欧州の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じたのでインド人もびっくり

Mostly Economicsが6/13エントリの冒頭で以下のように書いている

I missed this issue completely but thanks to this voxeu article woke upto it. I mean EZ crisis is one crazy event and events around the crisis keep making you pull your hair once in a while.
(拙訳)
私はこの件を完全に見逃していたのだが、このvoxeu記事のお蔭で知った。まったくもってユーロ圏の危機というのは一つの気違いじみた出来事で、この危機を巡る出来事のお蔭で時々自分の髪の毛を引っこ抜きたくなる。


以下はMostly Economicsがポインタとして指した6/12voxeu記事からの引用。

This week the German Constitutional Court in Karlsruhe is considering a case in which the plaintiffs oppose the Outright Monetary Transactions (OMT) programme announced last September by the ECB. The court will consider whether the ECB overstepped its mandate and thus imposed undue risks on German taxpayers. The court would be wise to dismiss the case, if it does not want to risk becoming a threat to Eurozone stability and to taxpayers in Germany and beyond.

The OMT was intended to stop a vicious spiral in spreads on sovereign bonds, which was translating into ever higher borrowing rates for the real economy in EZ countries with problems. This falls squarely within the mandate of the ECB. The ECB is supposed to ensure that monetary conditions are appropriate for the real economy to maintain price stability.

In a detailed deposition to the court, the Bundesbank discusses the intricacies of the transmission mechanism and concludes that differences in the level of interest rates across different countries of the Eurozone reflect economic fundamentals rather than a broken transmission mechanism. OMT is thus, the Bundesbank argues, outside the ECB’s mandate.
(拙訳)
今週、カールスルーエのドイツ憲法裁判所は、ECBが昨年9月に打ち出した債券購入計画(OMT)に抗して起こされた訴訟を審理する。法廷では、ECBがその責務を踏み越えたことによりドイツの納税者に不適切なリスクを負わせたかどうかを審議する。もし自らがユーロ圏の安定やドイツの納税者やその他諸々に対し脅威となる危険を犯したくないのであれば、裁判所はこの件を却下するのが賢明である。
OMTは、国債の上乗せ金利がスパイラル的に悪化し、それによってユーロ圏の中の問題を抱えている国における実体経済の借り入れ金利がどんどん上昇していくことを食い止めるために計画された。これは完全にECBの責務の枠内の話である。ECBは、物価安定の維持のために、実体経済にとっての金融状況が適切であることを保障するものとされているのである。
法廷に提出した詳細陳述書において独連邦銀行は、トランスミッションカニズムの複雑さについて論じ、ユーロ圏の各国間の金利水準の違いはトランスミッションカニズムの機能不全ではなく経済のファンダメンタルズを反映している、と結論付けた。従ってOMTは、ECBの責務の外にある、と独連邦銀行は主張している。


この件に関する日本語記事はここここここを参照。なお、Mostly Economicsは独連邦銀行がECBを訴えたかのように書いているが、これらの記事を読む限り、原告は別である。ただ、それらの記事で描かれている光景、即ち、同じドイツ人ECB理事の立場にありながら、ヴァイトマン独連銀総裁がOMT批判、アスムッセン理事がOMT擁護の論述を行った、というのは確かに奇妙な光景である*1。Mostly Economicsは、「ユーロ圏とECBの政治は経済よりも遥かに興味深く複雑(the politics of EZ and ECB is much more interesting and complex than economics is)」と皮肉っている。

*1:OMT発足を巡るこの二人とドラギやメルケルとの駆け引きについてはここで紹介したロイター記事参照。