ケインズがティンバーゲンに問うたこと

をKarl-Friedrich Israelがミーゼス研究所ブログでまとめている(H/T Mostly Economics)。

  • 完全性
    • ティンバーゲンは様々な要因の景気循環への寄与度を定量化しようとしたが、ケインズは、それが実際に可能となるのは、関連する要因の完全な一覧がある場合だけだ、と指摘した。
      • もしある要因が一覧から欠落して検討の対象外となった場合、その要因によって引き起こされた変化が、検討対象要因の結果として誤って解釈される、ということが生じかねない。
      • あるいは少なくとも、検討対象期間において無視された要因が一定となって実証結果に影響を与えない程度に経済が「均質」である必要がある。しかしそうした一定性を達成する方法は存在しない。
  • 計測可能性
    • 原則として関連する要因はすべて計測可能でなくてはならず、実務として我々は「その計測に関する適切な統計的知識を有している」必要がある。
    • ケインズが問うた「政策や、発明の進展や、期待の状況など、政治的、社会的、心理的要因」といった要素は確かに景気循環に影響するであろうが、定量化して計測することができるかは疑問。仮にそれができたとしても、信頼できる統計的情報は取得できないだろう。
  • 独立性
    • 要因が互いに独立していないと「見せかけの」相関を見い出す危険性がある、とケインズは指摘。
    • ティンバーゲンは確かにそのことを知っていて、ある個所では「注意深くなくてはならない」とも書いているが、「果たして彼は注意深かったのか?」とケインズは疑問視してる。ティンバーゲンはその問題に言及しつつも、解決法について論じないまま先へ進んでしまった。
  • 線形性
    • ティンバーゲンは線形関係しか考えていなかったが、それは当時の計算技術の限界という面もあった。しかしその前提は馬鹿げている、とケインズは一蹴した。
  • 恣意性
    • 「試行錯誤」の過程でティンバーゲンは、ある変数について時間ラグやトレンドを加えていたが、それは多かれ少なかれ恣意的な操作であった。