コント:ポール君とグレッグ君(2012年第5弾)

今回は期せずして、両者が同じ日(4/7)に同じようなグラフを描き、同じような指摘を行った――ただし違う文脈においてだが。

グレッグ君
これが回復ってやつなの?


ポール君
僕が雇用のたった一ヶ月の悪い数字に過剰反応しているという人がいるけど、そういうわけじゃない。世間の方が四ヶ月の良い(ように見える)数字に過剰反応していて、3月の数字が良い酔い覚ましになった、ということさ。僕の好きなグラフである働き盛りの雇用人口比率を見てごらんよ――ここで失業ではなく雇用に着目するのは、職探しをやめてしまった人々による統計の歪みを回避するためで、働き盛りに限定するのは高齢化による人口動態の問題を回避するためなんだが、これがそのグラフだ:

  

 
最近では、政策に影響力を持つ人々を含めた世間一般が、このグラフの右端のちょっとした上向きの動きを、警戒態勢を解除して景気を下支えする試みを停止し、代わりにインフレを心配すべき時期が到来した証拠だ、と受け止めている。それは勘違いも甚だしい。これは、金融危機後の雇用の低下をほんの少し押し戻したか押し戻さないか、というレベルの話に過ぎない。完全な回復からは依然として程遠いんだ…。
しかも先月の数字が警告を発したように、好ましいトレンドがこのまま続くかどうかも分からない。
こうした数字が出る前の僕は追加的な刺激策を求めていたが、それは今も変わらない。唯一の違いは、根拠無き自己満足に抗することが2日前より少し楽になったかも、ということくらいかな。

両者とも雇用人口比率を描いて、非農業部門雇用者数の増加に見られる回復の強さに疑問を投げ掛けている点は共通しているが、(ロムニーの顧問である)マンキューの指摘が現民主党政権への嫌味という側面が隠せないのに対し、クルーグマンは更なる財政出動(および金融緩和)を求める材料としている点が決定的に違う。


ちなみにマンキューのエントリに対しては、(マンキューがCEA委員長として仕えた)ブッシュ政権時代の雇用の悪化状況の方が現政権よりももっと悪い、温室に住んでいる人は石を投げる際に注意したほうが良い、と批判したエントリがAngry Bearに上がっている