2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

記憶、関心、および選択

というNBER論文をアンドレイ・シュライファーらが書いている(ungated版)。原題は「Memory, Attention, and Choice」で、著者はPedro Bordalo(オックスフォード大)、Nicola Gennaioli(ボッコーニ大)、Andrei Shleifer(ハーバード大)。 以下はその要旨…

生産性パラドックス再び?

Ryan Aventが、ロボット化が90年代末のような生産性や賃金の上昇を引き起こしていない理由について考察している(H/T クルーグマン)。ロボット化が誇張されている、というのが一つの回答になるが――そして、ロバート・ゴードンやマット・イグレシアスやDunca…

実証分析で初心者が犯す過ち

昨日紹介したBellemareのブログ記事では、彼がAngrist=Pischkeと同様の精神に基づいて書いたという過去のブログ記事にリンクしている。そのうちの表題の記事(原題は「Rookie Mistakes in Empirical Analysis」)では、通常の回帰で十分な時にプロビットや…

もう二度と計量経済学に触れない学生への計量経済学の教え方

Marc Bellemare(cf. ここ、ここ)がMetrics Mondayで、先月20日に紹介した Angrist=Pischke論文を取り上げている。そこでBellemareは、Angrist=Pischkeは、Dieboldの言うG2ないしノアピニオン氏の言う構造モデルを別に否定しているわけではなく、単に後回…

インドの持続的成長のために必要なもの

ないし、欠けているものについてTim Taylorが、カーネギー国際平和基金から出されたV. Anantha NageswaranとGulzar Natarajanのレポートを基に以下の10項目にまとめている。 インドの教育システムは子供たちを学校に行かせることに成功したが、教えることに…

収斂しなくなった生産性

Tim Taylorが、BOEのチーフエコノミストのアンドリュー・ホールデン(Andrew Haldane)が20日にLSEで行った生産性に関する講演を紹介している。それによると、ホールデンは世界的な生産性成長率の傾向について以下の3点を指摘している。 生産性成長の鈍化は…

財政刺激策は購買と移転のどちらが良いか?

以前、リーマンショック後の財政政策(2009年アメリカ復興・再投資法=ARRA)の大部分が移転支出だった、というジョン・テイラーの指摘を紹介したことがあった(ここ、ここ)。ロバート・ホールは、そうした移転支出を受けた人が支出を増やしたか、というの…

実証研究の正しい受け止め方

引き続きノアピニオン氏の実証研究ネタ。21日付ブルームバーグ論説で氏は、改めて理論に対する実証の優位性を訴えつつも、実証研究の結果は必ずしも確定的なものではない――特に経済学では――ことを踏まえて、そうした結果をどのように受け止めるべきか、につ…

実証が理論を打ち破る時

最近紹介した実証分析を巡る議論は、Russ Robertsの見たAutor-Dorn-Hanson論文を巡る論争が一つのきっかけとなっていたが、ノアピニオン氏が David Autorに直接取材したブルームバーグ論説を書いている。 If empirical studies can lead top mainstream econ…

新薬の普及に情報技術が与える影響

亡くなったケネス・アローが共著者に名前を連ねている表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Impact of Information Technology on the Diffusion of New Pharmaceuticals」で、他の著者はKamran Bilir(ウィスコンシン大学マディソン校)…

ジム通いと日銀の刺激策

最近Douglas L. Campbellというモスクワ・ニューエコノミックスクールの准教授がブログを始め、Economist's Viewがそのエントリに良くリンクしているが、それらを読むとリフレ志向の人のようである。例えば初回の3/2エントリは以下のように結ばれている。 Wh…

経済学が信頼を取り戻す方法

12日と昨日のエントリで取り上げた論争において、ノアピニオン氏が表題の15日付ブルームバーグ論説(原題は「How to Restore Faith in Economics」)でも論陣を張っている。以下はそこからの引用。 In the years since the crisis, a popular narrative has …

経済学実証主義は傲慢=謙虚軸のどこに位置すると考えるべきか?

12日エントリで紹介したRuss Robertsのエッセイを巡る論争について、表題のEconospeakエントリ(原題は「Where Should We Put Economic Empiricism on the Hubris-Humility Spectrum?」)でピーター・ドーマンが以下のようにまとめている(ただしこのまとめ…

ブレトンウッズの盛衰

ボルドーのNBER論文をもう一丁(ungated版)。以下は「The Operation and Demise of the Bretton Woods System; 1958 to 1971」の要旨。 This chapter revisits the history of the origins, operation and demise of the Bretton Woods International Monet…

部分的財政統合:欧州の未完の事業からの幾ばくかの教訓

というNBER論文をマイケル・ボルドーらが書いている(ungated版)。原題は「Partial Fiscalization: Some Lessons on Europe's Unfinished Business」で、著者はMichael Bordo(ラトガーズ大)、Harold James(プリンストン大)。 以下はその要旨。 The rece…

投資CAPM

「The Investment CAPM」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はLu Zhang(オハイオ州立大)。 以下はその要旨。 A new class of Capital Asset Pricing Models (CAPM) arises from the first principle of real investment for individual firm…

実体アノマリー

「Real Anomalies」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はJules H. van Binsbergen、Christian C. Oppy(いずれもペンシルベニア大)。 以下はその要旨。 We examine the importance of asset pricing anomalies (alphas) for the real econom…

配管工としての経済学者

というNBER論文をエスター・デュフロが上げている(原題は「The Economist as Plumber」)。元はAEAのイーリー講演(cf. 動画)。 以下はその要旨。 As economists increasingly help governments design new policies and regulations, they take on an add…

希望の国のエクソダス

「Israel's Immigration Story: Globalization Lessons」というNBER論文をテルアビブ大のAssaf Razinが書いている。 以下はその要旨。 The exodus of Soviet Jews to Israel in the 1990s was a unique event. The extraordinary experience of Israel, whic…

経済学者は実際には何を知っているのか?

本ブログでも折に触れ取り上げてきたAutor-Dorn-Hanson論文(cf. ここ)にJonathan Rothwellが反論を寄せ、Autor-Dorn-Hansonが再反論した。それを見たRuss Robertsが実証研究の正確性全般に疑問符を付ける表題のエッセイ(原題は「What Do Economists Actua…

育児休暇の経済学

米国の育児休暇の拡大をアン・ハサウェイが国連で訴えたというニュースがあったが、今月初めにTimothy Taylorがブログでこの話題を取り上げている。その冒頭でTaylorは、世界各国の育児休暇を比較している。それによると、米国の母親の仕事が保証された育児…

銀行は大手行ほど評価価値も高いのか?

というNBER論文が上がっている。原題は「Are Larger Banks Valued More Highly?」で、著者はBernadette A. Minton(オハイオ州立大)、René M. Stulz(同)、Alvaro G. Taboada(ミシシッピ州立大)。 以下はその要旨。 We investigate whether the value of…

ブレグジットの海外投資・生産への影響

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Impact of Brexit on Foreign Investment and Production」で、著者はEllen R. McGrattan(ミネソタ大)、Andrea Waddle(リッチモンド大)。 以下はその要旨。 In this paper, we estimate the imp…

米税制改革は日本型を目指す?

Alan Auerbach(UCバークレー)とMichael Devereux(オックスフォード大)が、共和党の仕向け地キャッシュフロー税(DBCFT)を支持するNYT論説を書いている(H/T Econospeak)。その中で、良くある批判に対して以下のように反論している。 複雑すぎる トラン…

大恐慌期の金融摩擦と雇用

というNBER論文が上がっている(2016/9CSEF-EIEF-SITE金融労働セミナーでのプレゼン資料&同討論者資料[CSEFサイト]、2016夏NBERセミナーでの討論者資料)。原題は「Financial Frictions and Employment during the Great Depression」で、著者はノースウ…

通貨統合の余波:金融の捻りを伴った履歴現象

というNBER論文をアイケングリーンらが書いている(東大のマクロ経済学ワークショップのungated版)。原題は「Aftershocks of Monetary Unification: Hysteresis with a Financial Twist」で、著者はTamim Bayoumi(IMF)、Barry Eichengreen(UCバークレー…

金融政策の効果の非対称性

5年前に金融政策の効果の非対称性について簡単な考察(というほど大袈裟なものではないかもしれないが)をしたことがあったが、リッチモンド連銀のRegis Barnichon、Christian Matthes、Tim Sablikが、Economic Briefの最新号でそうした非対称性についての分…

FRBのバランスシートの「正常化」を急がなくても良い理由

David Andolfattoが、米国政府債務の期間構造は社会的に最適な状態になっておらず、QEは統合政府の長期債務(=長期国債)を短期債務(=準備預金)に変換することによって最適な状態に近付けているのではないか、と主張している。 その根拠としてAndolfatto…

疑似実験法と構造モデルの得失

先月の20日に紹介した計量経済モデル論争をノアピニオン氏も取り上げ、そこでDieboldがG1とG2に分類した問題への取り組み手法(ノアピニオン氏はそれぞれ疑似実験法と構造モデルと呼んでいる)について、概ね以下のようにまとめている。 疑似実験法は通常は…

中国の経済的漸進主義と金融市場

というNBER論文をマーカス・ブルナーメイヤーらが書いている(ungated版)。原題は「China's Gradualistic Economic Approach and Financial Markets」で、著者はMarkus K. Brunnermeier(プリンストン大)、Michael Sockin(テキサス大オースティン校)、We…