暗闇でドッキリ

Mostly Economicsが先日のBIS総会におけるアンドリュー・クロケット記念講演でのラグラム・ラジャンの講演紹介している。以下はその結論部の冒頭。

Churchill could well have said on the subject of unconventional monetary policy, “Never in the field of economic policy has so much been spent, with so little evidence, by so few”. Unconventional monetary policy has truly been a step in the dark. But this does raise the question of why central bankers have departed from their usual conservatism – after all, “innovative” is usually an epithet for a central banker.
(拙訳)
非伝統的な金融政策について、チャーチルの言葉を借りれば次のように言えるでしょう。「経済政策において、かくも薄弱な証拠をもとに、かくも少数の人々によって、これほど多くの支出が行われたことはかつてない*1」 非伝統的な金融政策はまさに暗闇への一歩でした。しかしこのことは、なぜ中央銀行家たちはいつもの保守主義から離れたのか、という疑問を呼びます。何といっても、「革新的」というのは通常は中央銀行家にとって忌むべき言葉なのですから。


この後ラジャンは、中央銀行家のそうした逸脱についていつもの懐疑論を縷々述べているが、これについてMostly Economicsは以下のように批判している*2

Hmm.. Imagine the world without the stimuli? Also Prof Rajan does not quote the several research which shows unconv policy did work in lowering int rates. He thinks stimuli was pretty large but res shows it was much smaller than needed..Nevertheless a good summary of his views..

On his point on c-bankers simply doing something as they were in a position where they had to do something, he should know better. As a policymaker himself, doesn’t he come to media often and calm markets. Can they just sit tight and do nothing/act to do nothing?
(拙訳)
うーむ。そうした刺激策がなかったらどうなっていたかな? それにラジャン教授は、非伝統的政策が金利を下げるのに効果的だったという幾つかの研究を無視している。彼は刺激策が大きすぎたと考えているが、そうした研究によれば、むしろ必要額に比べ小さすぎた。…とは言え、この講演は彼の見解の良いまとめにはなっている。
中央銀行家たちは何かしなければいけないポジションにいるから何かしているに過ぎない、という彼の見解について言えば、彼はもっと分かっていて然るべきだ。彼自身も政策担当者としてメディアに出演して市場を鎮めようとしていなかったかな?*3 政策担当者がじっと座って何もしない、ないし、敢えて何もしない、ということが可能なのかな?

*1:元ネタはもちろんバトル・オブ・ブリテンにおける有名な台詞「Never in the field of human conflict was so much owed by so many to so few」。

*2:ここここで紹介したように、Mostly Economicsはかねてから同国人であるラジャンのシバキ上げ主義的な姿勢には批判的である。

*3:ここで紹介したように、ラジャンは昨年インド政府入りしている。