2012-01-01から1年間の記事一覧

クーレECB理事「国債購入計画の目的の一つは金融政策の主導権を取り戻すこと」

9/29エントリで紹介したロイターレポートに“端役”として出演していたベノワ・クーレECB理事が、そのレポートの主題である南欧の国債購入計画(OMT)に絡めて、昨日のエントリで取り上げた中央銀行から見た財政政策というテーマについて話している(Mainly Ma…

中央銀行が財政について語る時

について研究したECB論文をMostly Economicsが紹介している。以下はその要旨。 While the established literature on central bank communication has traditionally dealt with communication of monetary policy messages to financial markets and the wi…

抱擁資本主義の包容力

アセモグル、ロビンソンとThierry Verdierの論文「Can't We All Be More Like Scandinavians? Asymmetric Growth and Institutions in an Interdependent World(我々皆がスカンジナビア諸国のようになることはできないのか? 相互依存世界における非対称的…

ドラギの賭け

ロイターの9/25付けスペシャル・レポートが、7/26のドラギの「ユーロ安定のために何でもする」発言(cf. ここ)が、9/6発表の南欧の国債購入計画(cf. ここ)に結実するまでの内幕を報告している(Mostly Economics経由)。 以下はその概要。 7/26のロンドン…

ユーロの悲劇

一昨日のエントリで紹介したハンプル・チェコ中央銀行総裁の講演では、レイ・フアン・カルロス大学のフィリップ・バガスによるユーロに対する共有地の悲劇の喩えが引用されていたが、そのバガス自身による論考「The Tragedy of the Euro」が、The Independen…

ラインハート=ロゴフは何もしない言い訳にはならない

ここで取り上げたブラードのFT論説を批判して、Tim Duyがそう書いている(H/T Economist's View、デロング)。 以下はDuyが批判的に引用したブラード論説の一節。 Some may argue that real output and employment in the US have not returned to the pre-c…

共有地の悲劇としてのユーロ

ハンプル・チェコ中央銀行副総裁(Mojmír Hampl)のモンペルラン・ソサイエティーのプラハ大会での講演を、BISがHPに掲載している(Mostly Economics経由)。 そこでハンプルは、ユーロにおけるドイツの役割に対し、かなり辛辣な見方を示している。 Yes, the…

ドラギ「ドイツ国民に告ぐ」

ドラギECB総裁が南ドイツ新聞のインタビューにかなり率直に答えた記事が、ECBのサイトに転載されている(Mostly Economics経由)。 その中でインタビュアーが、42%のドイツ人がECB総裁としてのドラギに不信感を抱いている、と辛辣な指摘をしたのに対し、ドラ…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第9弾)

第8弾ではクルーグマンの当てこすりをマンキューがスルーした事例を紹介したが、今度はマンキューがクルーグマン(とデロング)を当てこすったのを、今のところ両人ともスルーしている。 [追記] …と思ったら、このエントリを書いている最中にクルーグマン…

日本の大停滞の二の舞を避けるためにFRBがやったこと

デロングのいわゆるFOMC第3グループに属するエリック・ローゼングレン・ボストン連銀総裁が、表題の件について9/20講演で解説している(Mostly Economics経由)。 The Great Stagnation in Japan did lead to a monetary policy response from the Japanese …

ラッカー奇想博覧会

デロングのいわゆるFOMC第4グループ*1の人たちのQE3決定後の発言がブロゴスフィアで取り沙汰されていたので、以下に簡単にまとめてみる。 ブラード([http //www.ft.com/intl/cms/s/0/168023d6-0243-11e2-b41f-00144feabdc0.html#axzz26y8i3Fza:title=FT論説…

なぜ労働分配率は下がったのか?

について分析したOECD論文をEconomic Logicが紹介している。 以下はその要旨。 We examine the determinants of the within-industry decline of the labour share, using industry-level annual data for 25 OECD countries, 20 business-sector industries…

人々はキャッシュレス社会を求めてはいない

と題したエントリで、Economic LogicがNaoki Wakamori*1 and Angelika Welteによる論文を紹介している。以下は同論文の要旨。 Recent studies find that cash remains a dominant payment choice for small-value transactions despite the prevalence of al…

コント:ポール君とグレッグ君(2012年第8弾)

このところクルーグマンがロムニーの金融政策について頻りにマンキューを引き合いに出して当てこすっているが、今のところマンキューは知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいるようだ。 ポール君(8/24) そんな昔のことでもないんだが、共和党が――他の主張はとも…

暗黒の水曜日の2つのパラドックス

20年前の9月16日に起きた暗黒の水曜日(=ポンドのERM離脱;cf. ここ)について、Chris Dillowが興味深い考察を示している。彼によれば、その出来事から2つのパラドックスが導かれるという。 一つは、ERM参加は何年も経済学者が熱心に議論して決めたことであ…

ウッドフォード「名目GDP目標は妥協案」

Mark Thomaやサムナーが賛意を表しつつ紹介しているWaPoインタビューで、ウッドフォードがそう述べている。 We proposed what we called an “output gap adjusted price level target”. The idea was to talk about a price level, as opposed to the inflat…

ゼロ金利下限をそれほど気にしなくても良い理由

WCIブログのNick Roweが、ゼロ金利下限は無問題と主張する人々を批判したサイモン・レン−ルイス(ここ、ここ)に反応して、以下の4つの論考を提示している: ゼロ金利下限は実際に壁であり、経済がそこを越えたいのに越えられない場合には宜しくない状況に陥…

失業の原因は収穫逓増にあり

マイルス・キンボールが、自分がマクロ経済学者の道を歩むことを決意するきっかけになった論文として、マーチン・ワイツマン*1の1982年の論文「Increasing Returns and the Foundations of Unemployment Theory」を紹介している。 以下はキンボールの同論文…

早期退職は早死ににつながらない

以前、早期退職が寿命を縮める、という研究結果を紹介したことがあったが、それを否定する研究がノルウェーから出た(Economic Logic経由)。以下はその要旨。 This paper studies the relationship between retirement and mortality, using a unique admin…

市場を捨つるほどのリフレ効果はありや

FT Alphavilleのカーディフ・ガルシア(Cardiff Garcia)が、ベックワースとのこれまでの論争の内容を整理している*1。 論争のテーマを一言で言うと、超過準備への付利を下げる(ないし撤廃する)と市場に混乱が起きるが、本当にそうしたコストを払うに値す…

ギャニオン「ポートフォリオバランス効果は存在する」

昨日紹介したブリューゲルブログのエントリや、ジェームズ・ハミルトンのEconbrowserエントリに言及しつつ、ジョセフ・ギャニオンがウッドフォードのポートフォリオバランス無効論に反論した(デロング経由)。 Woodford asserts that there can be no portf…

ウォレスとトランスミット

ブリューゲルブログ*1が、例のウッドフォードの論考をとば口に、ウォレスの中立性についてまとめている(H/T Economist's View)。 そこでは、中央銀行がリスク証券を買い入れることによって民間のリスクを減らすというポートフォリオバランス効果がウォレス…

アセモグルって制度の歴史的要因を強調しすぎじゃね?

とこちらのシンポジウムでアンドレイ・シュライファーがコメントしたらしい(Mostly Economics経由のMatthew Kahn経由)。 このシンポジウムではアセモグルも講演したとのことだが、シュライファーの講演はそれを受けたもののようである。彼は、制度の重要性…

民間債務こそ金融危機の原因

とワシントンブログがバージニア大学のAlan TaylorのNBER論文を引きながら強調している。 以下はBusiness Insiderによる同研究の紹介。 Through a series of tests run on a sample of 14 advanced economies between 1870 and 2008, Mr Taylor establishes …

自然利子率は今いずこ?

9/2エントリでは、金融緩和政策の弊害について論じたホワイト論文に触れ、脚注ではFT Alphavilleのイザベラ・カミンスカが自説の補強に援用している、と書いた。しかし実はその援用に当たって、カミンスカは肝心な点でホワイトとは逆方向の主張を展開してい…

ハイパーインフレの原因とはならないこと

ここで紹介したケイトー研究所のハイパーインフレーション論文を読んで、フェリックス・サーモンが以下のような考察を述べている*1。 The real value of this paper is its exhaustive nature. By looking down the list you can see what isn’t there — and…

経済的座り心地が政治的立ち位置を決める

Mostly Economicsが、アセモグル=ロビンソンの主張に沿う好例として、Dalibor Rohacによる表題の主旨の論文を紹介している(原題は「Where You Sit is Where You Stand: Policy Preferences in the Czechoslovak Transition」)。 以下はその要旨。 This pa…

ロムニーの税政策は数学的に成立しない?・補足

8/31に取り上げたデロングのフェルドシュタイン批判に対し、フェルドシュタインが(名指しは避けつつも)マンキューブログの場を借りて反論した。ただ、小生が指摘したような論点は前面に押し出さず、批判者の主張を取り入れても、あれやこれや工夫すれば減…

需要不足の解決策としての構造改革

ジョージ・W・ブッシュ政権下でCEA委員長を務めたエドワード・ラジアーが、ジャクソンホールで失業について報告したが、それが意外にも需要不足を認めるものだった、としてMark Thomaやクルーグマンが好意的に取り上げた。 それに対しAndolfattoが、いや、ラ…

ウッドフォードがやってくる!

ジャクソンホールで提示した論文でマイケル・ウッドフォードが名目GDP目標支持を表明したことで、市場マネタリスト界隈がちょっとした祭り状態になった: スコット・サムナー デビッド・ベックワース(邦訳) ラース・クリステンセン Marcus Nunes もちろん…