昨日のエントリではIMFセミナーの場でのvoxeuによるロバート・ソローへのインタビューを紹介したが、こちらのサイトではIMF自身によるソローへのインタビューが掲載されている(Mostly Economics経由)。ただし時期は少し前(昨秋)で、場所もソローのMITの研究室との由*1
そのインタビューでは、ソローの主要な業績である成長理論がやはり話の中心となっているが、その中で、ポール・ローマーとロバート・ルーカスらが創始した内生的成長論についても触れられている。ソロー自身は、自らの理論では単に外生的な技術進歩と置いた要因の中身をさらに追究しようとするそうした方向性を歓迎しているという。ただ、同時に、現在の内生的成長論の研究に対して苦言めいたアドバイスも提示しているのが興味深かったので、以下に紹介してみる*2。
Solow believes there should be much greater interaction between cloistered university economists and those working in private sector research laboratories.
His suggestion to economists modeling technological progress is to spend some time in research laboratories to better appreciate the randomness of scientific progress and the interplay between the creative process and the incentives of profit-making firms. Solow should know: he served for eight years on the Science Advisory Committee of General Motors, where the research laboratories are “the size of a small university.”
“I’m convinced that the problem is there will always remain for economics an exogenous element in technological progress because there is an exogenous element in science. Any scientist or analytical engineer will tell you that when you work on something, you often end up solving a problem different from the one you thought you were working on. And so, from the point of view of economics, what comes out of science and engineering is exogenous. And there will always be that element, but the endogenous growth literature just doesn’t seem to me to be capturing that.”
(拙訳)
ソローは、象牙の塔に引き籠りがちな大学の経済学者は、民間の研究所で働いている人々ともっと交流すべき、と考えている。
技術進歩をモデル化しようとしている経済学者に対して彼が提案しているのは、研究所でしばらく過ごし、科学進歩のランダム性、および、創造的過程と利益を追求する企業のインセンティブとの相互作用をきちんと把握することである。ソロー自身はそのことを良く理解している。彼は、ゼネラル・モーターズの科学諮問委員会に8年間務めていたが、そこの研究所の規模は「小規模の大学並み」だったという。
「問題なのは、技術進歩の経済学においては外生的な要因がどうしても残ってしまう、ということです。というのは、科学には常に外生的な要因が存在するからです。科学者や分析を専門とする技術者の誰しもが、あることを研究していると、最初に取り掛かったはずの問題とは別の問題を解決する結果に終わることが多い、と言います。というわけで、経済学にしてみると、科学や工学から生み出されるものは外生的なのです。そうした外生的要因は常に存在しますが、内生的成長論の研究はそれをきちんと捉えていないように私には思われます。」