2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

担保制約のある開放経済モデルにおける複数均衡:過剰借り入れ再訪

というNBER論文をStephanie Schmitt-GrohéとMartín Uribeが書いている(いずれもコロンビア大、ungated版)。原題は「Multiple Equilibria in Open Economy Models with Collateral Constraints: Overborrowing Revisited」。 以下はその要旨。 This paper e…

イデオロギーを超えたというイデオロギー

The Baseline Scenarioでジェームズ・クワックが以下のように書いている(H/T Mostly Economics)。 You know that famous Time cover featuring Rubin, Greenspan, and Summers, calling them “The Committee to Save the World”? I was reading the accomp…

理由ある反抗

と題したIMFのFinance & Development6月号の人物紹介記事で、ダニ・ロドリックが取り上げられている(原題は「Rebel with a Cause」。H/T Economist's View、マンキューブログ)。 そこではロドリックがハーバードに入学した経緯について以下のように述べら…

次の景気後退について知っておくべきこと(主演:ドナルド・トランプ)

というWaPo論説をサマーズが書いている(H/T 本石町日記さんツイート、原題は「What you need to know about the next recession (starring Donald Trump)」)。サマーズはそこで以下の4点を挙げている。 米国の繁栄にとって、米国の議会の機能不全よりも「…

中国が銀行の未来について教えてくれること

というタイトルを見てMostly Economicsのブログ主は目をこすったそうだが、Spontaneous Financeブログのこのエントリはそう題されている(原題は「What China can teach us about the future of banking」)。 以下はMostly Economicsにおける引用部の孫引き…

失業給付延長の影響に関する最近の疑似実験的な実証結果の解釈

2014年の失業保険延長打ち切りによって180万の雇用を生み出された、という論文を書いて物議を醸したMarcus Hagedorn(オスロ大学)、Iourii Manovskii(ペンシルベニア大学)、Kurt Mitman(ストックホルム大学)のトリオ*1が、表題のNBER論文を上げている(…

機械と人間との競争:技術が成長、要素分配率、および雇用にとって持つ意味

というNBER論文をアセモグルらが書いている(ungated版)。原題は「The Race Between Machine and Man: Implications of Technology for Growth, Factor Shares and Employment」で、著者はDaron Acemoglu、Pascual Restrepo(いずれもMIT)。 以下はその要…

住宅向け電力価格の所有権と価格:1935-1940年の米国における実証結果

というNBER論文が上がっている(ungated版、ただしこの時はタイトルに技術[Technology]が入っている)。原題は「Ownership and the Price of Residential Electricity: Evidence from the United States, 1935-1940」で、著者はCarl T. Kitchens(フロリダ…

理論と計測:コンセンサスの出現、統合、そして衰退

というNBER論文をハマーメッシュらが書いている。原題は「Theory and Measurement: Emergence, Consolidation and Erosion of a Consensus」で、著者はJeff E. Biddle(ミシガン州立大)、Daniel S. Hamermesh(ロンドン大*1)。 以下はその要旨。 We identi…

生産性上昇に関する9人のエコノミストの提案

をジャレッド・バーンスタインが各人に要望して収集し、自ブログで紹介している(H/T Economist's View)。以下はその概要。 ディーン・ベーカー(CEPR所長、最近バーンスタインと「Getting Back to Full Employment: A Better Bargain for Working People」…

如何にしてコンピュータは経済学を変え、そして変えなかったか

という記事がINETブログに上がっている(H/T Economist's View、原題は「How the computer transformed economics. And didn’t.」)。著者は、最近このテーマに関する論文をRoger Backhouse(バーミンガム大)と共著したBeatrice Cherrier(カーン大)。 記…

バーナンキの無裁定論再訪:実物資産の公開市場操作で流動性の罠は無くなるか?

というNBER論文をエガートソンらが書いている。原題は「Bernanke's No-arbitrage Argument Revisited: Can Open Market Operations in Real Assets Eliminate the Liquidity Trap?」で、著者はGauti B. Eggertsson、Kevin Proulx(いずれもブラウン大)。 以…

機関化現象は資産価格にどのように影響するか?

「The Granular Nature of Large Institutional Investors」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はItzhak Ben-David(オハイオ州立大)、Francesco Franzoni(ルガーノ大)、Rabih Moussawi(ビラノバ大)、John Sedunov(同)。 以下はその要…

計量経済学の恣意性?

一昨日と昨日のエントリではミーゼス研究所のKarl-Friedrich Israelによるティンバーゲンへの批判を紹介したが、その少し前にIsraelは、ティンバーゲンと共に最初のノーベル経済学賞を共同受賞したラグナル・フリッシュを槍玉に挙げている。具体的には、フリ…

ケインズがティンバーゲンに問うたこと・補足

昨日紹介したIsraelのブログ記事では、ティンバーゲンの線形性の仮定への批判について、ケインズの以下の言葉を引用している。 It is a very drastic and usually improbable postulate to suppose that all economic forces are of this character, produci…

ケインズがティンバーゲンに問うたこと

をKarl-Friedrich Israelがミーゼス研究所ブログでまとめている(H/T Mostly Economics)。 完全性 ティンバーゲンは様々な要因の景気循環への寄与度を定量化しようとしたが、ケインズは、それが実際に可能となるのは、関連する要因の完全な一覧がある場合だ…

如何にして市場は運の果たす役割を拡大して実力主義の幻想を創り出すか

Evonomicsで、ロバート・フランクの以下の新刊本からの引用から成る表題の記事が立てられている(H/T Mostly Economics;原題は「How Markets Magnify the Role of Luck and Create the Illusion of Meritocracy」)。Success and Luck: Good Fortune and th…

委員会の行動とFRB

Tim Taylorが、FOMCの委員会としての機能について論じたKevin M. Warshの論文*1を表題のエントリ(原題は「Committee Behavior and the Federal Reserve 」)で紹介している(H/T Economist's View)。 以下はその冒頭部。 Frustration with committees is a…

なぜ産業革命はオランダではなく英国で起こったのか?

と題した記事を、発明を専門とする英国の歴史家のAnton Howesがインドのswarajyamagというサイトに寄稿している(正確にはブログ[ここ、ここ]からの転載;原題は「Why Was The Industrial Revolution British And Not Dutch?」;H/T Mostly Economics)。 …

鎖につながれたヘリコプター

と題したProject Syndicate論説(原題は「Helicopters on a Leash」)でアデア・ターナーが、2日に紹介した浜田宏一氏の批判に反論している(H/T 本石町日記さんツイート*1)。 The only powerful argument against helicopter drops is the one that Heise …

対数軸の罠・続き

少し前、一人当たりGDPと世銀の「フロンティアまでの距離」指標との回帰分析を基に、米国のGDPはもっと伸びる可能性がある、とジョン・コクランが論じたところ、Kids Prefer CheeseブログのAngusが、コクランが回帰の際にGDPを対数化したことを批判した、と…

金融指標を用いた潜在GDP推計の改善法

以前、日本のGDPデータを用いてHPフィルタの端点の不安定性を示したことがあったが、BOEブログで同様の図が示されている。 著者のMarko Melolinnaは以下のように述べている。 Given this end-point problem, researchers have come up with more complex, an…

トランプは債務と債券が表裏一体だということを理解しているのか?

Econospeakでピーター・ドーマンが、トランプの公的債務減免計画について皮肉な見方を示している。 Almost every year, I walk into an introductory economics class in the fall and try to disabuse students of the notion that debt and credit assets …

ソーシャルレンディングは銀行にとって脅威となるか?

という点についてBOEブログで考察がなされている*1。著者は同行のPaolo Siciliani。 そこでは、従来の銀行に比べたソーシャルレンディングの利点として、以下の3点を挙げている。 広範な支店網や、更新が困難なITシステムなどから発生する従来型の運転費が存…

新ブレトンウッズ構想

元ギリシャ財務相のバルファキスが、Project Syndicate論説でケインズのバンコール構想の復活を訴えている(H/T Mostly Economics)。 The question asked periodically during much of the last decade is straightforward: Would Keynes’s discarded plan …

民間債務が増加すると融資が抑制される?

かつてクルーグマンと中央銀行の貨幣供給コントロール能力を巡って論争を繰り広げた(cf. ここ、ここ)スティーブ・キーンが、スティグリッツのProject Syndicate論説に噛み付いている(H/T Mostly Economics)。 Joe correctly notes that “the world faces…

債務不履行懸念ではなく非流動性への懸念から銀行取り付け騒ぎが起きる?

昨日紹介したDavid Andolfattoのブログエントリに対しては、脚注に記したように、Nick Roweがコメントしている。ただ、昨日エントリの脚注で紹介したのはAndolfattoの論点3へのRoweのコメントであったが、その他にRoweは論点5についてもコメントし、しかもそ…

金融政策にとってのブロックチェーン技術の意味

についてDavid Andolfattoが6点挙げている。以下はその概要。 通貨競争 政府がインフレ税を課そうとすると、国民は他の通貨に逃避しようとする。資本規制でそれを抑え込もうとするのが政府の常套手段だが、インターネットにアクセスできれば取引できるビット…

ブランシャールが懸念していること、していないこと

ブランシャールが日本の財政危機の危険性を訴えたテレグラフ記事が、池田信夫氏がブログで取り上げたことで改めて話題になっているので、以下に該当部分を引用してみる。 Olivier Blanchard, former chief economist at the International Monetary Fund, sa…

債務をどうすべきか?

Project Syndicateに各論者が相次いで財政政策と財政赤字や債務の問題について書いているので、各人の論点が最も明確になっているように思われる部分を拾ってみる。 ●マーチン・フェルドシュタイン(Martin Feldstein)「Japan’s Economic Quandary(日本の…