コント:ポール君とグレッグ君(2012年第7弾)

休暇中のクルーグマンがマンキューらを厳しく批判する一方で、それを知ってか知らずか(知らないわけも無いと思うが)マンキューが休暇宣言を出している。

ポール君
まだ休暇中だけど、少しネットにアクセスできるのでチェックしてみたんだが、グレン・ハバード、グレッグ君、ジョン・テイラーは、ロムニー陣営の経済政策白書で自らの評判を貶めたね(4人目の著者ケビン・ハセットは「ダウ36000」の共著者だから貶める評判が元々無いわな)。いや、単に内容に同意できないということではなく、否定する余地の無い職業上の不正行為に公然と手を染めた、ということなんだ。根拠薄弱、ないし明らかに間違った主張をするのと、他の経済学者の仕事を引用して、実際には違うのに、それが自分の立場を支持する、と主張するのはまったく別の話だ。これは僕がそう言っている、という話じゃあない。引用された著者たちがそう抗議している、という話なんだ。

この話に曖昧なところは無い。例えば、家計の負債と不況に関するミアンとスフィの研究は、需要不足による恐慌という見立てを立てるに当たって大きな役割を演じた。そうした恐慌下では、景気刺激策がまさに意味を持つことになる。だから彼らの研究の一部を引用して景気刺激策に反駁していると主張するのは、完全に分かっていないか、恥知らずかのどちらか(もしくは両方)だ。あるいは、ブラッド・デロングが指摘した別の例を見てみよう。不確実性が景気回復の妨げとなっていると主張するベーカーらの論文*1では、そうした不確実性が債務上限問題での共和党の瀬戸際戦略などに起因していることを明らかにしており、オバマケアなどを俎上に載せているわけでは無い、というのは、その議論をフォローしている人ならば誰でも知っていることだ。

ハバード、グレッグ君、テイラーは本当に分かっていないのかな? そうは思えないね。彼らは単に、特に職業上の対価を払うことなく素人を相手に誤魔化しおおせる、と考えているんだ。彼らが間違っていることを祈ろう。

サイモン・レン−ルイスは、グレッグ君やテイラーが何に取り憑かれてこのように魂を売るに至ったか不思議がっている。その答えを完全に知っているというつもりは無いが、彼らは単に、不正行為を当たり前のこととしているロムニー陣営のやり方に巻き込まれたのだと思う。そのやり口を表わす事例は、オバマ大統領への非難やら税政策やらベイン退職時の話やら枚挙に暇が無い。

そう考えると、そうした陣営に名を貸すという決断をした経済学者が、不正行為の文化に囚われの身となったとしても不思議は無い。あるいは最初は躊躇いはあったのかもしれないが、気がついたら、過ちが容易に明るみに出るようなトンデモレポートに名前を載せていた、というわけだ。

弁護の余地のあることのためにやったことだとしても、これはひどい話だ。芯を持たず、個人的野心以外の目的を持たない人間を大統領に据えるためにやったことならば、最悪だ。
グレッグ君
例年通り刻苦勉励日除けが大いに必要なナンタケット島経済の研究に行くので、ブログは9月の授業開始まであまり書かないと思う。僕からのコメントを何か得たいと思う記者さんは、運が悪かったと思って諦めてくださいな。

*1:cf. ここ