というNBER論文をMostly Economicsが紹介している(Journal of Development Economicsのオープンアクセス版)。原題は「Top Talent, Elite Colleges, and Migration: Evidence from the Indian Institutes of Technology」で、著者はPrithwiraj Choudhury(ハーバード大)、Ina Ganguli(マサチューセッツ大学アマースト校)、Patrick Gaulé(ブリストル大)。Mostly EconomicsによるとIITや海外移住界隈のSNSでバズっているとの由。
以下はその要旨。
We study migration in the right tail of the talent distribution using a novel dataset of Indian high school students taking the Joint Entrance Exam (JEE), a college entrance exam used for admission to the prestigious Indian Institutes of Technology (IIT). We find a high incidence of migration after students complete college: among the top 1,000 scorers on the exam, 36% have migrated abroad, rising to 62% for the top 100 scorers. We next document that students who attended the original “Top 5” Indian Institutes of Technology (IIT) were 5 percentage points more likely to migrate for graduate school compared to equally talented students who studied in other institutions. We explore two mechanisms for these patterns: signaling, for which we study migration after one university suddenly gained the IIT designation; and alumni networks, using information on the location of IIT alumni in U.S. computer science departments.
(拙訳)
我々は、権威あるインド工科大学(IIT)の入学許可に使われる大学入試試験である共通入学試験(JEE)を受験したインドの高校生についての新たなデータを用いて、才能の分布の右裾にいる人々の移住について調べた。大学を卒業した学生の移住が多いことを我々は見い出した。試験の点数の上位1000人のうち36%が海外に移住し、上位100人ではその割合は62%に上昇した。次に我々は、インド工科大学(IIT)のオリジナルの「トップ5*1」を卒業した学生が、他の校を卒業した同等の才能を持つ学生よりも海外の大学院に進学する可能性が5%ポイント高いことを明らかにした。我々はこのパターンの2つのメカニズムを追究した。一つはシグナリングで、これについて我々は、ある大学が突然IITの指定を獲得した後の移住を調べた*2。もう一つは同窓生のネットワークで、これについて我々は米国のコンピュータサイエンス学部におけるIITの同窓生の場所に関する情報を用いた*3。
*1:IITは23校あるが(cf. インド工科大学 - Wikipedia)、論文では当初設立されたカラグプル校、ボンベイ校、カーンプル校、マドラス校、デリー校をトップ5としている。
*2:2012年にIITバラナシ校となったバナラス・ヒンドゥー大学(Banaras Hindu University - Wikipedia)について調べた結果、海外の大学院進学の確率が5割増しになった(10.5%だったのが5.4%ポイント上昇)というシグナリング効果が認められたが、その大きさはトップ5効果ほどではなかったとの由。
*3:同じIIT校出身者の所在地への進学確率は30%上昇するが、他の校出身者については進学の意思決定との相関がみられなかったとの由。