コント:ポール君とグレッグ君(2016年第2弾)

民主党より共和党保護主義的と述べたクルーグマンNYT論説に、「Who are the free traders?(誰が自由貿易主義者か?)」と題したブログエントリでマンキューが噛みついた。

グレッグ君
ポール君が今日奇妙な論説を書いているね。自由貿易主義者ならば、民主党の方が歴史的にみて好ましいはずだ、とのことだ。曰く

僕が民主党よりも共和党の方が保護主義的だったと言う時、金ぴか時代の高関税政策のような大昔のことを言っているわけでは無い。ロナルド・レーガンジョージ・W・ブッシュのような現代の共和党の大統領のことを言っているのだ。レーガンは、結局、自動車に輸入割当を課して、それは消費者に何十億ドルという費用を負担させる結果に終わった。そしてブッシュ氏は鉄鋼に関税を課したが、それは明白な国際協定違反だった。欧州連合が報復的な制裁を課すと脅した時に漸く引っ込めたんだ。
実際のところ、後者のエピソードは、貿易について景気の良い発言をする人にとって実際的な教訓となるべきものだ。ブッシュ政権超大国幻想の良くない症例を呈していて、米国が世界中のことを差配できると信じていた。その考え方の誤りは、イラクでの失敗によってこの上なく人目を惹く形で示された。しかし貿易でのしっぺ返しの方がより早かったのだ。そこでは欧州をはじめとする他のプレイヤーが我々と同等の力を持っていた。

この記述は、幾つかの都合の悪い逆の事実を無視している。例えば議会の民主党の多数派はNAFTAに反対票を投じたが、共和党の多数派は賛成票を投じた。
でも何といっても僕の目を惹いたのは、ブッシュの鉄鋼関税について如何にポール君が間違っているか、ということだ。僕はこのエピソードの一部の現場にいたので、ブッシュ大統領保護主義者だった、という彼の解釈が完全にあべこべだ、ということを自信を持って言える。
ブッシュ大統領は、今後の貿易協定の交渉のために、ファストトラックとして知られる貿易促進権限を得たいと思っていた。しかし、議会にそれを納得させるのは難しかった。鉄鋼関税は、貿易促進権限を通過させるのに必要な票のうち数票を得るのと引き換えに導入されたのだ。そこでの政治的計算は、貿易を広範かつ恒久的に開放するのに必要なツールを得るために、小規模で一時的な貿易制限を受け入れるのもやむを得ない、というものだった。
確かに、約1年半後、その関税は国際貿易の規則違反であることが判明した。だが、そのことはずっと予想されていたことだった。実際のところ、計画の一部だったとさえ言える。WTOの裁定が公表されると、ブッシュ大統領は喜んで関税を撤廃したが、それはまさに彼がかねてから目論んでいたことだった。
この計算によってもたらされた貿易促進権限は、自由貿易の計画を前に推し進めることになった。例えばCAFTAもその成果だ。この貿易協定が投票に掛けられた時、またもや議会の民主党の多数派は反対票を投じ、共和党の多数派は賛成票を投じた。