昨日のエントリでリンクしたクルーグマンNYTコラムのokemos氏翻訳に対し、稲葉振一郎氏が以下のブクマを付けられていた。
「高学歴化は普通学歴プレミアムを下げる」とはむしろ常識的な話なわけだが、一見これに反した「技能偏向的技術進歩」が起きるのはどういう場合か、今一つまだ理解していない私。
はてなブックマーク - shinichiroinabaのブックマーク / 2011年3月9日
その問い掛けへの直接的な回答にはならないかもしれないが、内容的には関連すると思われるサンフランシスコ連銀論文がEconomist's Viewで紹介されていた。以下はその要旨。
The wage premium for high-skilled workers in the United States, measured as the ratio of the 90th-to-10th percentiles from the wage distribution, increased by 20 percent from the 1970s to the late 1980s. A large literature has emerged to explain this phenomenon. A leading explanation is that skill-biased technological change (SBTC) increased the demand for skilled labor relative to unskilled labor. In a calibrated vintage capital model with heterogenous labor, this paper examines whether SBTC is likely to have been a major factor in driving up the wage premium. Our results suggest that the contribution of SBTC is very small, accounting for about 1/20th of the observed increase. By contrast, a gradual and very modest shift in the distribution of human capital across workers can easily account for the large observed increase in wage inequality.
(拙訳)
賃金分布における90パーセンタイルと10パーセンタイルの比率として測定された米国の熟練労働者の賃金プレミアムは、1970年代から1980年代末に掛けて20%増加した。この現象を説明するために、数多くの研究がなされた。主流となっている説明は、技能偏向的技術進歩が、非熟練労働者に比べて熟練労働者の需要を相対的に増加させた、というものである。本論文では、異質的な労働力を取り入れたヴィンテージ資本モデルのカリブレーションを用いて、技能偏向的技術進歩が賃金プレミアムを拡大させる主たる要因であったかどうかを調べた。我々の得た結果では、技能偏向的技術進歩の寄与度は極めて小さく、観測された拡大の約1/20しか説明しなかった。それとは対照的に、労働者における人的資本の分布の緩慢かつ極めて小幅の変化が、観測された賃金格差の大幅な拡大を良く説明することができた。
では、何がそうした人的資本の分布の変化をもたらしているのか、という点について、Economist's Viewは論文の結論部から以下の一節を引用している。
factors that alter the skill distribution of the workforce appear to be a promising avenue of future research, since relatively small changes in the skill distribution can have large effects on the wage premia. Such factors could include immigration, population growth, or deficiencies in the educational system in failing to provide job-relevant training. At the high end of the skill distribution, endogenous increases in human capital may be taking place in locations such as Silicon valley.
(拙訳)
労働者の技能の分布を変化させる要因は、今後の研究の有望な分野である。というのは、比較的小さな技能の分布の変化が、賃金プレミアムに多大な影響をもたらしうるからである。そうした要因としては、移民、人口の増加、仕事に結び付く訓練を提供できないという教育システムの欠陥、が挙げられる。技能の分布の高い方の端では、シリコンバレーのような場所で人的資本が内生的に増大しているのかもしれない。