最近Douglas L. Campbellというモスクワ・ニューエコノミックスクールの准教授がブログを始め、Economist's Viewがそのエントリに良くリンクしているが、それらを読むとリフレ志向の人のようである。例えば初回の3/2エントリは以下のように結ばれている。
What the Fed has come to decide over time is not that they need to do more stimulative monetary policy, but that the economy can't grow like it used to. And given that the Fed can always make the economy grow slower if it wants, this situation has developed not necessarily to America's advantage. Time to dust off Bernanke's "self-induced paralysis" thesis.
(拙訳)
FRBが時を経て到達した結論は、もっと金融刺激策を実施すべき、ということではなく、もはや経済はかつてのように成長できない、ということであった。そして、FRBが望めばいつでも米国経済の成長を鈍化させられることを考えると、この状況は米国の状況を必ずしも好転させない*1。バーナンキの「自ら招いた麻痺」理論の埃を払う時が来た。
また、「金融政策に関する2つの短いエッセイへのリンク:一つは良い、もう一つは悪い(Links to Two Short Essays on Monetary Policy, One Good, One Bad )」と題された17日エントリでは、良いエッセイとしてカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁がFOMCで金利引き上げに反対した理由を記した論説にリンクし、悪いエッセイとして白井さゆり氏のvoxeu論説にリンクしている。白井氏の論説についてCampbellは、ゼロ金利下の金融政策の無効性を誇張している、と批判したほか、円安で輸出入物価が共に低下したという主張や、マイナス金利が家計心理の悪化や金融の不安定性リスクといった悪影響をもたらしたという主張について、根拠が示されていない、と指摘している。その上で、以下のように書いている。
Aside from the fact that announcements have tended to move things in the right direction for Japan, the author also misses that many times, even as new data comes in which is below the BOJ's forecast, they've declined to take on more stimulative policies, occasionally disappointing markets and tightening monetary conditions. It's hard not to watch this and conclude that the Bank is not totally committed to its growth and inflation targets. A good analogy is your friend who states he wants to lose weight, but refuses to go to the gym more than once a month. Since going to the gym once a month isn't working, why go at all? That's what Shirai is telling us.
(拙訳)
声明が日本にとって事態を良い方向に動かしてきたという事実を別にしても、この著者は、新たなデータが自らの予測を下回った場合でも日銀がさらなる刺激策を取ることを度々拒否し、市場を失望させ、金融状況を引き締め気味に持って行ったことがあったことをも見過ごしている。そうした動きを見て、日銀が日本の成長とインフレ目標に真剣に取り組んでいない、と結論しないことは難しい。良い比喩は、体重を減らしたいと言う友人が、ジムに行く回数を月一回より増やすことを拒否する、というものだろう。月一回ジムに行っても効果が無いのだから、そもそもなぜ行く必要がある? それが白井が述べていることだ。