実証研究の正しい受け止め方

引き続きノアピニオン氏の実証研究ネタ。21日付ブルームバーグ論説で氏は、改めて理論に対する実証の優位性を訴えつつも、実証研究の結果は必ずしも確定的なものではない――特に経済学では――ことを踏まえて、そうした結果をどのように受け止めるべきか、について以下の3点を挙げている。

  1. 適度な懐疑主義
    • 研究によって考えを変えるのは良いが、一つの論文を完全に信頼してはいけない。2つの論文の結果が一致したら、考えをもう少し変えてもよい。
  2. 研究の質に注意を払う
    • すべての研究は平等ではない。
    • 高名な学者の主張が怪しい手法に基づいていたら、おそらく経済学者や学術誌がそれを見つけて報告するだろう。
    • 一般に、単純な相関に基づく論文は、自然実験を用いた論文に信頼性がかなり劣る。
    • マクロ経済学は労働や税制の経済学よりも本質的に困難なので、マクロの発見については特に眉に唾すべき。
    • 怪しいと思うような前提に立っている研究については、より疑ってかかるべき。
  3. メタ分析を見る
    • メタ分析=実証結果の確かさを評価するため、多数の研究を集めた研究
    • 例えば、最低賃金の引き上げが雇用に与える影響については多数の論文があり、大きいという論文もあれば、小さいという論文もある。しかしメタ分析によれば、大半の論文では小さいないしゼロの影響しか見い出していない。この結果は一つの論文だけを見るよりも遥かに信頼性が高い。