2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ある支配的な国際通貨は別の国際通貨にどのように取って代わられるか?:新旧の実証結果

というECB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「How is a leading international currency replaced by another? Old versus new evidence」で、著者はArnaud Mehl(ECB)、Marko Mlikota(ペンシルベニア大)、Ine Van Robays(ECB)。 以下はそ…

金融政策にとっての3つの不都合な真実

と題した講演(原題は「Three Uncomfortable Truths For Monetary Policy」)をギータ・ゴピナート(Gita Gopinat)IMF筆頭副専務理事がECBの中銀フォーラム*1で行っている(H/T Mostly Economics。cf. ECBサイトの講演とスライド)。 その不都合な真実とは…

貨幣は重要である:広義のディビジア貨幣と名目GDPのコロナ禍不況からの回復

というNBER論文をマイケル・ボルドーらが上げている(ungated版)。原題は「Money Matters: Broad Divisia Money and the Recovery of Nominal GDP from the COVID-19 Recession」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)、John V. Duca(オーバリン大)…

FOMCにおける操作目標の利用:今も続く85年の歴史

というFRB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「The FOMC's Use of Operational Targets: 85 Years and Counting」で、著者はJeffrey Huther(FRB)、Elizabeth Klee(同)、Kevin Kiernan(ファニーメイ)、Ethan Rodriguez-Shah(ジョージタウン…

中国の新古典派的成長

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Neoclassical Growth of China」で、著者はJesús Fernández-Villaverde(ペンシルベニア大)、Lee E. Ohanian(UCLA)、Wen Yao(清華大)。 以下はその要旨。 This paper studies China's four-fol…

場所に基づく産業政策のミクロおよびマクロ経済効果

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクならびに簡単な解説があるシカゴ大のページ)。原題は「Micro- and Macroeconomic Impacts of a Place-Based Industrial Policy」で、著者はEnghin Atalay(フィラデルフィア連銀)、Ali Hortaçsu(シカゴ…

GDPと気温:各国の反応の不均一性に関する実証結果

というNBER論文が上がっている(H/T タイラー・コーエン;ungated版)。原題は「GDP and Temperature: Evidence on Cross-Country Response Heterogeneity」で、著者はKimberly A. Berg(マイアミ大)、Chadwick C. Curtis(リッチモンド大)、Nelson Mark(…

機械学習を用いたヘドニック物価指数の構築

前回エントリで紹介したNBER論文と著者たちが一部重なる*1表題のNBER論文が上がっている(ungated版、H/T 一上さんツイート)。原題は「Using Machine Learning to Construct Hedonic Price Indices」で、著者はMichael Cafarella(MIT CSAIL=MITコンピュー…

大規模な品質調整:ヘドニック対正確な需要ベースの物価指数

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Quality Adjustment at Scale: Hedonic vs. Exact Demand-Based Price Indices」で、著者はGabriel Ehrlich(ミシガン大)、John C. Haltiwanger(メリーランド大)、Ron S. Jarmin(米センサス局)、Da…

量子アニーリングにおける動的計画法:RBCモデルを解く

というNBER論文が上がっている。原題は「Dynamic Programming on a Quantum Annealer: Solving the RBC Model」で、著者はJesús Fernández-Villaverde(ペンシルベニア大)、Isaiah J. Hull(ノルウェー経営大学)。 ungated版の導入部では、論文の貢献とし…

言語に気をつけろ:中銀の講演への市場の反応

というセントルイス連銀論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Mind Your Language: Market Responses to Central Bank Speeches」*1で、著者はMaximilian Ahrens(オックスフォード大)、Deniz Erdemlioglu(IESEG経営大学院)、Michael McMahon(…

なぜフォーク定理は最も必要とされている時に働かないように見えるのか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Why Does the Folk Theorem Do Not Seem to Work When It Is Mostly Needed?」で、著者はJohann Caro-Burnett(広島大)、Sebastian Galiani(メリーランド大)、Gustavo Torrens(インディアナ大)。 以下はその要旨…

格差とゼロ金利下限

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Inequality and the Zero Lower Bound」で、著者はJesús Fernández-Villaverde(ペンシルベニア大)、Joël Marbet(CEMFI)、Galo Nuño(スペイン銀行)、Omar Rachedi(ESADE)。 以下はその要旨。 Thi…

財務ストレスの経済学

というNBER論文をYuriy Gorodnichenkoらが上げている(ungated版)。原題は「The Economics of Financial Stress」で、著者はDmitriy Sergeyev(ボッコーニ大)、Chen Lian(UCバークレー)、Yuriy Gorodnichenko(同)。 以下はその要旨。 We study the psy…

貿易戦争、名目硬直性、および金融政策

というNBER論文が上がっている。原題は「Trade Wars, Nominal Rigidities and Monetary Policy」で、著者はStéphane Auray(ENSAI)、Michael B. Devereux(ブリティッシュコロンビア大)、Aurélien Eyquem(HECローザンヌ)。 以下はその要旨。 This paper …

ドル化の動学

というNBER論文をIván Werningらが上げている(ungated版、Werningの解説ツイート)。原題は「Dollarization Dynamics」で、著者はTomás E. Caravello、Pedro Martinez-Bruera、Iván Werning(いずれもMIT)。 以下はその要旨。 This study explores the con…

財政ツールとしての為替管理

というNBER論文(原題は「Exchange Controls As A Fiscal Instrument」)をStephanie Schmitt-Grohé(コロンビア大)とMartín Uribe(同)が上げている(ungated版)。以下はその要旨。 About 20 percent of countries have in place dual, multiple, or par…

イタリア経済の二重性の説明

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Accounting for the Duality of the Italian Economy」で、著者はJesús Fernández-Villaverde(ペンシルベニア大)、Dario Laudati(南カリフォルニア大)、Lee E. Ohanian(UCLA)、Vincenzo Quadrini…

パレート改善的な金融財政政策:ニューケインジアンモデルにおけるサミュエルソン

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Pareto Improving Fiscal and Monetary Policies: Samuelson in the New Keynesian Model」で、著者はMark A. Aguiar(プリンストン大)、Manuel Amador(ミネソタ大)、Cristina Arellano(ミネアポリ…

経済学者のように考える:如何にして米国の公共政策で効率が平等に取って代わったか?

つい最近読み終えたとして表題の以下の本の惹句をMostly Economicsが紹介している。Thinking like an Economist: How Efficiency Replaced Equality in U.S. Public Policy (English Edition)作者:Berman, Elizabeth PoppPrinceton University PressAmazon F…

FRBのコミュニケーション、ニュース、ツイッター、およびエコーチェンバー

というFRB論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Fed Communication, News, Twitter, and Echo Chambers」で、著者はBennett Schmanski(FRB)、Chiara Scotti(同)、Clara Vega(同)、Hedi Benamar(アブダビ投資庁*1)。 以下はその要旨。 We e…

トップタレント、エリート大学、および移住:インド工科大学についての実証結果

というNBER論文をMostly Economicsが紹介している(Journal of Development Economicsのオープンアクセス版)。原題は「Top Talent, Elite Colleges, and Migration: Evidence from the Indian Institutes of Technology」で、著者はPrithwiraj Choudhury(…

ドイツのハイパーインフレの債務インフレ経路

というNBER論文をブルナーメイヤーらが上げている(H/T Mostly Economics;ungated(SSRM)版)。原題は「The Debt-Inflation Channel of the German Hyperinflation」で、著者はMarkus K. Brunnermeier(プリンストン大)、Sergio A. Correia(FRB)、Stephan…

民主主義と経済成長

前回までの3回のエントリで紹介したアセモグルインタビューの最後では、民主主義と経済成長について語られている。 EF: Shifting topics a little bit, in your 2019 article "Democracy Does Cause Growth," you and your co-authors found that democratic…

予想とノルム

引き続きリッチモンド連銀のアセモグルインタビューについてのエントリ。前回、前々回エントリで紹介した箇所の前段でアセモグルは、昔は経済成長すれば労働者を含め社会のすべてのセグメントが恩恵を受けると考えていたが、今はそのことをそれほど確信して…

ラッダイトが達成できずフォードが達成できたこと

前回エントリで紹介したインタビューの続きでアセモグルは、ラッダイト運動について触れている。 EF: Objecting to the effects of new technology on labor is sometimes casually linked with the Luddites. As you know, the Luddites were a group of 19…

経済学的観点からのAI規制を妨げているもの

日本人は生成AIに知性を幻視しがちだが、欧米人は道具として割り切っている、という主旨のはてな匿名ダイアリーが話題になったが、そもそもそうした幻想はAI業界の黎明期に端を発しており、その幻想が経済学的視点からのAIの規制を妨げている、という趣旨の…

銀行間ネットワークと金融危機の地域間伝播:1907年恐慌の実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Interbank Networks and the Interregional Transmission of Financial Crises: Evidence from the Panic of 1907」で、著者はMatthew S. Jaremski(ユタ州立大)、David C. Wheelock(セントルイス連銀…

ケインジアンとマネタリストの区別は時代遅れ

というVoxEU記事が上がっている(H/T Mostly Economics、本石町日記さんツイート)。原題は「The distinction between Keynesians and Monetarists is obsolete」で、著者はCoen Teulings(ユトレヒト大)。それによると、今や新古典派(ケインジアンとマネ…

フロアから身を起こす

というBIS論文をMostly Economicsが紹介している。原題は「Getting up from the floor」で、著者は同行のClaudio Borio。 以下はその要旨。 Since the Great Financial Crisis, a growing number of central banks have adopted abundant reserves systems (…