NYの最低賃金引き上げは福音となるか?

アンドリュー・クオモNY州知事最低賃金を一時間当たり9ドルから15ドルに引き上げようとしているが(NY市では2018年末まで、それ以外の地域では2021年7月1日まで)、それは生活水準にプラスの影響をもたらす半面、雇用全体にはマイナスの影響はもたらさない、という研究結果をUCバークレーバークレー・ニュースが伝えている(H/T Economist's View)。論文の著者はMichael Reich、Sylvia Allegretto、Ken Jacobs、Claire Montialoux(いずれもUCバークレーIRLE[ Institute for Research on Labor and Employment]所属)。
以下は同記事が伝える結果概要。

  • NY市の労働力人口の約37%が恩恵を蒙る。2021年半ばまでに320万人近くの労働者が平均23%の賃金増を得る。
  • 最低賃金より高い賃金を受け取っている人の平均賃金が2015年ドルにして年4900ドル増え、消費支出が押し上げられる。
  • 賃金が増える労働者の半数近くが3つの業種で働いている。即ち、小売り(18%)、医療および社会福祉(16%)、レストラン(14%)。
  • 州全体の給与負担の増加は3.2%にとどまる。これは、多くの企業が既に15ドル以上支払っていること、および、賃金増となる労働者も現在の最低賃金である9ドルより多く受け取っていることによる。また、労働費用は平均して企業の運転費の1/4であるため、価格転嫁による価格上昇は賃金の上昇よりかなり小さくなる。
  • 企業の雇用者の回転率が下がり、募集や引き止めの費用の節約が、給与の増分のおよそ1/8を相殺する。また、労働者の生産性も上がる。そのほか、低賃金労働の自動化も相殺に寄与する。
  • 最低賃金引き上げ過程の0.2%の物価上昇は消費者が吸収するだろう。これは近年の平均的なインフレ率の2%より遥かに小さい。
  • 5年後に3200という僅かな雇用効果が得られる。これは2021年のNY州の雇用の0.04%に相当する。
  • 全体的な効果としては、低賃金への労働者の利得は大きく、最低賃金引き上げはNY州において富が広く分配されることを意味する。
  • 効果は地域と業界によって違うだろう。また、研究では賃金引き上げの労働者やその子供の健康への影響を考慮していないが、それはおそらくプラスだろう。