2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ハーバード入試におけるアジア系米国人の差別

以前、ハーバード入試での人種差別は統計的に支持されない、というデビッド・カードの見解を紹介したが*1、それに反する結果を示した表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Asian American Discrimination in Harvard Admissions」で、著者はP…

COVIDによる経済的不確実性

Scott R. Baker(ノースウエスタン大)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)の論文をもう一丁。表題の通り、今度は彼らの”本領”と言うべき不確実性に関する論文。原題は「COVID-Induced Economic Uncertainty」で、共著者はSt…

前例の無いCOVID-19の株式市場への影響

不確実性指数で有名なScott R. Baker(ノースウエスタン大)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)らが表題のNBER論文を上げている。原題は「The Unprecedented Stock Market Impact of COVID-19」で、他の共著者はKyle J. Kos…

発生源が既知の場合の未報告感染割合の推計:COVID-19への応用

感染率推計のNBER論文をもう一丁(シカゴ大の論文リンク)。以下は、Ali Hortaçsu、Jiarui Liu、Timothy Schwieg(いずれもシカゴ大)による表題の論文(原題は「Estimating the Fraction of Unreported Infections in Epidemics with a Known Epicenter: an…

COVID-19感染率の推計:推定問題の解剖

というNBER論文が上がっている。原題は「Estimating the COVID-19 Infection Rate: Anatomy of an Inference Problem」で、著者はCharles F. Manski(ノースウエスタン大)、Francesca Molinari(コーネル大)。ノースウエスタン大の論文pdfにリンクしたタイ…

消費とCOVID-19による死とのトレードオフ

という小論をロバート・ホールらが書いている(H/T タイラー・コーエン、ただしコーエンは4月6日版を参照しているが、現在は24日版となっている)。原題は「Trading Off Consumption and COVID-19 Deaths」で、著者はスタンフォード大のRobert E. Hall、Char…

コロナウイルス拡散モデルの政策的含意:経済学者の観点と機会

というNBER論文をマンキューとコーエンが称賛している。論文の原題は「Policy Implications of Models of the Spread of Coronavirus: Perspectives and Opportunities for Economists」で、著者はChristopher Avery(ハーバード大)、William Bossert(同)…

NY市では地下鉄がコロナを蔓延させた・補足

前回エントリで紹介したMITのジェフリー・ハリス論文に対してニューヨーク州都市交通局(Metropolitan Transportation Authority=MTA)が反論したようで、その内容がこちらの記事で紹介されている。 The MTA strongly disputes Harris's findings and point…

NY市では地下鉄がコロナを蔓延させた

ニューヨークでは地下鉄がコロナを拡散させた、というニュースが少し前に流れたが、その元となった論文がNBERに上がっている。論文のタイトルは「The Subways Seeded the Massive Coronavirus Epidemic in New York City」で、著者はMITのJeffrey E. Harris…

スペイン風邪が第二次大戦を引き起こした?

温故知新とばかりにロバート・バローら*1がスペイン風邪の社会的経済的影響を振り返るAEI論文を書き、Mostly Economicsがそこから下記部分を引用している。 The epidemic killed a number of famous people, including the sociologist Max Weber, the artis…

フェイスブックがCOVID-19について教えてくれること

「The Geographic Spread of COVID-19 Correlates with Structure of Social Networks as Measured by Facebook」というNBER論文が上がっている。著者はいずれもNYUのTheresa Kuchler、Dominic Russel、Johannes Stroebel。以下はその要旨。 We use anonymiz…

IHMEモデルの何が問題か?

17日エントリの脚注で触れたようにコーエンはIHME(ワシントン大学保健指標評価研究所)モデルへの批判を展開してきたが、「えへん(ahem)」と題したこちらのエントリでは、ほら見たことか、と言わんばかりにこの問題を取り上げたStatNews記事にリンクし、…

なぜCOVIDの致死率は推計が難しいか

少し前のエントリでそのSIRモデルを紹介したUCLAのAndrew Atkesonが、「How Deadly Is COVID-19? Understanding The Difficulties With Estimation Of Its Fatality Rate」というNBER論文を上げている。以下はその要旨。 To understand how best to combat C…

ある感染症学者からのコーエンへの回答

14日エントリではコーエンが感染症学者について投げ掛けた疑問への回答を紹介したが、そこで紹介した回答者が大学院で学んだ感染症学に見切りをつけて別の道に進んだ人だったのに対し、ジョセフ(Joseph)という本職の感染症学者*1が自ブログで応答エントリ…

基本再生産数の分散にも気をつけよ

前回エントリで紹介したKronradのコメントを受けてコーエンは、 ロビン・ハンソン(Robin Hanson)ジョージメイソン大学経済学准教授が今月初に自ブログに上げたシミュレーションにリンクしている。ハンソンもKronradと同様にR0(基本再生産数)の不均一性に…

感染率の不均一性が福音となる時

13日エントリで紹介したコーエンのブログエントリには多くのコメントがついたが、そのうちの一つをコーエンはこちらのエントリで取り上げている。そのコメントの主はKronradと名乗っているが、本名はLuzius Meisserという経済学者で、コメントの最後では自分…

感染症学者についてのある視点

前回エントリで紹介したコーエンの感染症モデルに対する指摘は実は彼のブログエントリの前半部分で、後半部分では彼の感染症学者に対する率直な疑問が書き連ねられている。それへの応答がメールであったとのことで、メールの文章をコーエンがMRの別エントリ…

経済学者から見た感染症モデルの問題

タイラー・コーエンがMRブログで経済学者から見た感染症モデルの問題点を挙げている。以下はその概要。 調整の長期的な弾力性が短期的な弾力性より強力であることを十分に理解していない 短期的には人々は社会的隔離を行うが、長期的にはどの社会的隔離の方…

ベトナムの低予算COVID-19対策の成功

について論文が書かれ、著者の一人Hong Kong NguyenがProject Syndicateにその概要を寄稿している(H/T Mostly Economics)。以下はそこからの引用。 Perhaps most remarkably, unlike South Korea, which has spent considerable funds on aggressive testi…

もはや正常状態に戻る計画は存在しないのか

エズラ・クラインがVox記事でそう嘆いている(H/T MR)。 以下はその記事の冒頭。 Over the past few days, I’ve been reading the major plans for what comes after social distancing. You can read them, too. There’s one from the right-leaning Ameri…

社会的隔離は経済を阻害しない

こちらやこちらの日本語記事で紹介されているが、スペイン風邪の分析を基に、疫病対策と経済回復は両立する、とした論文がちょっとした話題を呼んでいる。論文のタイトルは「Pandemics Depress the Economy, Public Health Interventions Do Not: Evidence f…

パンデミックの長期的影響

というNBER論文が上がっている(本文も読める)。原題は「Longer-run Economic Consequences of Pandemics」で、著者はÒscar Jordà(SF連銀)、Sanjay R. Singh(UCデービス)、Alan M. Taylor(同)。 以下はその結論部。 Summing up our findings, the gre…

望月氏の「証明」はガラパゴス現象なのか?

1年半ほど前にABC予想に関するピーター・ショルツの見解を紹介したことがあったが、そこでリンクしたPeter Woitのブログで今回の「証明」を機に改めてABC予想に関するエントリが立ち、そちらのコメント欄にショルツが降臨している(H/T math_jinさんツイート…

なぜ便乗値上げは悪か?

クルーグマンが便乗値上げを否定する論拠についてツイッターで呟き、表題のpdf(原題は「Why Is Price-Gouging Bad?」)にまとめている。以下はそこからの引用。 Suppose, however, that we already have progressive taxes and a safety net — that we have…

供給ショックが需要不足につながる時

について書かれた論文をクルーグマンが激賞している。論文のタイトルは「Macroeconomic Implications of COVID-19: Can Negative Supply Shocks Cause Demand Shortages?」で、著者はVeronica Guerrieri(シカゴ大)、Guido Lorenzoni(ノースウエスタン大)…