2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

成長は幸福度格差を縮小させる

という主旨の論文をクリス・ディローが紹介している。論文のタイトルは「Economic Growth Evens-Out Happiness: Evidence from Six Surveys」で、著者はパリ経済大学のAndrew E. Clark、Sarah Flèche、Claudia Senik。一見当たり前の結果のように見えるが、…

劣等生クルーグマンのための経済学入門

とでも言うべきエントリを少し前にStephen Williamsonが書いている。以下はその出だしの文章。 Paul Krugman is a very bad student. He doesn't pay attention in class, he refuses to read, and he complains constantly that he's not learning anything…

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第6弾)

マンキューがクルーグマンのブログポストに概ね同意しつつも批判している。 ポール君 ジェームズ・スロウィッキーが重要なことを言っている:もし、誰もがまともな暮らしを送っている社会を望むならば、誰もがまともな暮らしを送っている社会を作るべきだ――…

非伝統的金融政策の効果の持続期間

セントルイス連銀のエコノミストChristopher J. Neelyが「How Persistent are Monetary Policy Effects at the Zero Lower Bound?」という論文を書き、構造VARを使って非伝統的金融政策の効果の半減期を数ヶ月と見積もったJonathan H. Wrightジョンズ・ホプ…

いいや、シンデレラ婚の減少は所得格差拡大におそらく大して寄与していない

Jeremy Greenwood、Nezih Guner、Georgi Kocharkov、Cezar SantosのVoxEU記事を邦訳した経済学101のこのエントリを読んで、そういえば1ヶ月ほど前にマンキューやタイラー・コーエンが彼らのNBER論文を取り上げたほか、ケビン・ドラムが反論めいたブログ記事…

セーの法則なんかこわくない

というエントリをDavid Glasnerが書いている(原題は「Who’s Afraid of Say’s Law?」;H/T クルーグマン)。そこでGlasnerは、セーの法則が、同法則を攻撃したケインズの意図とは裏腹に、ケインズ経済学における乗数効果の供給側からの表現になっている可能…

なぜ理性的な人々は経済予測者として成功できないのか

と題したブログエントリ(原題は「Why Rational People Can’t Succeed as Economic Forecasters」)でジャスティン・フォックスが、下記の本の著者である歴史家ウォルター・フリードマン(Walter Friedman)ハーバードビジネススクール教授への自らのインタ…

マクロ経済理論が考慮すべき5つのこと

昨日リンクしたクリス・ディローの19日エントリでは、ここで紹介したサイモン・レンールイスの マクロ経済学モデル構築の卵をすべてミクロ的基礎付けという一つの籠に入れたことにより、急速に変化する現実世界に追随してマクロ経済学者が何か有益なことを言…

マクロ的な変動の粒状の要因

クリス・ディローが、ここで紹介した議論について論じた際に、表題の論文に言及している(ちなみにディローは1年ほど前に本ブログで紹介したエントリでも同論文にリンクしている)。論文の原題は「The Granular Origins of Aggregate Fluctuations」で、著者…

価格伸縮性の増大は安定的か?再説

という現ブラウン大学のエガートソンがNY連銀時代に書いた共著論文がNBER論文になり、Mark Thomaやデロングが必読としてリンクしたほか、バリー・リソルツもブログに論文を掲載している。論文の原題は「Is Increased Price Flexibility Stabilizing? Redux」…

離散的選択の神経経済学的最適化モデル

なるNBER論文(ungated版)をマイケル・ウッドフォードが書いている(原題は「An Optimizing Neuroeconomic Model of Discrete Choice」)。 以下はその要旨。 A model is proposed in which stochastic choice results from noise in cognitive processing …

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第5弾)

久々に両者のブログの間でキャッチボールが成立した。 ポール君 グレッグ君がまた上位0.1%擁護論説を書いたけど、ちょっと驚くべきものだね。ただ、その驚くべき本筋に入る前に、グレッグ君が冒頭で挙げた映画俳優について一言。確かに、一握りのスターが大…

ニューケインジアンのDSGEモデルはメフィストフェレスとの契約書なのか?

とサイモン・レン−ルイスが問い掛け、話題を呼んでいる。そこでレン−ルイスは、新しい古典派による反革命が学界を席巻した後、ケインジアンの考えを存続させるためにニューケインジアンはDSGEという形で悪魔に魂を売り渡したのか、と問うている*1。 レン−ル…

債務と成長:魔法の閾値が存在するのか?

というIMF論文が出ている。原題は「Debt and Growth: Is There a Magic Threshold?」で、著者は同基金のAndrea Pescatori、Damiano Sandri、John Simon(H/T 中村亨さんツイート、Economist's View)。論文の元の研究は、当時Conversable Economistや官庁エ…

システミックリスクを定量化するマクロ経済学的枠組み

という論文をシカゴ大のZhiguo Heとノースウエスタン大のArvind Krishnamurthyが書いている。原題は「A Macroeconomic Framework for Quantifying Systemic Risk」。 以下はその要旨。 Systemic risk arises when shocks lead to states where a disruption…

アベノミクスの金融部門:簡単なモデル

なる論文をAlexei Krouglovが書いている。原題は「Monetary Part of Abenomics: A Simplified Model」。 で、Krouglovって誰、という点についてだが、別の論文のSSRNエントリによるとカナダ在住のようで、肩書きは「Independent Researcher」となっている。…

オバマケアによる労働供給の低下で実質賃金が上昇するか?

CBOレポートに絡めて、マンキューがそう題したエントリを書いており、タイラー・コーエンも取り上げている。マンキューに言わせれば、教科書的な経済学からは一見そうなるように思われるが、それはあくまでも他の条件が等しいとした部分均衡に過ぎず、長期的…

マクロ経済学における大思想

4年前にエコノブロゴスフィアをdisってちょっとした騒ぎを引き起こしたリッチモンド連銀のKartik Athreyaが以下の本を出版し、各ブログで取り上げられている。Big Ideas in Macroeconomics: A Nontechnical View (The MIT Press)作者: Kartik B. Athreya出版…

我々は格差問題を経済学者に任せておくわけにはいかない

とジャスティン・フォックスが書いている(H/T Economist's View)。 そのエントリの後半でフォックスは、格差がもたらす問題に関する以下の4つの理論を紹介している。 上位1%への富の集中はバブルとその崩壊の頻発につながる 極端な富は政治過程を腐敗させ…

ルンバとしてのブートストラップ法

「ブートストラップ平均が使える時と使えない時」と題したエントリ(原題は「Bootstrap averaging: Examples where it works and where it doesn’t work」)でアンドリュー・ゲルマンが、最近Aki Vehtarizと共著した小論を紹介している。 まず、ブートストラ…

格差を巡るソロー対マンキューの論争

マンキューの上位1%擁護論文を巡り、ソローとマンキューが、昨年夏に同論文が掲載されたJournal of Economic Perspectives(JEP)誌の最新号の投稿欄で論争している(H/T マンキューブログ)。 以下はソローが挙げた6つの論点と、それに対するマンキューの反…

中央銀行の予測は民間予測に優るか?

という論文を欧州の3人の研究者が書いている。原題は「Does Central Bank Staff Beat Private Forecasters?」で、著者はMakram El-Shagi(ハレ経済研究所)、Sebastian Giesen(同)、Alexander Jung(ECB)。以下はその要旨。 This paper assesses the rel…

コント:ポール君とグレッグ君(2014年第4弾)

お互いへの直接の言及は無いが、同じCBOレポートを見て、インセンティブ効果について対照的な反応を見せている。 グレッグ君 CBOレポートからの引用: CBOはACAが総労働時間をネットベースで2017年から2024年に掛けて1.5〜2.0%減少させると推計している。そ…

今さらIS-LMのミクロ的基礎付け?

Economic Logicianが、Pascal Michaillat(LSE)とエマニュエル・サエズのNBER論文(ungated版)「An Economical Business-Cycle Model」を嘲笑的に紹介し、「bad research」の烙印を押している。 以下は論文の要旨。 We construct a microfounded, dynamic …

300 <スリーハンドレッド>

ジョン・テイラーが、FRBにおけるバーナンキの金融政策について300語の論説を書くようにWSJのワシントン支局から昨年12月に頼まれ、その後の似たような寄稿要請に対してその時に書いた文章を使い回したという。自ブログでその300語の文章を掲載している:*1 …

ケインズによる経済学の定義

と題したエントリ(「Econ 2: Further Reading: John Maynard Keynes's Definition of What Economics Should Be」)でデロングが、1938年7月4日付けのケインズからハロッドへの手紙を紹介している。 この書簡は、こちらの本で引用されている 経済学は論理学…

ナッティー・プロフェッサー

コチャラコタの金融緩和積極派への“転向”を取り上げた1/27付けNYT記事で引用されたプレスコットの以下の発言が話題になっている。 It is an established scientific fact that monetary policy has had virtually no effect on output and employment in the…

原油輸入減少が米貿易赤字に与える影響

シェールガス革命による米国の原油輸入量の減少は、長期的には米国の貿易収支に影響しない、という主旨の表題のレポート(原題は「Implications of Reduced Oil Imports for the U.S. Trade Deficit」)を、Robert Z. Lawrenceハーバード大教授が外交問題評…