者も少なからずいるが(他ならぬクルーグマンやデロングもそうかもしれない…)、WCIブログやサムナーのブログにおけるコメント欄でのやり取りの大部分では、目的は議論なのだ、という姿勢がはっきりしている。サーモンが書いた通り、議論ないし会話では耳を傾けることも重要な要素なのだが、相手の揚げ足を取ることに汲々とするのではなく、きちんと相手の言いたいことを掴み取ることに努め、かつ、自分にとって参考になるかどうかを吟味しようとする姿勢は、見ていて非常に気持ちが良い。


結局、日本と欧米の知識人のネットに対する姿勢を分けているのは、一部の人が指摘するような雲霞のごとき匿名の罵詈雑言の存在にあるではなく、そうした障害を我慢してまで見知らぬ人との知的議論を楽しみたいかどうか、という知的好奇心の強靭さの差にあるのかもしれない。安易な欧米礼賛はあまり好きではないのだが、この点はやはり先方に一日の長があるのだろう。