サマーズ式・その2

FTの女性編集記者クリスティア・フリーランド(Chrystia Freeland)が、サマーズとホワイトハウスでランチを共にした取材記事を書いた。そこで紹介されたサマーズの意見について、The Baseline Scenarioのサイモン・ジョンソンが、4/27エントリに続き批判的に取り上げている


ジョンソンはまず、サマーズの以下の言葉を槍玉に上げる。

The American problem this time has more in common, at least qualitatively, with the Japanese post-bubble problem, where the issue was not reassuring foreigners but maintaining sufficient domestic demand to push the economy forward.
(拙訳)今回の米国の問題は、少なくとも定性的には、日本のバブル後の問題とより共通している。問題は(1990年代のアジアやロシアや中南米での危機のような)外国人投資家の信頼を得ることではなく、十分な国内需要を維持して経済を前に進めることなのだ。

これに対しジョンソンは、日本は経常黒字のお蔭で財政赤字を国内で賄えたのに対し、米国は外国に頼らざるを得ず、その信頼を得る必要がある、と指摘する。従って、今回の危機は日本型と新興国型のハイブリッドだ、というのがジョンソンの見方である。あるいは、1990年代の日本型と1970年代の米国型のハイブリッドに転化し、外部からのショック(当時:石油、現在:金融)に対する調整を拡張的なマクロ政策で先延ばししているうちに、大インフレに陥るかもしれない、とジョンソンは警告する。


サマーズは1990年代の日本について、最初は需要不足の問題だと言っていたのに、後には銀行の資本不足を解消しなければ問題は解決しない、と言うようになった。今回も同様の意見の変遷を経るのではないか、とジョンソンは皮肉っている。そして、財政刺激策の第2弾を準備しているようだが、2008年初頭の減税も彼は強く推奨したのだから、それは彼にとっては第3弾だね、とも皮肉っている。また、消費者や企業のバランスシートの問題に言及しないのは問題だ、と指弾する。


次いでジョンソンは、世界的な貯蓄不均衡が解消していくのではないか、というサマーズの意見を取り上げ、それは誤りだ、と断じる。新興国は外貨準備を減らすどころかもっと積み上げようとしているし、米国は財政赤字の調達源としてそれを必要としているではないか、というわけである。


最後にジョンソンは、4/27のエントリと同様、今回の危機は一時的なものだ、というサマーズの考えを批判する。銀行システムの問題は、長期的な経済成長をも傷つけた、というのがジョンソンの持論だからである。たとえば、銀行問題の尻拭いである巨額の財政支出により、医療改革といった非金融面の改革も制約を受けている、と彼は指摘する。
そして、これまで経済を金融工学が引っ張ってきたのに対し、これからは民間の技術発展が引っ張る、というサマーズの見方については、時流に合わせているだけで、説得力のあるモデルを提供できていない、と厳しく批判している。