科学

「すべてのモデルは間違い」の語源

David Glasnerが、ローマーのマクロ経済学批判をとば口に、以下の論陣を張っている。 こうした批判に対する現代マクロ経済学側からのお決まりの反論は、すべてのモデルは間違っている、というものである。その中でも自分たちのモデルはミクロ的基礎付けがな…

インフルエンザ・パンデミック・リスクの総コスト

というNBER論文をサマーズらが書き、サマーズHPで紹介されている(ungated版もアップされている)ほか、こちらのサイトでは皮肉交じりに紹介されている。原題は「The Inclusive Cost of Pandemic Influenza Risk」で、著者はVictoria Y. Fan(ハワイ大)、De…

NYTには数学の分かる編集者が必要

とDigitoplyのJoshua Gansが書いている(H/T Economist's View)。 Gansは「Originals: How Non-conformists Change the World」という新著を出すアダム・グラント・ペンシルベニア大ウォートン校教授*1の「How to Raise a Creative Child」というNYT記事を…

喫煙から肥満への影響

について調べたNBER論文が上がっている。原題は「The Effect of Smoking on Obesity: Evidence from a Randomized Trial」で、著者はジョージア州立大のCharles Courtemanche、Rusty Tchernis、Benjamin Ukert。 以下はその要旨。 This paper aims to identi…

愛と哀しみの果て

「Out of Africa: Human Capital Consequences of In Utero Conditions」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はVictor Lavy(ウォーリック大)、Analia Schlosser(テルアビブ大)、Adi Shany(ヘブライ大)。 以下はその要旨。 This paper inv…

科学は葬式ごとに進歩するのか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Does Science Advance One Funeral at a Time?」で、著者はPierre Azoulay(MIT)、Christian Fons-Rosen(ポンペウ・ファブラ大学)、Joshua S. Graff Zivin(UCサンディエゴ)。 We study the extent …

気候変動の不確実性をモデル化する:複数モデルの比較

というNBER論文をノードハウスらが書いている。原題は「Modeling Uncertainty in Climate Change: A Multi-Model Comparison」で、著者はKenneth Gillingham(イェール大、現在CEAシニアエコノミスト)、William D. Nordhaus(イェール大)、David Anthoff(…

非合理的なのではなく、量子確率的なだけ

前回エントリでリンクした表題のオハイオ州立大学のニュース記事(原題は「You’re not irrational, you’re just quantum probabilistic」)から、同大のコミュニケーション学部准教授でコミュニケーション・心理学研究所(Communication and Psychophysiolog…

量子認識:心理学における新たな理論手法

Economist's ViewのMark Thomaが、どう評価して良いか分からん、としてこちらのEurekAlertのリリースを紹介している。以下はそのリリースの元記事(オハイオ州立大学のニュース記事)でリンクされている表題の論文の要旨。(論文の原題は「Quantum cognition…

p値叩きの反動

についてノアピニオン氏が書いている。p値叩きは一部の心理学の学術誌が有意性検定を禁止するところまで行ったが、こうした動きは行き過ぎであり、これまで長年使われてきた検定がそれほど間違っているはずはない、とノアピニオン氏は言う。以下は氏がそう考…

非科学的な思考様式と機能しない科学的な思考様式

アンドリュー・ゲルマンが、アラン・ソーカルのScientia Salon記事を引用している。 以下は記事の一節。 The bottom line is that science is not merely a bag of clever tricks that turn out to be useful in investigating some arcane questions about …

誰がために壁は倒れた? 資本主義への移行の収支決算・おまけ

昨日紹介したブランコ・ミラノヴィッチのエントリに以下のようなコメントを書いた: 良記事です。しかし、ポアンカレ予想を解いたことも偉大な科学的業績の一つとして数えられるのではないかと思います。あと、アレクサンドル・ニコラエヴィチ・ソクーロフと…

ドイツからのユダヤ人亡命者は米国の技術革新を促進したのか?

というテーマについてPetra Moser(スタンフォード大)、Alessandra Voena(シカゴ大)、Fabian Waldinger(ウォーリック大)がNBER論文「German-Jewish Emigres and U.S. Invention」を書き、Moserがケイトー研究所にその紹介記事を書いている(H/T Mostly …

経済学は科学か宗教か?

と物理学者でありコラムニストであるマーク・ブキャナンがブルームバーグコラムで問い掛けている(H/T Economist's View、Mostly Economics)。 以下はその冒頭部。 Is economics a science or a religion? Its practitioners like to think of it as akin t…

なぜ企業は科学的研究を公開するのか?

について調べた論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「What makes companies pursue an open science strategy?」で、著者はスイス連邦工科大学ローザンヌ校のMarkus Simethと世界知的所有権機関のJulio Raffo。以下はその要旨。 Whereas r…

市場は気象学者より優れているか?

という点について研究した論文をEconomic Logicが紹介している。原題は「Can the market forecast the weather better than meteorologists?」で、著者はフンボルト大学ベルリンのMatthias Ritter。 以下はその要旨。 Many companies depend on weather cond…

何がベル研を特別たらしめたのか?

以前ここで紹介したベル研を題材にしたジョン・ガートナー(Jon Gertner)による以下の本を、同研究所に一時期在籍していたというアンドリュー・ゲルマンが書評している(ゲルマンブログ経由)。The Idea Factory: Bell Labs and the Great Age of American …

インターネットが技術革新を阻害している

SF作家のニール・スティーヴンスンがMITでの講演でそう述べたという。ジャスティン・フォックスの報告によると: A hundred years from now, he said, we might look back on the late 20th and early 21st century and say, "It was an actively creative s…

福島第一による原発事故発生確率のベイズ更新

について世上どのような考察がなされているか知りたいとふと思い、ぐぐってみたところ、このパワーポイントに行き当たった*1。書いたのはFrancois LevequeとLina Escobar。著者のうちLevequeはCERNA(Centre d'Economie Industrielle MINES ParisTech=パリ…

ベル研を復活させよ

今やイノベーションの手本と言えばシリコンバレー、というのが通説になった感がある。しかし、敢えてその風潮に異を唱え、かつての独占企業による研究所こそがイノベーションの母体になるのではないか、とThe Deal誌編集長のRobert Teitelmanが書いている(…

カリブレーションの海賊

アンドリューゲルマンブログで、ゲルマンの共同ブロガーのBob CarpenterがあるScientific American記事に対し、極めて感情的な反発を示した(Economist's View経由)。 それによると、Jonathan Carterという地球物理学者が、単純な油井モデルでデータを生成…

言葉の壁は大学ランキングに影響している?

一昨日のエントリで紹介した2枚目のグラフ(世界ランキング上位50大学を分野ごとに国別の校数を示したグラフ)について、Economix記事のコメントに以下のようなものがあった。 I think there is a pretty obvious bias in this data: language. I have worke…

専門家を信頼すべき時

ディスカバー誌でショーン・キャロル(Sean Carroll)が表題の件について以下のように論じている(ノアピニオン氏経由)。 when should, in completely general terms, a non-expert simply place trust in the judgment of an expert? I don’t have a very …

第一種過誤を恐れる物理学者、第二種過誤を恐れる経済学者

CERNが光速を超えるニュートリノを観測したという今話題の発見に事寄せて、Econospeakでピーター・ドーマンが経済学者と物理学者の統計的過誤への態度の違いについて論じている。 以下はその概要。 今回のOpera(Oscillation Project with Emulsion-Tracking…

米国の宇宙計画を巡るなかなか消えない10の神話

という記事をスミソニアン誌が掲載している(原題は「Ten Enduring Myths About the U.S. Space Program」;The Big Picture経由)。以下はその概要。 月着陸競争の際、米国の宇宙計画は幅広い熱狂的な支持を受けた 世論調査によれば、1960年代を通じて、米…

有意と非有意の差は有意とは限らない

アンドリュー・ゲルマンの9/9ブログエントリと、同日付けガーディアン紙記事( Chris Blattmanブログ経由)が同じ論文を取り上げている。 その論文の内容とは、 ある効果が5%水準で有意 別の効果は5%水準で非有意 よって2つの効果は異なる という誤った推論*…

アローのもう一つの定理

昨日に続きアロー絡みの話であるが、アンドリュー・ゲルマンが最近のエントリでリンクした自身の半年ほど前のエントリより。 One day in graduate school, my friend Tex asked me if I knew what Arrow’s Theorem was. I said, yeah, it’s something about …

東日本大震災で回避されたこと

Mostly EconomicsでCity JournalにClaire Berlinskiが書いた記事が紹介されていた。冒頭では阪神大震災と比較した東日本大震災に対する彼女の評価が記されている。正直なところ小生にはその評価が正しいのかどうか判断が付きかねるが、以下に訳してみる。 地…

否定的結果の論文誌

何だかThe Unbirthday Songのような逆説的な感を受けるが、否定的結果を出した論文を集めた学術誌についてFrances WoolleyがWCIブログに書いている。 そのエントリの冒頭に取り上げている「European Journal of Negative Research Findings」は「The Laurie …

スマート過ぎるスマート・グリッド?

についてMITの研究者が論文を書き、その概要がMITのサイトに掲載されている(後者[正確にはこのバージョン]は既に邦訳されている)。エコノブロゴスフィアではScientific American経由でEconomist's Viewが取り上げ、それにさらにKnowledge Problemという…