2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

日銀の債務超過懸念へのバーナンキからの“回答”

岩本康志氏が5/30のブログエントリで、長期国債を日銀が買い取り、その後売却した場合に生じる債務超過(ないし自己資本毀損)についての懸念を表明している。 さて,かりに日銀が利払費2.4兆円を納付金として政府に納めたら,どうなるか。最初に十分な自己…

マンキューの財政政策への懐疑論

5/25エントリや昨日のエントリで取り上げたThoma=Andolfatto論争だが、Andolfattoが5/27エントリでクルーグマンやデロングに対する表現に行き過ぎがあったことを認めて謝罪したことで一応の決着を見たようである。ただ、Andolfattoは同時にThomaが自分の意…

主流派マクロ経済学者への5つの建設的提言

5/25エントリで取り上げたThomaとAndolfattoの論争を受けて、Rajiv Sethiがマクロ経済学者の今後進むべき方向についての彼なりの提言をまとめている。 合理的期待形成は行動に関する仮定ではなく、均衡に関する仮定なので、「フォワード・ルッキングな行動」…

ユーロ崩壊:あるシナリオ

フェリックス・サーモンの5/20ブログエントリより。 2010年8月18日 スペインが自国の窮地に立つモーゲージの貸し手の救済費用が2500億ユーロ以上に達すると発表し、水曜日の世界の市場が暴落した。S&Pとムーディーズは直ちにスペイン国債を格下げし、それに…

アルゼンチンからユーロへの教訓

昨日のエントリに対し、「ユーロはそのまま残して、ローカルな通貨を追加で発行することはできないのかなあ」というコメントを頂いた。実はvoxeuの別の記事で、まさにそのテーマを扱ったものがある。「内的減価の様々な手法:アルゼンチンという鏡から見た欧…

ユーロ脱退のコスト

クルーグマンがブログで何回も取り上げたように(5/5、5/4、4/28、2/17)、今回のギリシャ危機によって、バリー・アイケングリーンの2007年のvoxeu論説が改めて脚光を浴びている。そこでアイケングリーンは、ユーロ離脱の際の経済的、政治的、および手続き上…

ニューケインジアンモデルは財政刺激策を論じる上で有効か?

表題の議論は以前取り上げたことがあったが、Economist's Viewでそのテーマが再び論じられている。きっかけは、Mark Thomaが、サイモンフレーザー大学の経済学部教授で現在はセントルイス連銀のエコノミストを務めているDavid Andolfattoのブログ記事に噛み…

ラジャンの経済断層論

昨日のエントリではラジャンの預金保険に関する独自の見方を紹介したが、そこで言及したTIME本体のインタビュー記事でも、新著「Fault Lines: How Hidden Fractures Still Threaten the World Economy」で述べられている彼独自の見解を披露している。彼によ…

ラジャン「預金保険なんかいらない」

The Curious Capitalistにラジャンへのインタビューに関するエントリが上がっていた。インタビューの本体はタイムのオンラインサイトに掲載されているが、そこには掲載しなかったやり取りの中で、ラジャンが表題のようなことを述べたという。以下は該当部分…

コチャラコタ「淡水学派と塩水学派? そんな区分は計算機技術の発達で消滅した」

ミネアポリス連銀総裁のコチャラコタの論考「Modern Macroeconomic Models as Tools for Economic Policy」が評判を呼んでいる(例:マンキューブログ)。内容的には以前紹介した10の考察と重複する部分も多いが、以下に概略をまとめてみる。 コチャラコタは…

政府債務のマネタイズを再定義する

Mostly Economicsに表題のエントリ(原題は「Redefining monetizing government debt」)が上がっていた。内容は、セントルイス連銀経済顧問のダニエル・ソーントン(Daniel L. Thornton)の論考「Monetizing the Debt」の紹介*1。 ソーントンによると、中銀…

トービンの市場効率性論

Rajiv Sethiがトービンによる市場効率性の4分類を紹介している(出所は1984年のLloyds Bank Reviewに掲載された"On the Efficiency of the Financial System"と題した記念講演録[Fred Hirsch Memorial Lecture]とのこと)。 情報裁定効率性(information a…

玉葱とハリウッドの共通点・続き

5/14のエントリで映画の興行収入の先物に対する規制が導入されそうだという話を紹介したが、当該記事を書いたフェリックス・サーモンがブログでフォローエントリを上げている。そこで彼は、映画先物反対論をぶったブロガーのジョシュア・ブラウン(Joshua Br…

“trading facility”と“facility”の違い・続き

5/7エントリでは、米金融改革法案において、スワップ取引の手段から電話を除こうとした動きが無効化されそうになっている、という話を紹介した。この件について、Rortybombで続報があった。 以下はそのRortybombエントリでリンクされたブルームバーグ記事か…

ギリシャ人はドイツ人より良く働くし家計の借金も少ない

Economist's View 5/14エントリより(元はTwenty-Cent Paradigms)。 Economist's View 5/17エントリより(元はnaked capitalism)。

もう一つのトリレンマ

経済学においては、国際金融のトリレンマと呼ばれる有名な関係――資本移動の自由、国内金融政策の独立性、固定為替相場は同時に達成できない――がある。たとえば昨日紹介した研究は、このトリレンマが海外の出稼ぎ労働者からの送金で緩和される、という話だっ…

仕送りと為替政策の関係

MIT newsに5/5付けで面白い記事が掲載されている。内容は、デビッド・アンドリュー・シンガー(David Andrew Singer)という准教授が行なった研究で、海外への出稼ぎ労働者の送金が、その母国の為替政策に影響を与える、というもの。 シンガーの研究結果は、…

玉葱とハリウッドの共通点

5/6のエントリでデリバティブ規制の小史を紹介した際、先物取引の範囲を定義したCommodity Futures Trading Commission Act of 1974の条文を引用したが、その中に「all other good and articles, except onions」という一節があった。なぜ例外規定としてonio…

政府の基礎研究援助は経済成長に不可欠

昨日のエントリでディーン・ベーカーの記事を取り上げたが、それを紹介したEconomist's Viewポストではもう一つ面白い記事を紹介している。それは、The Science Coalitionという44の研究大学を会員とする団体(要は科学研究者のロビー団体らしい)が出したニ…

起業の雇用創出効果

アトランタ連銀のmacroblogで、ジョン・ロバートソン(John Robertson)が小企業が雇用創出に果たす役割について考察している(Economist's View経由)。 そこでロバートソンは、労働統計局のBusiness Employment Dynamics (BED) データから作成した以下のグ…

日本は最適通貨圏か?

一昨日のエントリでは、ギリシャ危機をきっかけとしたユーロを巡るマンキューとクルーグマンのやり取りを紹介した。そこでクルーグマンがリンクしたデビッド・ベックワースは、2次元の座標図を使用して最適通貨圏を視覚的に捉える方法を紹介している。彼は、…

米国でのバラッサ=サミュエルソン効果

一昨日のエントリで、日本ではバラッサ=サミュエルソン効果の前提となる労働市場での賃金の収束が生じていないのではないか、という主旨のことを書いたが、それに対し、他の先進国ではどうか、というはてぶが付いた。そこで取りあえず、データが労働統計局…

コント:ポール君とグレッグ君(2010年第5弾)

久々にまともな(!)やり取り。 グレッグ君 ポール君がギリシャについて思慮深くかつ示唆に富んだコラムを書いている*1。でも、地域間の移転支出を司る中央集権的な巨大政府が存在しないから欧州は最適通貨圏ではない、という議論はどうかな?(この議論に…

バラッサ=サミュエルソン効果破れたり?

最近1/30エントリにコメントを貰って、改めてバラッサ=サミュエルソン効果について考えていたのだが、そもそもバラッサ=サミュエルソン効果の前提となる国内賃金の収束はどの程度成立しているのか、ということがふと気になった。そこで、国税庁の長期時系…

“trading facility”と“facility”の違い

5/1エントリでRortybombのマイク・コンツァル(Mike Konczal)が主唱する金融改革に関する6項目を紹介したが、その中のデリバティブの項では、リンカーン上院議員の改革案に言及し、それを弱める動きには抗すべき、と書かれていた。しかし、同じRortybombの4…

店頭デリバティブ規制はどこの担当だったのか?

これまでクリントン政権時代の店頭デリバティブ規制への対応を巡るルービンへの批判、なかんずくCFTC委員長だったブルックスリー・ボーンに彼が掛けた圧力への批判について何回かエントリを重ねてきた。そこで浮かび上がってきたのは、そもそも店頭デリバテ…

ルービンとデリバティブ規制・その4

一昨日のエントリで触れたジェイコブ・ワイズバーグのルービン擁護論で挙げられたルービン批判記事の中に、2008/10/30slate記事があった。そこでは、デリバティブ規制に賛成しているにも関わらず、昨日のエントリで見たようにボーンの動きを封じた、というル…

ルービンとデリバティブ規制・その3

昨日紹介したEconomics of Contemptの2009/5/25エントリのコメント欄で、スタンフォードマガジンという雑誌にもボーンの話が掲載されていたことを知った(記事のタイトルは「Prophet and Loss」)。内容的にはここで紹介したWaPo記事と重複する部分が多いが…

ルービンとデリバティブ規制・その2

4/24エントリでロバート・ルービンの責任論が浮上していることを取り上げたが、その後も議論が続いている。特にルービン批判の急先鋒に立っているのがフェリックス・サーモンで、直近の5/1エントリでは、ジェイコブ・ワイズバーグ(「ルービン回顧録」の共著…

サミュエルソンと均衡財政の神話

カンザスブログでランドール・レイ(L. Randall Wray)がサミュルソンの以下の言葉を引用している。出所は、かつてマーク・ブローグ(Mark Blaug)が作成した1時間番組*1でのインタビューとのこと。 I think there is an element of truth in the view that …