2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

航空都市の時代?

Mostly Economicsが「Cities of the Sky」と題されたWSJ記事を紹介し、かつて鉄道の周りに町が発展したように、今後は空港の周りに都市が発展していくのだ、と書いている。 そのWSJ記事では、そうした航空都市(aerotropolis)の典型例として、ドバイを挙げ…

インサイダー取引とドーピングと八百長

ルイジ・ジンガレスがラジ・ラジャラトナムのインサイダー事件の裁判をProject Syndicateで取り上げた。そこで彼は、Lauren Cohen(“世界最強の経済学者”)、Andrea Frazzini、Christopher Malloyの共著論文(WP)に言及し、同論文の主旨を以下のように紹介…

新卒の就職率を見れば失業が構造的か循環的か判別できる

という主旨のサンフランシスコ連銀論文が、Economist's View、Mostly Economics、そしてクルーグマンブログで取り上げられた。 以下はその要旨。 In the recent recession and recovery, the unemployment rates, part-time employment trends, and earnings…

いざという時に頼りになるのは…

サンフランシスコ連銀が、「Life-Cycle Shocks and Income」という小論を3/14付けで出している(Economists View、Mostly Economics経由)。そこでは失職、障害、離婚という3つの人生における一大事に対するケーススタディを行い、そのイベント前後で本人や…

総需要不足への4段階の政策対応

3/23エントリで触れたマンキューのMatthew Weinzierlとの共著論文では、結論部分で、経済が総需要不足に陥った時の政策対応を、以下の4段階に分けて記述している。 ゼロ金利下限が制約とならない時 経済を完全雇用水準に回復させるには、従来型の金融政策で…

経済学は何の役に立つのか?

昨今の経済学は科学か?という論争に絡めて、Mark ThomaがHal Varianの「What Use is Economic Theory?」と題された1989年の論文を紹介していた。以下はその概要。 経済学理論を審美的な観点から捉える人もいるが、そうした観点だけでは経済学理論というもの…

生物学を巡る経済学者の誤解

昨日紹介したAdam Ozimekのエントリでは、Russ Robertsが1月に書いたブログエントリを議論の出発点にしていた*1。しかし、そのRobertsのエントリは、ScienceBlogsの「Mike the Mad Biologist」によってかなり手厳しく批判されている(H/T Econospeak)。以下…

経済学は科学か?

という議論がここ1週間ほど欧米ブロゴスフィアを賑わせている。きっかけは、Modeled BehaviorのAdam Ozimekのこのエントリらしい(ただ、このエントリも、その前の晩のTwitter上の議論を受けたものとの由)。 結構長いエントリだが、ごく簡単に要点をまとめ…

コント:ポール君とグレッグ君(2011年第2弾&第3弾)

一応拾っときます。 リフレ政策のケーススタディとしてのグレッグ君 ポール君 Mark Thoma経由で知ったんだが、マンキューとWeinzierlが共著論文を書き、ゼロ金利下限においても財政拡張策を選択肢として考えるべきではない、その場合でも将来の金融政策に対…

すばらしい新世界・その3

昨日は、経済学の今後をテーマとしたIMFコンファレンスに対する反響の一端を紹介した。正確に言うと、それらは、主催者の一人であるブランシャールによるまとめへの反響という側面が強かったが、今日は、やはり主催者の一人であるデビッド・ローマーによるま…

すばらしい新世界・その2

一昨日のエントリでは、IMFカンファレンスを受けてブランシャールが示した今後のマクロ経済政策ないし経済学についての指針を紹介したが、今日はそれに対する2人の経済学者の反応を紹介してみる。 まずは、コロンビア大学バーナードカレッジ教授のペリー・メ…

ケインジアンはもっと原理主義的たれ

デロングが、大不況に関する誤ったマクロ経済理論の蔓延を指弾するパワポ資料を書いた。それに対しクルーグマンが、大枠ではデロングに賛成しつつも、フリードマンにその責を負わせるというデロングの見方は少し短絡的に過ぎるのではないか、と苦言を呈して…

すばらしい新世界

3/5に紹介したブランシャールの3/4付けIMFブログエントリで予告されていた今後のマクロ経済政策に関する3/7-8のコンファレンスが成功裏に終わったようで、既にあちこちでそのセミナーに関する反響が見られる。ブランシャール自身は3/13エントリでそのコンフ…

ラジャンの二つの貌

という表現は大袈裟かも知れないが、Mostly Economicsが引用したこの記事で描かれた若き日のラジャンのエピソードが興味深い。 As a young MBA student, Raghuram Rajan spent a summer interning at a prestigious foreign bank. “This was before quotes w…

リカードの中立命題を巡る紛糾

最近、欧米の経済ブロゴスフィアで、時ならぬリカードの中立命題を巡る論争が巻き起こった。 きっかけは、世銀チーフエコノミスト兼上級副総裁Justin Yifu Lin(林毅夫)が「Beyond Keynesianism and the New Normal」と題された小論で、穴を掘って埋めるよ…

You can't take the cult out of the boy...

とかつてサミュエルソンがグリーンスパンを評したことがあったが、そのグリーンスパンが最近Activismという論文を書いた。以下はその要旨。 The US recovery from the 2008 financial and economic crisis has been disappointingly tepid. What is most not…

非経済学者がよくやる間違い

今日は、3/12エントリへのokemosさんのブクマで教えてもらったデビッド・レオンハートのEconomix記事を紹介してみる。ここでレオンハートは、左右両派の非経済学者がよく持ち出す根拠薄弱な主張をリストアップしている*1。リストの各項において張られたリン…

右派系経済学者がよくやる間違い

昨日紹介した左派系経済学者のよくやる間違いと対の形で、タイラー・コーエンが右派系経済学者のよくやる間違いを提示している。以下はその拙訳。 現在の経済環境において、過度のインフレないしハイパーインフレへの恐れを抱いている。また、2〜5%のインフ…

左派系経済学者がよくやる間違い

昨日のエントリへのokemosさんのブクマで教えてもらったが、ケビン・ドラムが、タイラー・コーエンの挙げた左派系経済学者のよくやる間違い14項目に逐一突っ込みを入れている。ちなみにケビン自身は左派系と自認している(ただし経済について論じることはあ…

経済学者がよくやる間違い

エズラ・クラインが、タイラー・コーエンのエントリに触発されて、経済学者が見落としがちな現実世界の重要な点をリストアップしている(H/T okemosさんツイート)。以下はその拙訳。 政治力は重要。短期的には経済的に効率的な結果であっても、長期的には政…

針一本火事の元

一週間ほど前に、ネットでちょっとした炎上騒ぎがあった。といってもこちらの話ではなく、David Andolfattoが自ブログMacroManiaのあるエントリで炎上を招き、当該エントリを削除する仕儀に至った、という話である*1。 Andolfattoと言えば、クルーグマンに対…

技能偏向的技術進歩は賃金格差の説明たりえない?

昨日のエントリでリンクしたクルーグマンNYTコラムのokemos氏翻訳に対し、稲葉振一郎氏が以下のブクマを付けられていた。 「高学歴化は普通学歴プレミアムを下げる」とはむしろ常識的な話なわけだが、一見これに反した「技能偏向的技術進歩」が起きるのはど…

労働市場の中抜きなんか起きていない?

クルーグマンがコラム(邦訳)やブログで紹介したAutorらの研究に対し、ディーン・ベーカーが真っ向から異議を唱えている。 議論の対象は、クルーグマンがブログでAutorとアセモグルの論文から引用した以下の図に集約される*1。クルーグマンによるこの図の解…

欧州の銀行は皆が思っているより遥かに危険な状態にある

とアイケングリーンがシュピーゲルのインタビューで述べている(Marginal Revolution、Economist's View経由)。 インタビューの概要は以下の通り。 (欧州の共通通貨圏について長年研究した結果、加盟国がユーロ圏を離脱するのは技術的には可能だが、政治的…

笑う農業

3/3エントリでは、その前日付けのロドリックのブログエントリの内容を紹介した。それは最近の彼の共著論文の主旨を要約したものだったが、少し前の2/25付けのエントリでロドリックは、同論文の副産物とでも言うべき発見をまとめている。 その発見は以下の図…

政治体制と金融危機対応

FCIC(Financial Crisis Inquiry Commission)が危機に関する報告書をまとめた後の店仕舞いの際に、大量の追加資料を公開したという。その資料の中には、バーナンキのインタビューも含まれていたが、そこで彼は以下のようなことを述べている(Mostly Economi…

求む、新しい経済政策の原則

危機前に主流派マクロ経済学者のコンセンサスが得られていたマクロ経済政策の枠組みを、ブランシャールが(風刺も込めて)以下のように要約している(Economist's View経由)。 金融政策の基本目標は低位の安定したインフレ。そのための最善の方法は、ルール…

FRBには今やタカ派しかいない

とクリスティーナ・ローマー前CEA委員長が吠えた先月末のNYT論説が米ブログ界で話題を呼んでいる。その概要は以下の通り。 FRBの政策委員はこれまでハト派とタカ派に分類されてきた。しかし、今やFRBにはタカ派しかいない。FRBが失業と闘うことを最も声高に…

経済成長を悪化させる構造変化

ダニ・ロドリックが生産性変化と経済成長に関して分析した共著論文を書き、その主な結果を自ブログの3/2エントリにまとめている(昨年9/28エントリの内容をアップデートしたもの)。 彼は、ある国の生産性変化を以下のように分解している。 ΔYt = Σθi,t-kΔyi…

テイラールールを巡る2つの図

少し前にアトランタ連銀のDavid Altigとジョン・テイラーが金融政策を巡ってやり合っていた。 きっかけは、FRBの2つの任務を1つに絞るべきというテイラーの持説を述べたWSJ論説にMacroblogでAltigが噛み付いたことにある。そこで彼が論争の対象として取り上…