コント:ポール君とグレッグ君(2012年第8弾)

このところクルーグマンロムニーの金融政策について頻りにマンキューを引き合いに出して当てこすっているが、今のところマンキューは知らぬ顔の半兵衛を決め込んでいるようだ。

ポール君(8/24)
そんな昔のことでもないんだが、共和党が――他の主張はともかく――金融政策については主流派のコンセンサスに沿っていた時期があった。多分グレッグ君が書いたと思われる2004年の大統領経済報告には、「積極的な金融政策は景気後退の深刻度を減じることができる」という記述がある。しかし今やロムニーベン・バーナンキの首をすげ替えようという意図を明らかにしており、その理由というのが、景気後退と戦うために積極的な金融政策を追求しているため(十分に積極的ではないと思うのだが、それはまた別の話だな)、だそうだ。
ポール君(9/15)
時代は変わったもんだ。2004年にグレッグ君は、大統領経済報告で「積極的な金融政策は景気後退の深刻度を減じることができる」と宣言した。しかし今、FRBが漸くミニ大恐慌を何とかしようと重い腰を上げ始めた時に、他ならぬグレッグ君が顧問を務めているとされるミット・ロムニー激怒して曰く*1、「米国経済には人為的かつ役に立たない政策対応はもう必要無い。我々のすべきことは富を創造することであり、ドルを刷ることではない」
ここで本当に不思議に思わなければならないのは、この男の陣営に与している馬鹿では無いはずの経済学者たちのことだ。おそらく彼らは、選挙が終わればまともな経済学が戻ってくる、と考えているのだろう。しかし多分彼らは間違っている。彼らは、山師や変な考えに凝り固まった人をこの国の運転席につけようとして自らの信頼性を犠牲にしているんだ。
ポール君(9/15)
さっきのエントリには注釈が必要だったね。「山師や変な考えに凝り固まった人」というのは、グレッグ君が彼の教科書の初版で――そして初版だけで――次のような人たちを描写するのに用いた文言なんだ:「ロナルド・レーガンの経済顧問の中には、広範囲に亘る減税はサプライサイド面で非常に大きな効果をもたらすので、減税の結果として税収が増加する、とレーガンに言った者もいた」
でも、ざっくり言ってそれが今のミット・ロムニー公式見解なんだけどね。

クルーグマンはさらに、9/16NYT論説邦訳)でも上記の指摘を繰り返し、マンキューを皮肉っている。

*1:リンク先記事によると、正確にはロムニー陣営のpolicy directorであるLanhee Chenが出したプレスリリースの文言。