というNBER論文をロゴフらが上げている(ungated版へのリンクがあるブルッキングス研究所の論文紹介ページ)。原題は「A Tale of Two Countries – The Real Estate Crises in 1990s Japan and Contemporary China」で、著者はKenneth S. Rogoff(ハーバード大)、Yuanchen Yang(IMF)。
以下はその要旨。
Real estate has long been central to China’s growth model, yet since 2018 its contribution has declined sharply, turning the sector from a key engine of expansion into a major drag on economic activity. While policy tightening might have triggered the downturn, it reflects deeper structural imbalances in a sector that, together with its upstream and downstream linkages and infrastructure, accounts for nearly one-third of aggregate demand. With housing comprising nearly 70 percent of household wealth, the ongoing price correction has generated sizable negative wealth effects, amplifying the contraction through depressed consumption, investment, and sentiment. We document the macroeconomic propagation of China’s real estate downturn and assess the risks of prolonged stagnation should the sector continue to deteriorate. To provide perspective, we compare China’s experience with Japan’s real estate collapse in the 1990s, uncovering striking parallels in investment dynamics and consumption responses despite profound institutional differences. Our findings highlight the importance of real-side channels, including alternative amplification mechanisms (in addition to banking), in generating persistent output losses following real estate busts.
(拙訳)
不動産は長く中国の成長モデルの中心にあったが、2018年以降その寄与は急速に低下し、同部門は拡大の主エンジンから経済活動の主たる足手まといへと変じた。引き締め政策が停滞のきっかけだったかもしれないが、そうした停滞は上流と下流との連関とインフラとを合わせて総需要の1/3近くを占める部門におけるより奥深い構造的不均衡を反映している。住宅が家計資産の70%近くを占める中で、進行中の価格修正は大きな負の資産効果をもたらし、消費、投資、および心理の落ち込みを通じて収縮を増幅している。我々は、中国の不動産停滞のマクロ経済的な伝播を明らかにし、同部門が悪化を続けた場合の長期不況のリスクを評価する。概観を提供するため我々は、中国の経験を1990年代の日本の不動産バブル崩壊と比較し、制度がまったく違うにもかかわらず投資の推移と消費の反応が極めて類似していることを明らかにする。我々の発見は、不動産不況後の持続的な生産の損失をもたらす上での(銀行以外の)代替的な増幅メカニズムなど実体側の経路の重要性を浮き彫りにする。
結論部では、日本の不動産不況が長引いたのは、投資のリターンの鈍化、弱い消費、および、そうした弱さを強めたマイナス心理の相互作用のため、としている。日本の不動産バブル前後の状況と、中国の構造的ならびに循環的な特性との類似を考えると、中国の不動産不況はまだ道半ば、と著者たちは言う。
日本は1970年代にも不動産不況を経験したが、それは循環的なもので、回復は早かった。一方、1980年代末以降の不動産バブルの崩壊後の日本は、人口の伸びの低下とデフレ予想の定着といった構造的な要因が経済に長引く影響を与えた。中国でも、人口動態のトレンド、住宅ストックの過剰、不動産と財政の連関といった構造的な問題が住宅市場にある、と著者たちは指摘する。マクロ経済と人口動態の状況は日本より悪い、と著者たちは言う。
また、危機の開始時において中国は日本より貧しい国である、という問題もある(下図)。ただし、所得の収斂に関する実証結果からはっきりしたことは言えないため、その影響は不明確、とも述べている。

その一方で、経済と制度において中国は依然として強みを持っており、それが不動産不況のクッションになるかもしれない、と著者たちは指摘する。日本は、バブル崩壊後、林=プレスコットが指摘するように生産性の成長が制約条件となったが、現在のAI革命で米国と並ぶフロントランナーと見做されている中国にはその問題はない。また、金融システムを国が支配していることで、暗黙裡の国の保証と、大規模な介入を可能にする極めて能動的な政策ツールがあり、それが危機の金融部門への波及をこれまで防いできた、とのことである。