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レジーム変化の経済的帰結:概観

というNBER論文が上がっている。原題は「Economic Consequences of a Regime Change: Overview」で、著者はAssaf Razin(テルアビブ大)、Efraim Sadka(同)。 以下はその要旨。 Regime changes toward autocracy typically reshape the judicial framework, effectively eroding the separation of power…

中央銀行にとっては少々益益弁ず

3/5エントリに、そこで取り上げた白川論文が掲載されたIMF季刊誌の同じ号の表題のラジャン論文(原題は「For Central Banks, Less Is More」)をどう思うか、というコメントを頂いた。同論文の主旨を乱暴にまとめると、今現在問題になっている高インフレレジームと、これまで問題になってきた(そして今後また舞い戻る可能性のある*1)低インフレレジームでは、中央銀行に求められるコミットメントが違うが、コミットメントにおける時間的整合性ないし時間軸効果*2の性格上…

Shirakawa(2023)対白川(2002)

IMFの白川論文が話題になったが、小生から見ておかしいと思われる点をまとめておく。 日本の2000-2012年の生産年齢人口当たりの成長率がG7の中で最も高いことをゼロ金利制約の無効性の根拠としているが、12年前の拙エントリで示したように、その期間の生産年齢人口当たりの成長率は、リーマン・ショックの影響もあり、期間の取り方によって簡単に国別の大小がひっくり返るので、分析や議論の根拠に使うのは不適切。 同期間の需給ギャップを見ると、内閣府の計算でも日銀の計算でも概ねマイナスであ…

ビッグデータを使って気候変動対策に情報を提供するソロモン・シャンのプロフィール

と題したエントリ(原題は「Profile*1 of Solomon Hsiang, who uses big data to inform climate change policies..」)でMostly Economicsが、IMFの季刊誌Finance & Development9月号の人物紹介記事の冒頭を引用している。この季刊誌の記事は本ブログでも何回か紹介したことがあるが、日本語版があることに今回初めて気づいたので*2、その該当記事の訳と併せてMostly Eco…

理由ある反抗

と題したIMFのFinance & Development6月号の人物紹介記事で、ダニ・ロドリックが取り上げられている(原題は「Rebel with a Cause」。H/T Economist's View、マンキューブログ)。 そこではロドリックがハーバードに入学した経緯について以下のように述べられている。 He was able to go from his native Turkey to Harvard because of his father’s success…

ジョン・ベイツ・クラーク賞が後味の悪いものとなる時

5日エントリで触れたIMF季刊誌「Finance & Development」の3月号では、人口特集のほかに、カード=クルーガー論文で有名なデビッド・カードの人物紹介記事も掲載されている。その中でカードは、ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞した時の経験を以下のように語っている。 On these fronts and others, Card’s research rocked the boat, generating a degree of excitement but al…

世界人口の地殻変動

「Global Demography: Tectonic Shifts」と題したConversable EconomistブログエントリでTim Taylorが、人口動態を特集したIMFの季刊誌「Finance & Development」*1の3月号から、デビッド・ブルーム(David Bloom)ハーバード大教授の筆頭論文「Taking the Power Back」の内容を引用している。以下はその孫引き。 ●世界人口の変化 Ninety-nine percent of …

暗隅に繋がれた鬼を避く

昨日エントリの冒頭で触れたIMFブログ記事は「U.S. Monetary Policy: Avoiding Dark Corners」と題されており、その元となっている論文は「Avoiding Dark Corners : A Robust Monetary Policy」と題されている。ここで「dark corner」はブランシャールの昨年9月の論説で用いられた語であり、同論説では以下のように説明されている。 We all knew that there were “dar…

世界の保険業者としての米国

「トリレンマではなくジレンマ」論文を22日エントリで取り上げたHélène Reyについて、紹介記事がIMFのFinance & Developmentに掲載されている(H/T Economist's View)。そこではReyの国際金融システム研究への貢献として、ジレンマの話のほか、米国の役割の解明が挙げられている。 以下はその引用。 Among her most influential work is the research she did with Gourincha…

ATMの普及と銀行の窓口係の仕事の変化

ボストン大学のJames Bessenが、IMFのFinance and Developmentで、自動化の進展と雇用の関係について考察している(H/T Tim Taylor)。そこで彼は、ATMが普及したにも関わらず銀行の窓口係の職員数が増加した例を引き、自動化が必ずしも失業につながるとは限らない、と指摘している。 ATMに普及にも関わらず銀行の窓口係が増加した理由として、Bessenは以下の2点を挙げている。 以前より少ない人数で支店を開くことができるようになったので(平…

経済学と道徳

経済学は道徳劇ではない、というのはクルーグマンが良く口にするところだが(cf. ここ、ここ)、Timothy TaylorがこのテーマについてIMFのFinance & Developmentサイトに寄稿している(H/T Mostly Economics;Taylor自身も自ブログで取り上げている)。 その記事の冒頭でTaylorは、経済学と道徳との関係に向けられた3つの疑問を紹介している。 ECONOMISTS prefer to sidestep moral issues…

ピサリデスとキプロス

引き続きIMFのFinance&Developmentのピサリデス記事から、今日は出身国のキプロスに纏わる2つのエピソードを紹介してみる。 まずは、キプロス紛争が彼の人生に与えた影響。 With Ph.D. in hand, Pissarides returned to Cyprus to work in the research department of the central bank. But the fates conspired to move him back …

ピサリデスの2つの貢献の政策的意義

昨日はIMFのFinance & Developmentサイトに掲載されたピサリデスの記事から彼の労働経済学への2つの貢献を紹介したが、同記事ではそれぞれの貢献から引き出された実務的ないし政策的意義についても記述されている。 まずは、マッチング関数によるベバリッジ曲線のリバイバル。 Pissarides’s work on the matching function led to a revival of interest in the Beveridge curve, th…

ピサリデスの2つの貢献

IMFのFinance & Developmentでノーベル賞受賞経済学者のクリストファー・ピサリデスが取り上げられている(H/T マンキュー、Mostly Economics)。その中でピサリデスの2つの主要な貢献について以下のように紹介されている。 まずは、マッチング関数。 Charles Bean, former deputy governor of the Bank of England and LSE faculty member, says Pissarides’…

世界の経済的不平等について知っておくべき10のこと

をKathleen Geierというシカゴ在住のライターが自ブログで挙げている(H/T Economist's View)。 世界経済の不平等を計測するのは非常に困難 各国が実施する国別の調査はあるが、世界規模の統一的な所得に関する家計調査は存在しない。 国別調査は質や質問や手法が標準化されていない。さらに以下の問題がある: 何が所得かという問題。例: 自作農の所得をどう記録するか 医療保険(ある国では無料の皆保険、ある国では被雇用者の民間給付パッケージ)を所得として扱うかど…

私の名前はカルメンです

最近のラインハート=ロゴフ論文を巡る騒動で一躍渦中の人となった感のあるカーメン・ラインハートのインタビュー記事をIMFが掲載している(Mostly Economics経由)。以下は彼女の共同研究者だったギレルモ・カルボのラインハート評と、ラインハート自身の自らの方法論の説明部分の引用。 According to Calvo, now at Columbia University and one of the profession’s foremost theoretician…

金を鉛に変えたローマー

昨日に引き続きIMF季刊誌のローマー記事から、今度は彼女の学位論文に関するエピソードを紹介する。 The then-prevailing view among macroeconomists was that the U.S. economy was much more stable following World War II than it had been in the decades prior to the war, leading many to conclude…

ローマーがオバマ政権入りした理由

クリスティーナ・ローマーへの取材記事がIMFの季刊誌Finance & Developmentに掲載されている(H/T Mostly Economics)。そこでは、ローマーがCEA委員長として政権入りするために、大統領に選ばれたばかりのオバマの面接を受けた時のエピソードが以下のように記されている。 Obama began the meeting by saying that monetary policy had done all it could to solve the…

アカロフの最大の関心事

23日のエントリでIMFの機関誌に掲載されたアカロフの記事に軽く触れたが、この記事はマンキューがリンクしているほか、アカロフの教え子だというメンジー・チンがEconbrowserで紹介している。ただ、一番興味深かったのは、Mostly Economicsの以下の紹介文。 What strikes you in the profile (and most of Akerlof’s work) is his focus on unemployment. It is like hi…

経済モデルとは何か

昨日はvoxeuのリスクモデルに関する考察記事を紹介したが、IMFの季刊誌「Finance & Development」の最新号にはマクロ経済モデルに関する記事が掲載されている(原題は「What Are Economic Models?」;Mostly Economics経由)。 そこでは、「経済モデルは現実を単純化した描写(An economic model is a simplified description of reality)である」と定義した上で、経済的行動の定…

ソローになり損なった男

一昨日と昨日に引き続き、IMFのソローインタビューから、気になったトピックを拾ってみる。 経済学の理論では、ほぼ同時に発見したにも関わらず、そのうちの一人の発見者だけが有名になるという事象が時々見られるが*1、ソローの成長理論でも同じことがあったと言う。その有名になれなかった同時発見者の名はトレバー・スワン。ソロー自身はスワンの業績を認識しており、彼の仕事が忘れられないために「惜しみない努力(generous efforts=スワンの娘で著名な貿易経済学者のバーバラ・スペンサ…

内生的成長論に足りないもの

昨日のエントリではIMFセミナーの場でのvoxeuによるロバート・ソローへのインタビューを紹介したが、こちらのサイトではIMF自身によるソローへのインタビューが掲載されている(Mostly Economics経由)。ただし時期は少し前(昨秋)で、場所もソローのMITの研究室との由*1 そのインタビューでは、ソローの主要な業績である成長理論がやはり話の中心となっているが、その中で、ポール・ローマーとロバート・ルーカスらが創始した内生的成長論についても触れられている。ソロー自身は…

すばらしい新世界

3/5に紹介したブランシャールの3/4付けIMFブログエントリで予告されていた今後のマクロ経済政策に関する3/7-8のコンファレンスが成功裏に終わったようで、既にあちこちでそのセミナーに関する反響が見られる。ブランシャール自身は3/13エントリでそのコンファレンスの彼なりの総括を9つのポイントにまとめている(動画はこちら)ので、以下にそれを拙訳で紹介してみる。 我々は危機後にすばらしい新世界(brave new world*1)に突入した。それは、政策策定という面ではこれまで…

永遠の23歳

はてなキーワードの永遠の17歳のようなタイトルになってしまったが、それがアビナッシュ・ディキシットの研究術だという。 Of all the lessons I have learnt during a quarter-century of research,” writes Dixit, “the one I have found most valuable is always to work as if one were still twenty-three. From s…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第11弾)

今回は小ネタを2つまとめて紹介。 言葉だけ ポール君 ロバート・サミュエルソンとグレッグ君は2人とも、我々は力強く行動すべきだ、と訴えている。訴えの対象は、サミュエルソンは医療費高騰について、グレッグ君は石油消費に税金を掛ける「ピグー・クラブ」への参加についてだ。しかし2人とも、(a)法制化の可能性が少しでもある、もしくは、(b)民主党の提案、のいずれかの実際の提案については、拒否するに決まっている。ただ言葉だけなんだ。 単位根の遺恨 グレッグ君 以前の僕とポール君の単位根を…