23日のエントリでIMFの機関誌に掲載されたアカロフの記事に軽く触れたが、この記事はマンキューがリンクしているほか、アカロフの教え子だというメンジー・チンがEconbrowserで紹介している。ただ、一番興味深かったのは、Mostly Economicsの以下の紹介文。
What strikes you in the profile (and most of Akerlof’s work) is his focus on unemployment. It is like his lemon/ information asymmetry papers are just part of some random thoughts which econs keep getting from time to time:
(拙訳)
この人物紹介記事(およびアカロフの仕事の大部分)を読んで驚くのは、彼が失業に力点を置いていることだ。彼のレモンないし情報の非対称性の論文は、経済学界が彼から定期的に受け取る様々な考えの単なる一部に過ぎなかったかのようだ:
この紹介文の後で、Mostly Economicsは記事から以下の文章を引用している。
Akerlof says the topic that has motivated him the most over his 40-year career is unemployment. “I have always thought of unemployment as a terrible thing. In fact that has been the motivation for almost everything I have ever written. A person without a job loses not just his income but often the sense that he is fulfilling the duties expected of him as a human being.”
(拙訳)
40年を超えるキャリアにおいて彼を最も突き動かしたテーマは失業だ、とアカロフは言う。「私は失業はひどいものだといつも思っていました。実際のところ、私がこれまで書いてきたものは、ほぼすべてそれに動機付けられていました。仕事の無い人間は、所得を失うだけでなく、人間としてやらねばならないことをやっている、という感覚まで失ってしまいます。」
そうした失業への関心から結実した研究の一つが、妻ジャネット・イエレンと行った効率賃金仮説に関する研究との由。
また、記事の後半では以下のような話も記されている。
In his 2001 Nobel lecture, Akerlof describes his own life as a child and young man as mostly a happy one, but subject to the vicissitudes of his father’s career. Akerlof remembers thinking that “if my father lost his job, and my family stopped spending their money, then another father would lose their job and so on. The economy would spiral downward.” Worries about his father’s job prospects may explain, he wrote in the lecture, why “in some sense I began work on unemployment theory when I was 12. Fifty years later I am still mulling over the same subject.”
(拙訳)
2001年のノーベル賞受賞講演*1でアカロフは、自分の青少年時代は概ね幸せだったが、父親の仕事の不安定さの影響を受けた、と述べている。アカロフは「もし自分の父親が仕事を失って、我々の家族が支出することをやめてしまったら、他の父親が仕事を失って、といったことが続くだろう。経済は急速に悪化するに違いない」と考えたことを覚えている。父親の仕事の将来への不安が、「ある意味で私は12歳の時に失業理論の研究を始めた。50年後の今も同じテーマについて考え続けてる」ことの理由だろう、と彼はその講演に書いている。