温故知新とばかりにロバート・バローら*1がスペイン風邪の社会的経済的影響を振り返るAEI論文を書き、Mostly Economicsがそこから下記部分を引用している。
The epidemic killed a number of famous people, including the sociologist Max Weber, the artist Gustav Klimt, the child saints Francisco and Jacinta Marto, and Frederick Trump, the grandfather of the current U.S. President. Many more famous people were survivors, including Mahatma Ghandi, Friedrich Hayek, General Pershing, Walt Disney, Mary Pickford, and the leaders of France and the United Kingdom at the end of World War I, Georges Clemenceau and David Lloyd George. The disease severely impacted U.S. President Woodrow Wilson, whose impairment likely had a major negative effect on the negotiations of the Versailles Treaty in 1919. Thus, if the harsh terms imposed on Germany by this treaty led eventually to World War II, then the Great Influenza Epidemic may have indirectly caused World War II.
（拙訳）
この疫病は多くの有名人を死亡させたが、その中には社会学者のマックス・ウエーバー、画家のグスタフ・クリムト、子供の聖人であるフランシスコとジャシンタ・マルト*2、そして現米大統領の祖父であるフレデリック・トランプがいた。より多くの有名人が生存者で、その中にはマハトマ・ガンジー、フレデリック・ハイエク、パーシング将軍、ウォルト・ディズニー、メアリー・ピックフォード、ならびに第一次大戦終結時の仏英の指導者であったジョルジュ・クレマンソー とデビッド・ロイド・ジョージがいた。この病気は米大統領ウッドロウ・ウィルソンに深刻な病状をもたらし、彼の機能障害は1919年のベルサイユ条約の交渉に大きな負の影響を与えた可能性が高い。従って、もしこの条約がドイツに課した厳しい条件が最終的に第二次大戦を引き起こしたとするならば、このインフルエンザ大疫病が間接的に第二次大戦の原因となったのかもしれない。
スペイン風邪が第一次大戦を終わらせた、という説は時々耳にするが、第二次大戦の遠因になった、という説は小生は初耳であった。また、トランプ米大統領の祖父の死因だった、というのも初耳であった。Mostly Economicsもこれに驚いて、その割にはトランプ大統領のパンデミックへの関心が低い、と述べている*3。
以下はMostly Economicsによるもう一箇所の引用部。
Data for 43 countries imply flu-related deaths in 1918-1920 of 39 million, 2.0 percent of world population, implying 150 million deaths when applied to current population. Regressions with annual information on flu deaths 1918-1920 and war deaths during WWI imply flu-generated economic declines for GDP and consumption in the typical country of 6 and 8 percent, respectively. There is also some evidence that higher flu death rates decreased realized real returns on stocks and, especially, on short-term government bills.
（拙訳）
43ヶ国のデータは、1918-1920年のスペイン風邪関連の死が世界人口の2.0％である3900万人であったことを示している。これは現在の人口では1億5000万人に相当する。年次変数を1918-1920年のスペイン風邪による死と第一次世界大戦中の死に回帰すると、平均的な国の経済におけるスペイン風邪によるGDPと消費の低下は、それぞれ6%と8％であったことが示される。また、スペイン風邪の高い死亡率が、株式、およびとりわけ短期国債の実現した実質リターンを低下させた証拠もみられる。
