2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ヴァイトマン「金融危機は人災です!経済学者みんなで責任回避する経済学・入門」

以前、経済危機を地震に喩えたMark Thomaのブログエントリを紹介したことがあったが、イェンス・ヴァイトマン・ドイツ連銀総裁が、「危機の経済学――経済学者への挑戦としての危機(Crisis economics – the crisis as a challenge for economists)」と題した…

ダドリーNY連銀総裁「うちらも失敗しちゃった。ま、日銀ほどじゃないけどね」

Mostly EconomicsがダドリーNY連銀総裁*1のBIS講演を紹介している。 以下はその一節。 During and following financial crises, problems in the financial system can impair the transmission of monetary policy to the real economy. When this happens,…

暗闇でドッキリ

Mostly Economicsが先日のBIS総会におけるアンドリュー・クロケット記念講演でのラグラム・ラジャンの講演を紹介している。以下はその結論部の冒頭。 Churchill could well have said on the subject of unconventional monetary policy, “Never in the fiel…

失業保険と自家生産のトレードオフ

について調べたトルコ中央銀行の論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「Does Unemployment Insurance Crowd out Home Production?」で、著者はインディアナ大学のBulent Guleryとトルコ中銀のTemel Taskinz。 以下はその要旨。 In this pap…

最高限界税率をゼロにすることが最適税制とは限らない

という主旨の論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「Optimal Dynamic Nonlinear Income Taxes: Facing an Uncertain Future with a Sluggish Government」で、著者はワシントン大学(セントルイス)のMarcus Berliantと東京大学の藤嶋翔太…

ユーザーによる価格決定の帰結

について調べた論文をUDADISIが紹介している。論文のタイトルは「Making Money by Giving It for Free: Radiohead's Pre-Release Strategy for In Rainbows」で、著者はMarc Bourreau(Telecom ParisTech)、Pinar Dogan(ハーバードケネディスクール)、Sou…

BISの年次総会の場で最も尋ねられた質問

をジョン・テイラーが紹介している。曰く、 先週の市場の混乱を引き起こしたのは何だと思うか? それに対する回答は中央銀行家によってバラバラだったという。例: 一時的なものですぐに収まる。心配の必要なし。 FRBの成長見通しが民間のコンセンサスより高…

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第4弾)・続き

クルーグマンが、昨日紹介したマンキュー批判への追加エントリを上げた。すると、6/20エントリでは「批判には応えないよ。時間は貴重だし、僕は他のプロジェクトで忙しいんでね。良しきにつけ悪しきにつけ、論文で書いたことがすべてだ(I won't respond to …

コント:ポール君とグレッグ君(2013年第4弾)

久々にクルーグマンがマンキューに正面から仕掛けた*1。 ポール君 グレッグ君の1%擁護論文には多くの人がコメントしたが、僕も言っておきたいことがある。その前にこれまでの議論の経緯を簡単にまとめておくと、まずグレッグ君が、所得上位1%の人々は貢献に…

金融教育なんかいらない?

金融教育について世銀が出した論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「Why is voluntary financial education so unpopular? Experimental evidence from Mexico」で、著者はMiriam Bruhn、Gabriel Lara Ibarra、David McKenzie。 以下はそ…

金融危機の社会的コスト

という論文をUDADISIが紹介している。論文の原題は「The Social Costs of Financial Crises」で、著者はエラスムス大学のMathijs A. Van Dijk。以下はその要旨。 This paper studies the impact of financial crises on society. Using data on 187 banking …

富裕国で商品価格が高い理由

について分析した論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「Why are Goods and Services more Expensive in Rich Countries? Demand Complementarities and Cross-Country Price Differences」で、著者はミシガン大学のDaniel Murphy。 以下は…

離婚、一人当たりGDP、出生率、アルコール消費量と自殺

以下は広島修道大学の岡田啓介氏と埼玉大学のソワンルン・サムレト(Sovannroeun Samreth)氏の共著論文「A study on the socio-economic determinants of suicide: Evidence from 13 European OECD countries」(WP)の結論部からのUDADISIの引用の孫引き。…

異端派経済学は主流派より主流派経済学に根差している

ダニ・ロドリックがWorld Economics Association Newsletterというニュースレターのインタビューに応えてそう語っている(Conversable Economist経由)。 以下はそこからの引用。 As I said, where I tend to part company with many of my colleagues is wi…

行動ゲーム理論は構築可能か?

という論文にUDADISIがリンクしている。論文のタイトルは「Can We Build Behavioral Game Theory?」で、著者はGale M. Lucas(南カリフォルニア大学)、Mathew D. McCubbins(同)、Mark B. Turner(ケースウェスタンリザーブ大学)。 以下はその要旨。 The …

欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたのでインド人もびっくり

Mostly Economicsが6/13エントリの冒頭で以下のように書いている。 I missed this issue completely but thanks to this voxeu article woke upto it. I mean EZ crisis is one crazy event and events around the crisis keep making you pull your hair on…

私の名前はカルメンです

最近のラインハート=ロゴフ論文を巡る騒動で一躍渦中の人となった感のあるカーメン・ラインハートのインタビュー記事をIMFが掲載している(Mostly Economics経由)。以下は彼女の共同研究者だったギレルモ・カルボのラインハート評と、ラインハート自身の自…

失業のジェンダーギャップ

について研究したNY連銀論文をEconomic Logicが紹介している。著者はStefania AlbanesiとAyşegül Şahin。 以下はその要旨。 The unemployment gender gap, defined as the difference between female and male unemployment rates, was positive until 1980.…

なぜ企業は科学的研究を公開するのか?

について調べた論文をEconomic Logicが紹介している。論文のタイトルは「What makes companies pursue an open science strategy?」で、著者はスイス連邦工科大学ローザンヌ校のMarkus Simethと世界知的所有権機関のJulio Raffo。以下はその要旨。 Whereas r…

オスマン帝国と金本位制

について書かれた論文をMostly Economicsが紹介している。論文のタイトルは「The Black Swan of the Golden Periphery: The Ottoman Empire during the Classical Gold Standard Era」で、著者はLSEのAli Coşkun Tunçer。 以下はその要旨。 This study analy…

大幅な為替減価が生じた時の輸出動向

について研究した論文がNEP-DGEブログで紹介されている。論文のタイトルは「Export Dynamics in Large Devaluations」で、著者はフィラデルフィア連銀のGeorge Alessandria、NY市立大のSangeeta Pratap、FRBのVivian Yue。 以下はその要旨。 This paper stud…

悲しきモデルの有用性

今月初めにEconospeakでピーター・ドーマンが総供給=総需要(AS-AD)モデルの存在意義を問うエントリを上げたが*1、そのエントリが巻き起こした論争で、同モデル擁護の再右翼に立ったのがWCIブログのNick Roweだった。クルーグマンも(現下の状況で本来使う…

独占的競争とプラッキングモデル

6/1付けWCIブログエントリでNick Roweが、プラッキングモデル*1と自らの持説である独占的競争による需要制約論*2との関係について考察している。 Roweは、実質GDPが単純にトレンドを中心に変動しつつ成長する場合と、プラッキングモデルの想定する場合の違い…

オンライン新聞広告は紙媒体の広告を食っているのか?

UDADISIが5/23エントリでリンクした4本の論文のうち3本をこれまで紹介してきたので(ここ、ここ、ここ)、今日は残りの一本を紹介してみる。論文のタイトルは「Is Online Newspaper Advertising Cannibalizing Print Advertising?」で、著者はペンシルベニア…

天気と気分と投票

という論文をUDADISIが紹介している。論文の原題は「Weather, Mood, and Voting: An Experimental Analysis of the Effect of Weather Beyond Turnout」で、著者はノースカロライナ大学チャペルヒル校のAnna Bassi。 以下はその要旨。 Theoretical and empir…

医療従事者への業績給のインセンティブ効果

について書かれたNBER論文にUDADISIがリンクしている。著者はUCバークレーのPaul Gertlerと世銀のChristel Vermeersch。 以下はその要旨。 We nested a large-scale field experiment into the national rollout of the introduction of performance pay for…

有給休暇を労働者に保障しない唯一の先進国

と米国を評した論文をTim Taylorが紹介している(Economist's View経由)。ディーン・ベーカー率いるCEPRの論文で、著者はRebecca Ray、Milla Sanes、John Schmitt。 論文の図1では、OECD各国の制度的に保障された有休休暇・有給休日の状況が以下のようにま…

経済成長と暴力の非対称性

以前、ヒンズー・ムスリム間の暴力の鎮静化に経済成長が効果がある、という研究を紹介したが、その経済成長の効果は非対称的である、ということを示したNBER論文をタイラー・コーエンがMRで紹介している*1。論文の原題は「Implications of an Economic Theor…

政策オプションとしてのヘリコプターマネー

についてのアデア・ターナーとマイケル・ウッドフォードの論争がvoxeuでまとめられている(H/T mainly macro)。ターナーがヘリコプターマネーを政策として検討すべき、と訴える一方で、ウッドフォードが懐疑論を展開している。以下は両者の主張の概要。 ウ…

失業給付延長は失業期間を長引かせるか?

という点について調べたSF連銀論文をEconomic Logicが紹介している。原題は「Do Extended Unemployment Benefits Lengthen Unemployment Spells? Evidence from Recent Cycles in the U.S. Labor Market」で、著者はプリンストン大学のHenry S. FarberとSF連…