生産性パラドックス再び?

Ryan Aventが、ロボット化が90年代末のような生産性や賃金の上昇を引き起こしていない理由について考察している(H/T クルーグマン)。ロボット化が誇張されている、というのが一つの回答になるが――そして、ロバート・ゴードンやマット・イグレシアスDuncan Weldonクルーグマンはそうした説明に傾いているが――、Aventは昨秋出版した自著*1を基に、別の解釈を示している。Douglas Campbellがその解釈を簡潔にまとめている

It's more-or-less the skill-biased technological change hypothesis, repackaged. Technology makes workers more productive, which reduces demand for workers, as their effective supply increases. Workers still need to work, with a bad safety net, so they end up moving to low-productivity sectors with lower wages. Meanwhile, the low wages in these sectors makes it inefficient to invest in new technology.
(拙訳)
それは大体において技能偏重的技術変化仮説の焼き直しである。技術は労働者をより生産的にし、それによって労働者の実効的な供給が増加するため、労働者への需要は減少する。それでも労働者は働かなくてはならないため、セーフティネットが整っていない状況下では、生産性が低く賃金も低い部門に行き着く。そして、それらの部門では賃金が低いため、新技術に投資するのは非効率的となる。


クルーグマンは、ラーナーダイアグラムをこの問題に応用して、Aventの言っていることも起き得る、という分析を示している。一方、Campbellは、ロボット化が同じく起きているはずの日独でそれほど賃金格差が広がっていないことや、格差拡大が技術進歩や中国との貿易によるものではないことを示した自分の過去の研究を基に、Aventの説明に疑義を呈している。

*1:

The Wealth of Humans: Work, Power, and Status in the Twenty-first Century

The Wealth of Humans: Work, Power, and Status in the Twenty-first Century