2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

構造改革はマクロ経済政策の代わりにはならない

ポルトガルのシントラでECBが開催した中央銀行に関するフォーラムで、バーナンキが26日に「When Growth is not Enough」というテーマで講演し、その講演録がブルッキングス研究所のHPに上がっている(H/T Economist's View)。講演はトランプ現象と経済政策…

フォワードガイダンスパラドックス

5年近く前、NY連銀のDel Negro、Giannoni、Pattersonの「フォワードガイダンスパズル」に関する研究を紹介したことがあった(cf. 関連NY連銀ブログエントリ)。このパズルは、教科書的なモデルではフォワードガイダンスが非合理的なほど強い効果を持ってしま…

金融政策は慢性的な需要不足には役に立たない

という主旨のProject Syndicate論説をスティーブン・ローチが書いている(H/T Mostlty Economics)。 Through April, Japan’s core CPI was basically flat relative to its year-earlier level, with a similar outcome evident in May for the Tokyo metro…

産業革命とは何だったのか?

というNBER論文をロバート・ルーカスが上げている(原題は「What Was the Industrial Revolution?」、原型と思しき一昨年のゲーリー・ベッカー記念講演のスライド)。以下はその要旨。 At some point in the first half of the 19th century per capita GDP …

ロドリック「トランプのTPP離脱は正しかった」

引き続きロドリックのインタビュー記事から。昨日エントリではロドリックのWTO批判を紹介したが、TPPにも矛先を向けている。 Judis: So we are get down to nitty-gritty Let’s go back to the three steps for rebalancing trade agreements and to America…

1990年代に米国が犯した過ち

引き続きロドリックのインタビュー記事から。 Rodrik: ...Nationally we have democratic institutions for deciding who benefits from markets and how resources and income are to be distributed. Internationally, all we have are tool shops and arr…

外国人労働者受け入れとソーシャルダンピング

21日エントリで紹介したロドリックのリバランス論について、彼が唱える労働の移動性の緩和がもたらす悪影響を指摘する反応をツイッターで頂いた。実は元記事でもインタビュアーがその点を指摘している。 Judis: You talked earlier about changing trade agr…

よくある証明テクニック

というUnlearning Economics(UE)のツイート画像をMostly Economicsが紹介している(なお、Mostly EconomicsはUEの経済学者ネタとして紹介しているが、元画像にはfacebook.com/Mathmaticxという小さな注釈が付いており、UEは、2番目が経済学でありがち、と…

FRBの語られざる使命

というブルームバーグコラムを、利上げ前の13日にコチャラコタが書いている(原題は「The Fed's Unspoken Mandate」)。 The U.S. Federal Reserve’s two main goals are to promote maximum employment and keep inflation close to 2 percent. But it also…

世界経済についてリバランスすべき3つのこと

ダニ・ロドリックがTalking Points MemoでJohn Judisのインタビューに答えている(H/T Mostly Economics;ロドリック自身のブログでもリンクしている)。以下はその中で表題のテーマについて語った個所。 There is a kind of rebalancing we need to do in t…

理論的仮定と観測されない事実

レオンチェフが、1970年末の第83回経済学会で行った表題の会長講演(原題は「Theoretical Assumptions and Nonobserved Facts」)で、次のようなことを述べている(Mostly Economics経由のLars Syll経由)。 Much of current academic teaching and research…

サマーズ「FRBが過ちを犯していると考える5つの理由」

サマーズが、昨日エントリで触れたデロングらの公開書簡に言及しつつ、FRBの現在の政策が誤っていると彼が考える理由を5点指摘している。内容的にこれまで紹介してきた彼のFRB批判(ここ、ここ、ここ、ここ、ここ、ここ)と比べてそれほど新味はないが、それ…

ゼロ金利下限はどの程度の頻度で問題になるか?

以前、Schmitt-Grohe and Uribe(2009)の枠組みを基に、名目金利がゼロ金利下限に達する頻度が(論文の意図とは裏腹に)15年に一度と結構高いものになる可能性を示したことがあったが、デロングがシミュレーションでその確率をより厳密に計算している。彼がシ…

何が1990年以降の貿易量の増加をもたらしたのか

クルーグマンが、最近は貿易量の増大の話は旬ではなくなった――一つには貿易量がプラトーに達したため、もう一つにはトランプという喫緊の課題が出てきたため――と断りつつも、1990年から大不況前までの貿易量の増大をもたらしたメカニズムについて考察してい…

オブズフェルド「消費税はやはり引き上げよ」

オブズフェルドらがIMFブログで、日本における財政政策と金融政策の協調のあり方について論じている。おそらく後で日本語版も追加されると思うので、要点のみピックアップしてみる。 財政と金融政策(および構造改革策)の協調は、包括性(相乗効果が存分に…

古い経済学は偽の「物理学の法則」に基づいていた――新しい経済学が我々を救える

下記の本を著したKate Raworthが表題の論説をガーディアン紙に寄稿している(原題は「Old economics is based on false ‘laws of physics’ – new economics can save us」、H/T Mostly Economics)。Doughnut Economics: Seven Ways to Think Like a 21st-Ce…

GDPにおける無料の価値

というエントリがDigitopolyに上がっている。原題は「The Value of Free in GDP」で、著者はShane Greenstein。 以下はそこからの引用。 There was hope that industry specialists would find some underlying proportional relationship between consumpti…

マクロ経済学:単純な経済学と高度な経済学

ノアピニオン氏が、マクロ経済学批判はこれで打ち止め、としてこれまでの集大成となるパワポ資料(正確にはグーグルスライド資料)を自ブログに上げたところ、クルーグマンが反応し、表題のエントリ(原題は「Macroeconomics: The Simple and the Fancy」)…

進化する中国の金融政策ルール:インフレ容認から反インフレ政策へ

というBIS論文(原題は「China’s evolving monetary policy rule: from inflation-accommodating to anti-inflation policy」)をMostly Economicsが紹介している。著者はEric Girardin、Sandrine Lunven、Guonan Ma。 以下はその要旨。 This paper aims to …

英国でなければどこだったか? フランス発の産業革命だった可能性の論証

1ヶ月ほど前にタイラー・コーエンが、「How long until another Industrial Revolution would have taken place?」と題したMRエントリ(邦訳「イギリスで産業革命が起きなかったとしたら他の産業革命までどれくらいかかっただろう?」)を上げた。それに対し…

ネオファシズムの時代?

3日エントリで、今のポピュリズムは実はファシズム(ないし、現代風の呼び方にするならばネオファシズム)ではないか、というデロングの論考を紹介したが、国際経済交流財団とスタンフォード大学アジア太平洋研究センターがスタンフォードで開いたコンファレ…

英国と米国:どうしてこうなった

英総選挙の投票結果の衝撃が広がる折りではあるが、選挙直前にサイモン・レンールイスが書いたエントリが少し面白かったので紹介しておく。 This post is a response to a provocative piece by Anatole Kaletsky. He writes “While the US has taken only 1…

トロツキーが(一時的に)価格と市場を容認した時

というエントリをTimothy Taylorが上げている(原題は「When Trotsky (Temporarily) Embraced Prices and Markets」)。 The year was 1932. Leon Trotsky had been already been tossed out of the Communist Party and exiled from Stalin's Soviet Union.…

IS-LMを教えない人の3分類

FRB入りが予定されているマービン・グッドフレンドが2012年のインタビューで「私はIS-LMを教えない(I don't teach IS-LM)」と発言していたという話題を受けて、デロングがIS-LMを教えない人を以下の3タイプに分類している。 経済の働きについて完全に説得…

緊縮策の影響は恒久的なものとなるか

というエントリをサイモン・レンールイスが書いている(原題は「Could austerity’s impact be persistent」)。 If I could carry just one message into mediamacro to bring it more into line with macro theory, it is that nominal interest at their l…

起業家精神を無視し続ける経済学教育

Mostly Economicsが「Economics Doctoral Programs Still Elide Entrepreneurship」という論文を紹介している。著者はDan Johansson(エレブルー大学)、Arvid Malm(王立工科大学)(いずれもスウェーデン)。 以下はMostly Economicsが引用した論文の結論…

人的資本理論は冷戦の遺物?

シティ大学ロンドン・カス・ビジネススクールのピーター・フレミングが、Aeonというデジタル雑誌に「What is human capital?」という記事を寄稿している(H/T Mostly Economics)。 その冒頭では、1960年のシカゴ大学での2人の経済学者――セオドア・シュルツ…

フクヤマ的な勝利主義の隠れた危険性

というエントリをブランコ・ミラノビッチが書き(原題は「The hidden dangers of Fukuyama-like triumphalism」)、その末尾で以下のように述べている。 When you have in your mind this (I think) much more accurate narrative of the past half-century,…

革新的独創性、収益性、および株式リターン

新たな投資指標を提示している表題のNBER論文が出ている(ungated版(SSRN))。原題は「Innovative Originality, Profitability, and Stock Returns」で、著者はDavid Hirshleifer(UCアーバイン)、Po-Hsuan Hsu(香港大)、Dongmei Li(サウスカロライナ…

確率的マクロ経済予想のサーベイによる測定:進歩と展望

というNBER論文(原題は「Survey Measurement of Probabilistic Macroeconomic Expectations: Progress and Promise」)をノースウエスタン大のCharles F. Manskiが上げている(ungated版)。 以下はその要旨。 Economists commonly suppose that persons ha…