委員会の行動とFRB

Tim Taylorが、FOMCの委員会としての機能について論じたKevin M. Warshの論文*1を表題のエントリ(原題は「Committee Behavior and the Federal Reserve 」)で紹介している(H/T Economist's View)。
以下はその冒頭部。

Frustration with committees is a way of life. "A group of the unwilling, chosen by the unfit, to do the unnecessary." "A group of people who individually can do nothing but as a group decide that nothing can be done." "A body that keeps minutes and wastes hours." But committees persist, because they have advantages besides time-wasting and diffusion of responsibility. When informed people with disparate knowledge can engage with each other in a substantive and comprehensive way, it is at least possible that errors can be avoided, insights sharpened, and outcomes improved. ...
The Federal Reserve Open Market Committee is, yes, a committee. How well does it work?
(拙訳)
委員会への不満は生活の一部となっている。「不必要なことをするために不適切な人々に選ばれたやる気の無い集団。」「個人では何もできないが、何もできないことを集団として決定する人々の集団。」「議事録をつけて時間を無駄にする団体。」 しかし委員会には時間を無駄にすることと責任の分散以外にも利点があるため、無くなることは無い。様々な分野の知識を持つ有識者が包括的かつ実のある形で互いに議論できれば、少なくとも過ちを防ぎ、洞察を深め、結果を改善することが可能となる。・・・
連邦公開市場委員会もまた委員会である。それはどれだけ上手く機能しているだろうか?


Warshは理想的な委員会の特徴とFOMCを以下のように対比させている。

  • 成功する委員会は参加者が多過ぎない
    • FOMC投票権を持つ委員が12人と定められている。
    • だた、政策の検討はもっと大きな制度的枠組みで行われている。議論には(投票権の有無に関わらず)19人が参加し、全出席者は経済金融の各方面の専門家を含め約60人に上る。
  • 成功する委員会では各委員が独立した情報を持ち寄る
    • 各地区連銀総裁の背後には、予測や政策判断を支援する大人数の独立したエコノミスト職員がいるものの、FRBを通じて経済モデルや予測ツールは似たり寄ったりである。それが一因となって、FOMCの各委員の予測が驚くほど一致している。
  • 意見の不一致が無いことは、見解の幅が十分ではないことを示唆している
    • 見解の幅を測る一つの単純な指標は、多数派に反対票を投じたFOMC委員の数である。FOMCの伝統と実務において、反対票を投じるハードルは高い*2グリーンスパンバーナンキ両議長が少数派になることはついぞ無かった。一方、BOE総裁が投票で少数派となったことは1997年以降9回あった。
    • また、FRB理事は、地区連銀総裁と異なり、投票で反対票を投じることは滅多に無い。過去10年間に現職理事が反対票を投じたケースは1件のみ。
  • 成功する委員会では、人々は意見を忌憚無く表明する
    • 1993年以降、FRBはトランスクリプトを一定の期間後に公表するようになったが、Meade and Stasavage(2008)*3の研究によると、それによってFOMCの議論の質は低下した。その研究によれば、政策当局者には最適な意思決定と一般からの良い評判の獲得という2つの目標があり、後者は主流派の意見と一致していることと関連している。トランスクリプトの公表は、反対意見を抑制すると同時に、政策ポジションを変えにくくした。投票権を持つ委員による反対意見の数は、1989-1992年の期間における48から1994-1997年の期間における27に低下した。

*1:以下の本の第4章:

Central Bank Governance and Oversight Reform

Central Bank Governance and Oversight Reform

*2:cf. はてなブックマーク - himaginaryのブックマーク / 2016年1月31日

*3:cf. WP