いいや、シンデレラ婚の減少は所得格差拡大におそらく大して寄与していない

Jeremy Greenwood、Nezih Guner、Georgi Kocharkov、Cezar SantosのVoxEU記事を邦訳した経済学101のこのエントリを読んで、そういえば1ヶ月ほど前にマンキュータイラー・コーエンが彼らのNBER論文を取り上げたほか、ケビン・ドラムが反論めいたブログ記事を書いていたな、と思ったら表題の1/27付けエントリだった(原題は「No, the Decline of Cinderella Marriages Probably Hasn't Played a Big Role in Rising Income Inequality」)。

以下は彼のエントリの概要。

  • 観測されたジニ係数を、結婚パターンが完全にランダムな仮想世界と比較するのは少しミスリーディング。結婚パターンは1960年にもランダムではなかったし、「シンデレラ婚」が過去には一般的だったというのは現実ではなく神話に近い。下表の対角線を見ても、同類婚は1960年代以降そこそこ上昇したに過ぎないことが分かる。

         

  • 著者がランダムな反実仮想を用いたのは、1960年と2005年が大きく異なる理由を探るため。その結果、所得格差拡大は、同類婚の拡大そのものではなく、今日では以前より多くの女性が外で働くという単純な事実が主因である、と著者たちは結論付けた。結局のところ、男性が誰と結婚しようが、妻が外で働かない限り家計所得に影響しない。一方、大卒の女性が皆働き始めたら、同類婚が増えたか否かに関わらず、上流階級の家計所得は大きく上昇する。
  • これはかねてより繰り返しているポイントだが、所得格差拡大を考える際には、過去30年間においてはそれは概ね上位1%の現象だった、ということを常に念頭に置いておく必要がある。同類婚にせよ働く女性の増加にせよ、その所得水準に対し大きな影響を及ぼしたとは考えにくい。従って、所得格差拡大にも大した影響を及ぼしていないだろう(ただしこれは実証的な問題なので、間違っているかもしれない)。
    • 5分位の所得分布における最上位と真ん中の差には影響しただろうが…。