成長は幸福度格差を縮小させる

という主旨の論文をクリス・ディローが紹介している。論文のタイトルは「Economic Growth Evens-Out Happiness: Evidence from Six Surveys」で、著者はパリ経済大学のAndrew E. Clark、Sarah Flèche、Claudia Senik。

一見当たり前の結果のように見えるが、しかしそうなる理由は単純ではない。以下はディローの説明:

This isn't simply because it reduces the amount of abject misery. Growth also reduces the number of people who say they are very happy. This might be because wealth increases our options and hence the opportunity cost of our preferred choice. For example, work isn't too bad if it gets you out of a joyless slum, but it can be a misery if it keeps you off the golf course or guitar.
(拙訳)
これは、単に絶望的な悲惨さの量を減らすためではない。成長は、自分がとても幸福だと言う人の数をも減らす。これは、富によって選択肢が増え、選好結果の機会費用が増すためであろう。例えば労働は、楽しみのないスラムから抜け出させてくれるのであればそれほど悪いことではないが、ゴルフコースやギターから遠ざけるのであれば惨めなものとなり得る。


再分配よりも単純な成長促進によって最も重要な格差を解決すべき、というこの結果は、左派にとってあまり有り難くない、とディローは言う。ディローは、この結果に対する左派側の考えられる回答として、以下の3つを挙げている:

  1. 富の格差が成長の妨げとなる場合、成長促進政策は再分配を必要とする。これはサミュエル・ボールズの考え方*1
  2. 奴隷が自らの境遇に満足していたとしても奴隷制が正しくないように、人々の満足は社会システムの正当化には必ずしもつながらない。
  3. 格差は厚生主義とは別な理由で望ましくないこともある――お互いへの敬意や民主制度を損なう場合など。

*1:cf. ここ