という論文をアレックス・タバロックが書き（WP）、MRブログで紹介している。原題は「Two Peas in A Pod: Democracy and Capitalism」で、著者はVincent Geloso（ジョージメイソン大）、Alex Tabarrok（同）。
以下はその要旨。
Many people argue that democracy is incompatible with capitalism but they differ on whether democracy will subvert capitalism or whether capitalism will subvert democracy. The first argue that the logic of democracy leads to socialism with James Madison and Joseph Schumpeter decrying the road to serfdom while others like Karl Marx delighting in this historical inevitability. The second argue, based in part on fears of rising inequality, that capitalist oligarchs will come to control the democratic process cementing their dominance. Democratic forms may remain but true democracy will be ended. A third argument consistent with the views of Hayek, Mises, Friedman and others is that capitalism and democracy are compatible and even mutually reinforcing. We provide evidence for the third view by showing that most democracies are capitalist and most capitalist countries are democracies. Empirically there is no obvious and inevitable trend either towards or away from capitalism or democracy, although both rise and fall with events. We argue that there are significant complementarities in theory and practice between capitalism and democracy and, as a result, capitalist democracies are relatively stable.
（拙訳）
多くの人が民主主義は資本主義と相容れないと主張するが、民主主義が資本主義を覆すか、それとも資本主義が民主主義を覆すかで意見が分かれている。前者は、民主主義の論理は社会主義に通じると主張し、ジェームズ・マディソンとジョセフ・シュンペーターは隷従への道を非難する一方、カール・マルクスなどはこの歴史的な不可避性を喜んでいる。後者は、格差拡大への懸念に部分的に基づき、資本主義のオリガルヒが民主主義のプロセスをコントロールするようになり、自分たちの支配を固める、と主張する。民主主義の形態は残るかもしれないが、民主主義は終わりを告げる。ハイエク、ミーゼス、フリードマンらの見解と整合的な第三の主張は、資本主義と民主主義は両立可能で、相互補強的でさえある、というものである。我々は、大半の民主主義国は資本主義国で、大半の資本主義国は民主主義国であることを示して、第三の見解を支持する証拠を提供する。実証的には、民主主義や資本主義に向かう、もしくはそれらから離れる不可避的な明確なトレンドは存在しないが、両者ともにイベントを契機として盛衰する。我々は、理論および実際において資本主義と民主主義の間に顕著な相補性が存在し、その結果として資本主義の民主主義国は比較的安定している、と論じる。
これは以下の新刊に所収との由。
エントリでは、経済的自由の変化と民主主義の変化との相関を指摘する一方で、専制主義体制下で経済的自由が増えることがあることも認め、ペルーのフジモリ体制下の経済的自由の増加をその例として挙げている。ただ、そうして増えた経済的自由がフジモリ後の民主主義体制下で維持・強化されたことも併せて指摘している。
［追記］個人的には、資本主義と民主主義の組み合わせはガリヒ素のようなものだと思っている。ヒ素は毒性が高いが、ガリウムと組み合わせることで優れた半導体となる。同様に、資本主義は格差拡大と搾取に陥りやすいという点でヒ素と同様に取り扱いに注意する必要があるが、民主主義と組み合わせることで毒性を抑え、経済成長に優れた効果を発揮することができる。
