2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

学業成績ベースのインセンティブ効果:ランダム化実験からの証拠

というNBER論文をスティーブン・レヴィットらが書いている。原題は「The Effect of Performance-Based Incentives on Educational Achievement: Evidence from a Randomized Experiment」で、著者はSteven D. Levitt(シカゴ大)、John A. List(同)、Sally…

博士と彼女のセオリー

「A brief history of human time」というVoxEU記事が半月ほど前に上がっている(H/T Mostly Economics、Economist's View)*1。著者はOlivier Gergaud(ケッジビジネススクール)、Morgane Laouénan(パリ第一大学国立科学研究センターソルボンヌ経済研究所…

コント:ポール君とグレッグ君(2016年第2弾)

民主党より共和党が保護主義的と述べたクルーグマンのNYT論説に、「Who are the free traders?(誰が自由貿易主義者か?)」と題したブログエントリでマンキューが噛みついた。 グレッグ君 ポール君が今日奇妙な論説を書いているね。自由貿易主義者ならば、…

組織犯罪、暴力、ならびに政治

というNBER論文が上がっている。原題は「Organized Crime, Violence, and Politics」で、著者はAlberto Alesina(ハーバード大)、Salvatore Piccolo(サクロ・クオーレ・カトリック大)、Paolo Pinotti(ボッコーニ大)。 以下はその要旨。 We investigate …

ギリシャに消えた嘘

ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相が、「Lies, damn lies, and European growth statistics(嘘、ひどい嘘、および欧州の成長統計)」と題したProject Syndicate論説で、実質GDPを重視するEU当局らの姿勢をこき下ろしている(H/T Mostly Economics)。 “…

長期停滞が意味すること

タイム誌が長期停滞に関する記事を掲載している(H/T Economist's View)。以下はそこからの引用。 Though the consensus around what secular stagnation means is loose, one factor almost everyone agrees on is the lack of population growth that con…

公害の外部性を取り込んだ米経済の産業連関モデル

というNBER論文が上がっている。原題は「An Input-Output Model of the U.S. Economy with Pollution Externality」で、著者はNicholas Z. Muller(ミドルベリー大)。 以下はその要旨。 Input-output (I-O) analysis represents the flows of goods and ser…

偏っている可能性のある統計から学ぶこと:アルゼンチンにおける家計のインフレ認識と予想

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Learning from Potentially-Biased Statistics: Household Inflation Perceptions and Expectations in Argentina」で、著者はAlberto Cavallo(MIT)、Guillermo Cruces(国立ラプラタ大)、Ricardo Pe…

財政危機と金融危機

というNBER論文をボルドーらが書いている(ungated版)。原題は「Fiscal and Financial Crises」で、著者はMichael D. Bordo(ラトガーズ大)、Christopher M. Meissner(UCデービス)。 以下はその要旨。 Interconnections between banking crises and fisc…

今日の経済的課題および解決策を捉えた5つの単純な方程式

と題したエントリでジャレッド・バーンスタインが以下の5つの方程式を提示し、それぞれに呼び名を付けている(H/T Economist's View)。 バーンスタインはそれぞれの方程式に詳細な解説を付けているが、以下では呼び名と共に各解説の抜粋を併せて示しておく…

デロング=サマーズに消費増税を当てはめたら

ツイッターなどでの消費税の影響に関する議論を見て、ふと、デロング=サマーズ論文の計算に消費税を当てはめたらどうなるだろうか、ということが気になった。そこで、ここで紹介した一連の関係式を、財政刺激策から消費増税に置き換えたら(即ち、ΔGを-YnΔt…

どの(マクロ)経済学者に耳を傾ける価値があるのか?

在外ないし最近まで在外だった日本人経済学者のツイートをここ数日で幾つか目にした際に、以前ブクマ/ツイートしたクルーグマンのエントリ「誰に耳を傾けるべきか(Who To Listen To)」の追記部分を否応無く思い出したので、以下にそれを紹介してみる。 PS…

p値の価値

今月初めに米統計学会がp値の使用に関する6つの原則を公表した。その責任者である同学会Executive DirectorのRonald L. Wassersteinは、Retraction Watchという論文撤回監視ブログ*1のインタビューに応じ、最近の再現性危機問題が今回の声明の背景にあること…

富、所得、持続可能性、会計の間のある理論的つながり

というNBER論文をワイツマンが書いている。原題は「Some Theoretical Connections Among Wealth, Income, Sustainability, and Accounting」。 以下はその要旨。 In theory, and under some quite strong assumptions, there exists an important rigorous q…

マクロ経済学における家族

というNBER論文が上がっている。原題は「Families in Macroeconomics」で、著者はMatthias Doepke(ノースウエスタン大)、Michèle Tertilt(マンハイム大)。 以下はその要旨。 Much of macroeconomics is concerned with the allocation of physical capit…

プロパガンダの限界:チャベスのベネズエラからの実証的結果

というNBER論文が上がっている。原題は「The Limits of Propaganda: Evidence from Chavez's Venezuela」で、著者はBrian Knight(ブラウン大)、Ana Tribin(コロンビア中銀)。 ungated版の導入部では、プロパガンダに対する人々の反応をベネズエラのデー…

NYの最低賃金引き上げは福音となるか?

アンドリュー・クオモNY州知事が最低賃金を一時間当たり9ドルから15ドルに引き上げようとしているが(NY市では2018年末まで、それ以外の地域では2021年7月1日まで)、それは生活水準にプラスの影響をもたらす半面、雇用全体にはマイナスの影響はもたらさない…

自由貿易の恩恵の虚実

クルーグマンが、保護主義者は常に自由貿易の負の側面を誇張し、自由貿易論者は常に自由貿易の正の側面を誇張する、と論じた(ここ、ここ)。 それに対しデロングが以下のように異を唱えた。 ...looking around the world we see a world in which income di…

リカードからの意外な贈り物

ブランコ・ミラノビッチが、パトリック・コルクホーンの社会表*1およびロバート・アレンの近刊本「The Industrial Revolution: A Very Short Introduction」を基に、リカードが「経済学および課税の原理」で問題視した穀物法が継続していた場合の所得配分を…

何もしてあげられない、何もしてあげられないから、あなたの口癖・・・

今回のECBの緩和措置について、ドラギ総裁の2012年の「何でもやる」発言*1に引っ掛けたタイトルのブログエントリが2人の欧州の経済学者によって上げられている(いずれもEconomist's View経由)。ともに金融政策の限界を指摘する内容になっている。一つはAnt…

賃金保険による経済格差の緩和

をロバート・シラーがNYT論説で提唱している(H/T Economist's View)。 そこで彼は、米国政府による賃金保険の導入の経緯とその問題点を以下のように説明している。 The idea caught on: President George W. Bush and Congress embraced it in 2002, and l…

最低賃金を引き上げるべき理由

引き続き最低賃金ネタ。Economist's ViewのMark Thomaが、theFiscalTimesで最低賃金引き上げを訴えている。 彼の論旨は概ね以下の通り。 労働市場での賃金決定は、経済学の教科書通りに労働者の限界生産力に等しくなるように決まるわけではなく、労働者と経…

カードが最低賃金や移民の研究をやめた理由

昨日引用したカードの記事から、別の箇所を引用してみる。昨日引用した箇所では彼の研究を攻撃する人への彼の不満が述べられていたが、以下では逆に彼の研究を祭り上げる人への不満が述べられている。 His empirical work has always been shaped by a degre…

ジョン・ベイツ・クラーク賞が後味の悪いものとなる時

5日エントリで触れたIMF季刊誌「Finance & Development」の3月号では、人口特集のほかに、カード=クルーガー論文で有名なデビッド・カードの人物紹介記事も掲載されている。その中でカードは、ジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞した時の経験を以下のように…

市場が今政府に懇願していること

27日ブログエントリでクルーグマンが、公共投資を今推進すべき理由を3つ挙げている。最初の理由については以下のように書いている。 The first case is simply that America has an obvious infrastructure deficit, and that it has never been cheaper to …

道具にして規則に非ず:経済学入門で我々は間違った原理を教えているのか?

Eastern Economic Journalの最新号でDavid Colanderが表題の小論を書き(原題は「Tools, Not Rules: Are We Teaching the Wrong Principles of Economics in the Introductory Course?」)、マンキューの提唱する経済学の十大原理への修正を提案している(H/…

世界人口の地殻変動

「Global Demography: Tectonic Shifts」と題したConversable EconomistブログエントリでTim Taylorが、人口動態を特集したIMFの季刊誌「Finance & Development」*1の3月号から、デビッド・ブルーム(David Bloom)ハーバード大教授の筆頭論文「Taking the P…

国際金融市場の不完備性は為替相場を説明する要因となるか?

というNBER論文が上がっている(SSRNでungated版が読める)。原題は「Does Incomplete Spanning in International Financial Markets Help to Explain Exchange Rates?」で、著者はHanno Lustig(スタンフォード大)、Adrien Verdelhan(MIT)。 以下はその…

FRB創設以前の銀行危機はどのように終息したのか?

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「How Did Pre-Fed Banking Panics End?」で、著者はGary Gorton(イェール大)、Ellis W. Tallman(クリーブランド連銀)。 以下はその要旨。 How did pre-Fed banking crises end? How did depositors’ …

オンライン小売りにおける入札動学とデッドラインの理論

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「A Theory of Bidding Dynamics and Deadlines in Online Retail」で、著者はDominic Coey(イーベイ研究所)、Bradley Larsen(スタンフォード大)、Brennan Platt(ブリガムヤング大)。 以下はその要…