ATMの普及と銀行の窓口係の仕事の変化

ボストン大学のJames Bessenが、IMFのFinance and Developmentで、自動化の進展と雇用の関係について考察している(H/T Tim Taylor)。そこで彼は、ATMが普及したにも関わらず銀行の窓口係の職員数が増加した例を引き、自動化が必ずしも失業につながるとは限らない、と指摘している。
ATMに普及にも関わらず銀行の窓口係が増加した理由として、Bessenは以下の2点を挙げている。

  • 以前より少ない人数で支店を開くことができるようになったので(平均的な都市部での支店当たりの窓口係の人数は1988年から2004年に掛けて20から13に減少した)、市場占有率を上げるために銀行がより多くの支店を開くようになった(都市部の支店は43%増加した)。
    • この点についてTaylorは、1980〜1990年代に州内や州外で支店を増やすことに関する規制が多くの州で緩和されたこともこの動きを促進したのではないか、と指摘している。
  • ATMで自動化できなかった金融商品販売などの対人関係の仕事が残った。それによって、窓口係の仕事の重点は、現金の受け払いから客とのつながりに移った。


Bessenは結論部で以下のように述べている。

New information technologies do pose a problem for the economy. To date, however, that problem is not massive technological unemployment. It is a problem of stagnant wages for ordinary workers and skill shortages for employers. Workers are being displaced to jobs requiring new skills rather than being replaced entirely. This problem, nevertheless, is quite real: technology has heightened economic inequality. ...
The information technology revolution may well be accelerating. Artificial intelligence software will give computers dramatic new capabilities over the coming years, potentially taking over job tasks in hundreds of occupations. But that progress is not cause for despair about the “end of work.” Instead, it is all the more reason to focus on policies that will help large numbers of workers acquire the knowledge and skills necessary to work with this new technology.
(拙訳)
新しい情報技術は確かに経済に問題をもたらす。しかしながら、これまでのところの問題は、技術による大量失業ではなかった。問題は、一般労働者の賃金の停滞、および、雇用者から見て技術を持った労働者の不足にある。労働者は完全に置き換えられるのではなく、新たな技術を必要とする仕事に移行されつつある。とは言え、この問題は極めて現実的なものである。技術によって経済格差は拡大した。・・・
情報技術革命は加速していくだろう。今後、人工知能ソフトウエアがコンピューターに目覚ましい新たな能力を与え、何百という職業の仕事を吸収する可能性がある。しかし、そうした進歩は、「仕事の終焉」がもたらさられるのだという絶望の理由にはならない。それは、多くの労働者がこの新技術と共に働くのに必要な知識と技術を獲得するのを支援する政策に重点を置くべき理由を一層強固なものとする。