オバマケアによる労働供給の低下で実質賃金が上昇するか?

CBOレポートに絡めて、マンキューがそう題したエントリを書いており、タイラー・コーエンも取り上げている。マンキューに言わせれば、教科書的な経済学からは一見そうなるように思われるが、それはあくまでも他の条件が等しいとした部分均衡に過ぎず、長期的にはそうならない、と言う。それは、以下の連鎖が働くためである*1

労働供給低下→所得低下→貯蓄低下→投資低下→資本ストック低下→生産性低下→労働需要低下


具体的には、ソロー成長モデルを考えるのが良い、とマンキューは言う。ソローモデルでは、定常状態の実質賃金は技術、貯蓄率、人口成長率の関数となる。一人当たり労働供給が突然2%減少し、そこに留まった場合、実質賃金は最初は上昇するが、結局は元の水準に戻り、定常状態の一人当たり所得は2%だけ低下する、とマンキューは説明する。


ただ、労働所得の内訳は変わるかもしれない、とマンキューは指摘している。もし労働供給の低下が専ら低熟練労働者で起きるのならば、全体的な賃金は変化しないにしても、相対賃金は変わるだろう、とのことである。


なおマンキューは、オバマケアによる労働供給の低下で実質賃金が上昇するという賢い経済学者の記事を最近幾つか読んだと書いているが、ぐぐってみると、例えばアラン・ブラインダーディーン・ベーカージョシュ・バローがそうした趣旨の記事を書いている(クルーグマン2/6付けNYT論説記事で「Oh, and because labor supply will be reduced, wages will go up, not down.」と書いているが、そのすぐ後で「Just to be clear, the predicted long-run fall in working hours isn't entirely a good thing.」とも書いているので、今回のマンキューのメインターゲットではないように思われる)。

*1:コーエンは、規模の経済が働けば、問題はさらに悪化する、と指摘している。