デロングのいわゆるFOMC第4グループ*1の人たちのQE3決定後の発言がブロゴスフィアで取り沙汰されていたので、以下に簡単にまとめてみる。
- ブラード([http
- //www.ft.com/intl/cms/s/0/168023d6-0243-11e2-b41f-00144feabdc0.html#axzz26y8i3Fza:title=FT論説記事]):インフレ率が目標の2%以上になる必要は無い。Smets=Woutersによれば、経済がショックを受けた際には元に戻るのに時間が掛かるが、その際に失業率やインフレ率がオーバーシュートすることは無い。無理にインフレ率をオーバーシュートさせようとすれば70年代のスタグフレーションの二の舞になりかねない。
- FRBの雇用の最大化という使命に対応する失業の自然率は今や上昇していると信ずべき理由がある。
- 前回の2009年と2010年の資産購入政策の際にはデフレの危機が差し迫っていたので、失業への影響云々に関係なく、追加緩和は2%のインフレ目標を達成するのに役立った。今はインフレ面ではFRBは問題を抱えていない。
- 将来の経済の過熱を許容するという時間軸政策の考えには賛成できない。
- MBSの大量購入によって中央銀行が信用フローを特定の部門に流すことは、ある借り手を別の借り手の犠牲の上に優遇することであり、中央銀行の独立性の濫用である。
このうちのブラードの発言は、サムナーやDavid Glasnerが批判している(Glasnerには直近エントリでクルーグマンがリンクしている)。なお、ブラードは、ロイターのインタビューに応えて、QE3はもっと景気の悪化がはっきりしてから発動すべきだった、とも述べているが、それはここで紹介した「行動を起こす前に辛抱強くもっとデータを集める」べき、というWSJインタビューでの発言と符合している。
また、(本エントリのタイトルのネタに使った)ラッカーの発言はStephen Williamsonが取り上げているが、そこでWilliamsonは、彼は単なる極端なタカ派と見做すべきではなく、十分に合理的で、かつ、現代の主流派経済学の思想に沿っている、と評している。
上記3人のうちブロゴスフィアで最も議論を呼んだのはコチャラコタの発言で、失業率の5.5%という数字を持ち出したことから彼もハト派に転じたのだ、と言う人もいれば、いや、インフレ目標の許容範囲が狭いから相変わらずタカ派だ、という人もいる。その辺りの議論のリンク集としては、ここが良くまとまっている(H/T Economist's View)。
ちなみに先のStephen Williamsonは、ラッカーに対するのと打って変わって低い評価をコチャラコタに下しているが、その主な理由が、ニューケインジアンの考えに寄り過ぎているから、というのが如何にも彼らしい*2。