2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

最低賃金が幼児の健康に与える影響

というNBER論文が上がっている。原題は「Effects of the Minimum Wage on Infant Health」で、著者はGeorge Wehby(アイオワ大)、Dhaval Dave(ベントレー大)、Robert Kaestner(イリノイ大)。 以下はその要旨。 The minimum wage has increased in multi…

マクロ経済における不確実性の期間構造

というNBER論文をラース・ハンセンらが書いている(ungated版)。原題は「Term Structure of Uncertainty in the Macroeconomy」で、著者はJaroslav Borovička(NYU)、Lars Peter Hansen(シカゴ大)。 以下はその要旨。 Dynamic economic models make pred…

万能薬としての構造改革

著名な経済学者たちがブレグジットを受けてユーロ圏への提言をVoxEUで行ったのに対し、デロングとクルーグマンが冷ややかな反応を見せている(H/T Economist's View)。 以下はクルーグマンの反応からの引用。 They allude to the possibility of secular st…

ブラッド・デロングへの現状に関する10の質問

デロングが現在の経済の状況について10の質問を自問自答している(自ブログエントリ。H/T Economist's View)。以下はその概要。 景気後退の可能性? 小さいが、極めて小さいというわけではない。 長期停滞? 我々が「長期停滞」と呼んでいるものが主に供給…

ドイツがオーストリアとも米国ともイタリアとも違った理由

前回エントリで紹介したProject Syndicateの引用部の続きをMostly Economicsが別エントリで紹介している。そちらの引用部では、オーストリアと同様の失敗をドイツが犯さなかった理由が述べられている。 Germany’s growth was not similarly affected, for th…

オーストリア経済の蹉跌をオーストリア学派はいかに解決するか?

と題したエントリで、Mostly Economicsがミュンヘン大学のDalia MarinのProject Syndicate論説を紹介している。以下は論説からの引用部。 Austria was once lauded as Germany’s more successful neighbor, one of Europe’s fastest-growing countries. But …

サマーズ「世界的な財政出動を」

22日エントリで紹介した記事でブレグジットの危険性を訴えていたサマーズが、ブレグジットが現実化したのを受けて早速「Why Brexit is worse for Europe than Britain」という記事を書いている(WaPo、FT。FT記事のタイトルは「The waves from Brexit start …

急速に変化しつつある日本の公的債務の性格

と題したエントリがNY連銀ブログに上がっている(H/T Economist's View)。原題は「The Rapidly Changing Nature of Japan’s Public Debt」で、著者はThomas KlitgaardとHarry Wheeler。 以下はその結論部。 The discussion above offers up a perspective o…

ブレグジットは直接的影響よりリスク増大が怖い

明日の英国の投票を前にして、サマーズがWaPoとFTと自ブログに「Why Brexit would be a history-defining, irreversible mistake」というエントリを上げている(ただしFT記事のタイトルは「Global risks of Brexit dwarf the likely direct impact」で、ブロ…

コント:ポール君とグレッグ君(2016年第3弾)・続き

18日エントリで取り上げたクルーグマンの批判に対しマンキューが反論した。 グレッグ君 最近のNYT論説で僕は、低い成長率を説明する仮説を幾つか取り上げた。一つはアルベルト・アレシナとシルビア・アルダグナの研究に基づくもので、彼らの研究は、税と支出…

俺は中小企業の海外子会社の会長

マルチ・スズキ・インディア社のR.C.バルガバ会長が、今回の円高の影響についてヒンズービジネスラインに語っている(H/T Mostly Economics)。 How will the yen appreciation impact the profitability of Maruti Suzuki? The yen has always been a very …

FRBの行動はデジャ・ブ

先週のFOMCを前にして、サマーズがWaPoとFTと自ブログに「Groundhog Day at Fed June meeting」というエントリを上げている(ただしWaPoの記事のタイトルは「The Fed is making the same mistakes over and over again」、H/T 本石町日記さんツイート)。 以…

コント:ポール君とグレッグ君(2016年第3弾)

マンキューのNYT論説に、「Is Our Economists Learning?(我が経済学者たちは学習しているのか?)」と題したブログエントリでクルーグマンが噛みついた。 ポール君 グレッグ君がアレシナ=アルダグナの拡張的緊縮策を取り上げた記事を書いているが、彼らの…

自然災害の5年後の成人死亡率:インド洋津波の実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「Adult Mortality Five Years after a Natural Disaster: Evidence from the Indian Ocean Tsunami」で、著者はJessica Y. Ho(デューク大)、Elizabeth Frankenberg(同)、Cecep Sumantri(SurveyMETER*1)、Duncan …

移民と再分配:経済同盟の連邦制度が重要となる理由

というNBER論文が上がっている。原題は「Migration and Redistribution: Why the Federal Governance of an Economic Union Matters」で、著者はAssaf Razin、Efraim Sadka(いずれもテルアビブ大)。 以下はその要旨。 Federal governance matters. Policy …

ガートラー「賃金の硬直性は健在」

ガートラーらが「Unemployment Fluctuations, Match Quality, and the Wage Cyclicality of New Hires」というNBER論文を上げている。著者はMark Gertler(NYU)、Christopher Huckfeldt(コーネル大)、Antonella Trigari(ボッコーニ大)。 以下はungated…

とんとんとんからりんと隣組の経済学

「Can War Foster Cooperation?」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はMichal Bauer(CERGE-EI)、Christopher Blattman(コロンビア大)*1、Julie Chytilová(プラハ・カレル大学)、Joseph Henrich(ハーバード大)、Edward Miguel(UCバー…

インド洋の忘れられた海賊史

という記事を、カルカッタ社会科学研究センター(Centre for Studies in Social Sciences, Calcutta (CSSSC))歴史学教授のLakshmi Subramanian*1が、オックスフォード大学出版局(Oxford University Press=OUP)ブログに書いている(H/T Mostly Economics…

マクロ経済学の4分類

ノアピニオン氏がブルームバーグ論説でマクロ経済学を4つに分類したところ、デロングが、その分類は間違っている、と批判した(H/T Economist's View)。以下はノアピニオン氏の4分類。 喫茶店マクロ 多くの一般の議論で耳にするマクロ。しばしばハイエク、…

ジャネット・イエレンへの5つの質問

をTim Duyがブルームバーグ論説で投げ掛けている(H/T Economist's View)。 以下はその概要。 労働市場の現状? イエレンは、失業率のような狭義の指標に代わり、より広範に労働市場をとらえる指標として、労働市場情勢指数(LMCI)の創設を提唱した。 LMCI…

ジャネット・イエレンと4つの大きな不確実性

というWSJ記事(原題は「Janet Yellen and the Four Big Uncertainties」)でブルッキングス研究所のDavid Wesselが、イエレンが6日の講演で挙げた経済を取り巻く4つの不確実性をまとめている(H/T Economist's View)。 米国の国内支出は、「かなり顕著な世…

インド人のみたうるう年効果

Mostly Economicsのブログ主(Amol Agrawal)の友人で金融市場で働くVipul Mathurがブログを始めたという。その最初のエントリで取り上げられたのが日本のGDPのうるう年効果。 Sometimes news can make your head spin. Just this week, Japan’s GDP numbers…

この貿易収支の教義体系ほど馬鹿げたものはない

引き続きトランプねた。David Glasnerが国際収支の観点からトランプの政策の矛盾を突いている(H/T Mostly Economics*1)。 ...the very same candidate that is promising to convert the US trade deficit into a trade surplus is also the candidate tha…

トランプ勝利の経済的帰結は深刻なものとなる

少し前のWaPo論説でトランプ大統領の可能性が経済にもたらす脅威について警告したサマーズが、表題の論説記事で改めてその危険性を力説している(H/T マンキューブログ。原題は「The economic consequences of a Trump win would be severe」。なお、これはF…

蕎麦屋の蕎麦にラーメンの汁を足してみると

東京財団が消費税シミュレーションツールを公開し、やや炎上気味に話題になっている。指摘されている問題点の一つは、消費税率を動かしても成長率に影響しない点である。批判者はそれは現実的ではないと言い、擁護者はそもそもこのモデルにそうした動作を求…

債務比率をどう考えるべきか?

本ブログで約1年前に紹介したIMFコンファレンスの内容をブランシャールらが本にまとめ*1、そのうちのブランシャールが書いた一章を彼がピーターソン研究所のサイトで公開したところ、その中の財政政策に関する記述にデロングが反発した(H/T Economist's Vie…

日本の一度目の消費増税は需要面での大惨事だった

今年初めに古巣の外交問題評議会に戻り、先月からおよそ7年ぶりに同評議会の「Follow the Money」ブログを再開したBrad Setserが、表題のエントリ(原題は「Japan’s First Consumption Tax Hike Was a Demand Disaster」)で、日本の消費増税を巡る状況につ…

ニュースの中のエリノア・オストロム(みたいなもの)

マンキューが表題のエントリ(原題は「Elinor Ostrom in the news (sort of) 」)で友人のメールを紹介している。 This article in the today's NY Times discusses how musicians who play near the site where John Lennon died have had trouble managing…

量的緩和は金利に影響を及ぼさなかった?

かねてから量的緩和に批判的なジョン・テイラーが、量的緩和は金利に影響を及ぼさなかった、という論文を紹介している。論文の著者はAnsgar Belke、Daniel Gros、Thomas Osowski(BelkeとOsowskiはデュースブルク=エッセン大、Grosはここ参照)。 以下はそ…

量的緩和と金融の安定性

というNBER論文をコロンビア大のマイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)が書いている(原題は「Quantitative Easing and Financial Stability」) 以下はその要旨。 The massive expansion of central-bank balance sheets in response to recent cri…